障がいを持つ友「やまちゃん」・・・僕は親しみを込めていつも彼をニックネームで呼んでいます。
年齢は40代です。
脳性まひの彼は自らをミスターCP(脳性まひ)と名乗っています。
やまちゃんは僕がヘルパーとして所属しているNPO法人の理事の一人としてその運営に携わっています。
彼とは自立生活センター時代から約10年お付き合いしてきており、僕がヘルパーとして担当した回数が一番多かったのも多分彼でしょう。
彼は主に右半身が不自由で歩行困難なため外出する場合は状況に応じて電動か手動かどちらかの車椅子を使用しなければなりません。
更に言語障がいが特に重く、あまり興奮し過ぎると感情をコントロールするのが困難に陥る様な症状を見せる場合も時としてあります。
僕は正直に言うと未だに彼の話す言葉を30%程度しか聞き取ることができないのです。
何度か聞き返しますが、それでも理解できない場合があります。
彼はそんな時にはいつも携帯しているトーキングエイドという道具を使用します。
これを使えば自分の意思を確実に相手に伝えることができるのです。
左手の人差し指でキーボードの文字を1個ずつ押して文章を作り細長い液晶画面に映し出して、更に必要に応じてそれを音声にして知らせたりします。
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昔のやまちゃんはお酒がとても好きでした。
多分彼にとってお酒は小さな喜びを大きくしてくれたり大きな哀しみを小さくしてくれる「魔法の水」だったと思います。
彼は一時期アルコール依存症になったことがあります。
日々を一所懸命に生きていたにもかかわらず、いくら努力してみても自分の体を自分の力で自由に動かせない焦りと辛さをお酒の力で少しでもやわらげようとしていたのでしょうか・・・
会津に自立生活センターを設立し、初代の代表として活躍した故N君は彼の先輩であり盟友でした。
やまちゃんも設立時のメンバーの一人だったのです。
N君が体調不良を訴え自立生活センター代表の職を辞した後、副代表だった彼は二代目の代表に就任しました。
彼は仲間の期待に応えるべく自分の持てる力を精一杯発揮してがんばった・・・はずでした。
ところが、ある程度収まっていた彼のアルコール依存症がここで又出始めてしまったのです。
多くの障がい者達をまとめなければならない責任感とあまりにも偉大だった前代表と何かにつけ比較され批評される度に生じる焦燥感が巨大なプレッシャーとなって彼に襲い掛かかったのでしょうか・・・
しかし、彼は家族や周囲の方に支えられ地道な治療の日々を重ねた末に立ち直り今日に至っています。
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彼は素晴らしい才能を持っていました。
それは作詞をすることです。
高校生になってから詩の創作活動を始め雑誌やラジオ番組に投稿する内にその詩に曲をつけてくれる音楽仲間が彼の元に続々と集まって来てくれました。
作詞家・・・そう呼ぶに相応しいほど彼の詩には地元のバンドとかシンガー・ソング・ライターが曲をつけており、コンサートで歌われています。
今までに詩集の小冊子も5刊発表しています。
彼の詩を読むと、話をして(言葉で)伝える事が上手くできない彼のもどかしさが心の声(叫び)となって聞こえて来るような気がして感動で胸が一杯になるのです。
彼は歳を重ねるごとに自由が利かなくなってくる自分の体に「様々な困難が見えてくる」と不安を感じながら、「できる内に残しておきたい」と今も詩の創作活動を続けています。
僕はこれからもそんな彼と向き合って見守りながら親交を深めていきたいと思っています。
N君があまりにも偉大過ぎたことや周囲の期待の予想以上の
大きさもやまちゃんにとっては悲劇だったのでしょう。
それに自立生活センター代表の仕事は健常者の僕が見ても
かなりの激務だという印象を受けました。
周囲の者も代表一人におんぶに抱っこ状態で頼り切っていた
だけでなく、てんでに勝手なことばかり言っていてまとまりがつ
かなかったようだったし・・・
体調が不安定な障がい者があの仕事を続けて行くにはかなりの
無理があったんじゃないでしょうか。
やまちゃんの詩はこの後紹介する予定です。
人間の心は弱い部分の方が大きく、それを克服しようとするのは
とても難しいでしょう。
皆が皆そんなことできる訳じゃないよね。
でも、必ずしも強い心を持っている人だけが困難を乗り越え
られる訳じゃないと思います。
例え心が弱い人でも、そのために何度も挫けそうになっても
諦めないで、その人なりにある程度辛抱さえしていれば、
回り道になってもいつかは目標に辿り着ける、そう信じて進む
ことが大事だと思います。
そういう僕も回り道の人生歩んで来ましたから・・・
先のことを考えればとても辛くて苦しいから、今をどう生きるかに
集中して一歩ずつ進んで行くしかないです。
何処にでもいますよネ、結果を比較して批判をするだけなんて人が・・・
大切なのはそれをどうフォローすることが出来るのか各々が考えて実行することが大事なのでは・・・
類稀な才能まで持っているなんてスゴイですネ。
見えない弛まない努力もあることでしょう。
人の弱さ強さは個人差がありますから、最初の結果がだめだったからとその人が弱いということは言えないと思っています。
弱さを克服したことが本当の強さで、成長なんだって思います。
もともと強い人間なんていないんですよ。みんな弱いんです。でも友人や家族のあたたかい援助があって、少し強くなれるかな。