先日まで鹿児島・錦江湾にカヤックトリップに行っていました。
湾の南端にあたる指宿の海そばにある安いライダーズハウスにあらかじめフォールディングカヤックを送り、ピーチ航空で身一つ移動。現地でカヤックを受け取ってそこで組み立て。食料、キャンプ用品等を積み込み、出艇。そのまま北上し、桜島を経て錦江湾最奥部の国分海岸に上陸。次に陸路で縄文草創期から前期にかけての最大の集落・上野原遺跡まで移動。
ちょうど錦江湾を縦断した格好。
海から来た縄文人が何を感じてやってきたのかがテーマ。
途中、桜島に数泊し、自転車を借りて桜島を一周したりした。
タイミング良く桜島が噴火するところを海から見られました。
風景もさることながら、においがすごかった。
硫黄臭ともまた違う、香ばしいような、それでいて甘いような不思議な香り。
そのにおいは日によって違うようだけど、生まれて初めて嗅ぐ不思議な香りだった。
2万9千年前に大爆発し、マグマが放出された地中部分が空洞になって大陥没し、そこにドーッと海水が流れ込んできてできたカルデラ海が錦江湾。なので内湾なのに水深が深く、海岸から数十メートル沖に出ただけで水深100m以上になったりする。途中でカヤックフィッシングした際にも、沖小島という島からほんの20メートルくらいのところにジグを落とし込むやいなや、糸が限りなく出ていく出ていく、いったいどこまでいくと着底するのかといった有様でした。
また鹿児島市がすごいのは、桜島という活火山からほんの数キロしか離れていないにもかかわらず、人口が60万人も住んでいる大都市であること。そんな場所は世界を探しても他にないのでは、と思います。
桜島が大噴火したら甚大な被害が出ることは必至だし、姶良カルデラや若尊カルデラという海中火山が爆発したら水蒸気爆発、大津波が起って未曾有の大災害になる(川内原発もひとたまりもない)。だけど桜島の存在によって観光のシンボルとなっているし、桜島大根や小みかんなど他には生育しない農作物ができる。海はマダイやヒラマサ、ブリなどの宝庫だし、どこででも温泉が出る。なによりマグマパワーに満ちていて、実際に住んでいる人は「パワーをもらって生きている」と普通に口にしている。
大自然の脅威と共に暮らしているわけですね。
そこのところが面白い。
またそれは、縄文時代とかとそう変わらないのではと思う。
身近な脅威と恩恵という、基本的な自然へのスタンスは、太古から変わらない。
それも世界を探しても、なかなかないのではと思います。
だからこそ川内原発は一刻も早くやめた方がいい。
約6700年前に、錦江湾から少し南に下った「喜界カルデラ」が大爆発したとき、火砕流が薩摩半島から錦江湾あたりまで襲って、上記した「上野原遺跡」など、周辺に点在する縄文集落も焼き尽くされ、いったん壊滅しました。で、そこから逃げのびた一派が黒潮沿岸を北上し、四国や紀伊半島や伊豆半島などに渡っていきました。
たとえば湯浅湾の鷹島に住んでいたような縄文系海洋民もその一派と繋がっているかも知れない、などと考えると「黒潮カヌー文化圏」というテーマにも繋がってきて面白いわけですが、その辺の感覚的なインスピレーションが色々とわき起こってきた旅でした。
その場に身を置かないと分からない事ってたくさんあるわけですね。
たとえば最大の縄文集落である上野原遺跡がなぜ湾の一番奥にあったかというその理由。それは多分、志布志湾の方にささっと移動してそこからカヌーで出艇し、噴火や火砕流の影響のないところまで逃げるというルートが出来ていたからではないか、と直観したりしました。他にもその近辺にたくさんの縄文集落があるけれど、それはメディアとしてネットワークで繋がり、噴火や色んな情報を交換していた証拠ではないだろうか、などと思いを巡らせたりしました。
黒潮文化圏の十字路である錦江湾、なかなか面白かったです。
屋久島や種子島、トカラ列島や奄美方面へいく際のハブにもなるしね。
あ、甑島も忘れずよろしく。