一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

藤井三冠に善戦している棋士

2021-09-20 00:06:42 | 将棋雑記
17日(金)はもうひとつ、第47期棋王戦で、藤井聡太王位・叡王・棋聖の対局もあった。しかし斎藤慎太郎八段に負け。豊島将之竜王以外に3ヶ月半振りの負けで、棋王戦は2戦目で、早くも姿を消してしまった。
藤井三冠は来月からの竜王戦七番勝負出場も決め、年度内に六冠の可能性もあった。残る王将と棋王の保持者はともに渡辺明名人だが、藤井三冠はその渡辺名人に8勝1敗。つまり挑戦者になればタイトル獲得の可能性は高かったが、それだけに今回の負けは痛かった。
斎藤八段はこれで、対藤井戦3勝4敗。通算勝率8割の怪物に対して十分すぎる数字だ。
では、藤井三冠に善戦している棋士を挙げてみよう。数字は相手の棋士から見たもの。藤井三冠に2勝以上し、かつ勝率が4割以上とした。

豊島将之竜王……9勝8敗
大橋貴洸六段……3勝2敗
久保利明九段……3勝3敗
斎藤慎太郎八段……3勝4敗
深浦康市九段……2勝1敗
佐々木大地五段……2勝1敗

この6棋士くらいか。棋士はおしなべて寡黙が多いが、この6棋士も、ほぼ寡黙だ。
また藤井三冠は一日24時間将棋のことを考えているが、この6棋士も、24時間将棋のことを考えていそうだ。個別に見てみよう。
豊島竜王は一時、対藤井戦7勝1敗と引き離していたが、その後藤井三冠の猛追に遭い、貯金はわずかに1。来月からの竜王戦七番勝負で貯金がなくなると、竜王を明け渡すことになる。
大橋六段は紫のスーツを着こなすあたりがタダモノではなく、藤井三冠に劣らぬ天才という気がする。通算勝率も7割を越えており、やはりこのくらい勝ってないと、藤井三冠と競り合うことはできないのだろう。
久保九段は、自身の振り飛車ワールドに藤井三冠を引き込んでいる感じ。振り飛車の研究なら他の追随を許さない。
斎藤八段は角換わり研究の若き大家で、昨年上梓した「角換わり腰掛け銀研究」(マイナビ将棋BOOKS)は、居飛車党なら必読の名著である。藤井三冠との公式戦も、7局中6局が角換わり。それだけに、斎藤八段も十分に実力を発揮しているのだろう。
深浦九段は、相手が強ければ強いほど、実力を発揮しそうだ。羽生九段との50局対戦時に25勝25敗だったことからも、それが分かる。
佐々木五段は、順位戦C級2組、竜王戦6組にいるのが不思議な強豪。あの不敵な面構えで藤井三冠に勝ち越し。さすがである。

かつて羽生九段は、対戦成績で互角についてきた棋士も、途中からグンと突き放したケースが多々あった。
藤井三冠は、この6棋士も突き放すことができるか。
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高浜女流2級、女流1級に昇級!!

2021-09-19 17:18:30 | 女流棋士
17日(金)はもうひとつ、マニアにはビッグなニュースがあった。高浜愛子女流2級が第33期女流王位戦予選で内山あい女流2級に勝ち決勝進出を決め、規定により女流1級に昇級したのだ。とりあえず、おめでとうございます。
高浜女流1級といえば、「苦節」というキーワードが浮かぶ。高浜女流1級は2003年、女流育成会に入会。そこから10年余りを経て2014年、女流3級の資格を得た。しかしここから2年以内に女流2級に昇級しなければならないという、当ブログではおなじみの規定があった。並の女流棋士ならここは通過点に過ぎないが、女流育成会(研修会)卒業に10年を費やした彼女だから、推して知るべし。果たして苦闘の日々となった。
2015年8月、勝てば女流2級という一番を負け。しかし2016年2月、女流名人戦予選で勝ち、規定により女流2級に昇級した。高浜女流3級(当時)は年齢がいっていたため、もう研修会には戻れない。よってこの女流名人戦がラストチャンスだったわけで、それを勝ち切ったのは見事だった。
ただ、(女流)棋士の中には、(女流)棋士生活がスタートであるにも拘わらず、それがゴールの場合がある。すなわち、(女流)棋士になれてよかったね、というやつだ。
高浜女流1級は残念ながらそのクチで、女流棋士としての成績は芳しくなかった。女流3級と同様、女流2級も通過点でなければいけないのだが、毎年大きく負け越す。
今年度始まりの時点でも、女流1級には11勝を必要とした。しかもそこに、厳しいニュースが飛び込む。清麗戦や女流順位戦の創設に伴い対局数が増加したことから、女流棋士の昇段規定の勝ち星が、一律10勝の上乗せになったのだ。
この適用は10月1日から。ただ、高浜女流2級が9月末までに11勝するとは思えず、女流1級のゴールポストがだいぶ遠のいたと思われた。
だが高浜女流2級は女流王位戦予選2回戦の船戸陽子女流三段戦に勝ち、冒頭の内山女流2級に勝ち、女流1級昇級となった。この日は同じ棋戦で千葉涼子女流四段対上田初美女流四段という重量級の対戦もあったのだが、高浜―内山戦が「昇級決定戦」だったためか、こちらが携帯中継された。そしてネット情報を拾うと、その将棋は高浜女流1級の大逆転勝ちだったらしい。
なんだか頼りないが、そういう将棋をモノにするところが、勝負強い?高浜女流1級らしいともいえる。
それで私も棋譜を鑑賞したが、高浜女流2級は愛用の四間飛車穴熊。内山女流2級は銀冠から着実にリードを拡げる。しかし74手目△9九馬はどうだったのだろう。ここは△5五桂の金取りはなかったか。これに▲4九飛(△8九馬取り)なら構わず△4七桂成▲8九飛△5八成桂で後手勝ち。
この後も内山女流2級が優勢だったが微妙に疑問手を指し、高浜女流2級は穴熊の遠さを頼みに激しく攻め込み、最後は綺麗な一手勝ちを収めた。やはり「勝つことはえらいこと」なのだ。
そういえば「女流2級」が2回戦から登場したのも妙な話だが、高浜女流2級は第31期に1回戦で勝ったため、第32期は2回戦から登場。それも勝ったから、第33期は2回戦から登場したと思われる。その2年の勝ち星も無駄ではなかったのだ。
さて、高浜女流1級が今後飛躍するには、同じ振り飛車でも、いろいろな戦法を勉強したほうがいいと思う。現状、四間飛車穴熊がメインでは、作戦を狙い打ちされる。
また内山女流2級戦では、序盤をノータイムで飛ばしたらしいが、たとえ何度も通った道でも、少しでも考える習慣を身に着けたほうがいいと思う。
女流初段になるには、10月1日以降、60勝が必要になる。手っ取り早く昇段するには、次の女流王位戦予選の決勝で勝てばよい。相手は渡部愛女流三段。一丁頑張ってみよう。
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羽生九段は今年度、勝ち越せるか

2021-09-18 23:27:47 | 将棋雑記
昨日は第80期A級順位戦・豊島将之竜王対羽生善治九段戦が行われ、豊島竜王が勝った。豊島竜王は2勝1敗、羽生九段は1勝2敗となった。なんだか羽生九段が負けるべくして負けた感じで、羽生九段の今年度成績は4勝10敗となった。
ここでひとつ確認である。先日当ブログでは、羽生九段がJT杯日本シリーズで千田翔太七段に敗れ、通算勝率が7割を切ったと書いた。ところがその後放映された銀河戦で、羽生九段は山崎隆之八段に敗れた。銀河戦は収録なので、この将棋はJT杯より前に指された可能性が高い。
ということは、私(たち)が「羽生九段の通算勝率7割があぶない」と騒いでいた時点で、羽生九段はすでに7割を切っていたのだ。山崎八段戦の結果をすでに知る者には、私の当該記事は噴飯モノだったに違いない。自己嫌悪だった。
それにしても、羽生九段の対山崎八段戦は、この対局の前まで18勝4敗。カモにしていたのに、負けた。しかもこれで3連敗である。どうして両者の力関係が逆転してしまったのか、皆目分からぬ。
この銀河戦をナシにしても、羽生九段は6連敗。これは記憶にないし、「年度借金6」も初めてではないだろうか。まったくこの数ヶ月の羽生九段は、別人のようである。
ともあれ羽生九段が通算勝率7割に復帰するには、今後6連勝が必要である。これは以前当ブログで「年度10勝10敗で7割ちょうど」と書いた覚えがある。
だが羽生九段の現在の調子で、6連勝は無理だろう。いやそれどころか、年度の勝ち越しさえ怪しくなってきた。
ではここで、今年度の残り確定対局を記してみよう。

●第35期竜王戦
ランキング戦1組など、最低でも2局

●第80期A級順位戦
佐藤天彦九段、糸谷哲郎八段、山崎隆之八段、斎藤慎太郎八段、永瀬拓矢王座、広瀬章人八段

●第63期王位戦
挑戦者決定リーグを3局前後

●第70期王座戦
二次予選で最低でも1局

●第71期王将戦(挑戦者決定リーグ)
永瀬拓矢王座、豊島将之竜王、広瀬章人八段、藤井聡太三冠、糸谷哲郎八段、近藤誠也七段

●第7期叡王戦
九段戦で最低でも1局(9月21日註:誤り。すでに郷田真隆九段に負けていた)

●第93期棋聖戦
二次予選で木村一基九段と

●第71回NHK杯
行方尚史九段と

●第15回朝日杯
二次予選で最低でも1局

仮に全敗したとしても、22局前後を保証されている。しかし順位戦と王将戦リーグは厳しい相手ばかりで、この2棋戦で良くて5割であろう。
となると残り7棋戦で7つの貯金を作らないといけないわけだが、どうだろう。
まあ勝ち進めば年度またぎになるから具体的な勝敗は書きづらいが、仮に年度末まで15勝を必要として、それが可能だろうか。イメージというのは恐ろしい。全盛時の羽生九段なら楽勝だが、いまの羽生九段には、とてつもなく高いハードルに思える。
そしてこれが達成されたときは通算1500勝もクリアしているが、直近の成績が続くようだと、A級の地位さえ危うくなってくる。
ひょっとしたら私たちは来春、歴史的事件の目撃者になるかもしれない。
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第69期王座戦第2局

2021-09-17 21:13:18 | 男性棋戦
第69期王座戦第2局が15日に行われた。第1局は木村一基九段が制勝。この勢いで連勝と行きたいところだ。対して永瀬拓矢王座は、さすがに連敗はできないところ。
ところで、最近永瀬王座の負け将棋ばかり見ていると思い今年度の成績を調べたら、12勝9敗だった。まずまずといえるが直近の6局は1勝5敗である。竜王戦の敗退ですっかり調子が狂ってしまったようだ。
通算勝率7割を誇る永瀬王座でさえ、部分的にはこんな成績を取る。もっとも好不調の波があるのが普通で、毎年勝率8割を誇る藤井聡太三冠が異常なのだ。
ともあれ私は今シリーズ、永瀬王座の防衛と見ているが、木村九段に奪取の可能性があるとすれば、永瀬王座の停滞期に乗じるのが近道と思っていた。今シリーズはその流れである。
第2局は相掛かりとなった。これは定跡があってないようなもので、将棋を考えるのが大好きな2人にとって、シリーズで一度は登場する戦法だった。
序盤から一手一手が難しく、私はついていけない。ABEMAのAI評価はわずかに木村九段に振れているが、互角であろう。
というところで中盤、攻め合いになった。第1図は木村九段が▲5五桂と打ち、△7七歩成▲5八玉に△5四銀と上がらせたところである。

ここで王座戦サイトでは以下、「▲6三香△7二金▲2四飛△同歩▲6一角△同飛▲同香成」の攻め筋を示していた。
なるほど玉の間近に成駒を作り、しかも飛車を手持ちにして、これは先手が有望である。
果たして実戦もそのように進んだ(第2図)。

ところが以下△7三歩▲7四歩に△4二玉の早逃げが好手。さらに▲7三歩成△3四歩▲7二と△3三玉(第3図)と進み、ずいぶん後手玉が安全になった。

サイトの検討通り▲6一同香成まで進んだのに、そこから数手進んで後手優勢とは、キツネにつままれたようである。
むかしは大山康晴十五世名人が、相手にさんざん攻めさせておいて、一手ヒョイと受けの手を指して優勢になったものだった。そういえば永瀬王座は若いころ、大山十五世名人の将棋を何度も並べたことで有名である。「△4二玉」に、私は大山十五世名人の幻を見たのである。
そして本局は100手まで、永瀬王座の勝ち。永瀬王座はホッと胸をなで下ろしたことだろう。
しかし私には、先手の敗着が分からない。第1図以降に先手に失着がなかったとすると、それ以前に問題があったことになるが、△7六歩の叩きに▲7八金と引いたのが利かされでマズかったか。ここ、私ならよろこんで▲8一香成と飛車を取るところだが、当然見える手を木村九段が指さなかったのだから、これでも先手が負けなのだろう。
ともあれ残り3局。タイトルの行方はまったく分からない。
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「将棋ペン倶楽部」2021年秋・第76号

2021-09-16 00:20:29 | 将棋ペンクラブ
先週、「将棋ペン倶楽部」2021年秋・第76号が送られてきた。今号は第33回将棋ペンクラブ大賞発表号で、ボリュームもある。
今回の選考会はいくつか変化があった。ひとつは、選考委員のひとりである木村晋介会長がリモート選考した。
ほかの選考委員は西上心太氏(文芸評論家)、所司和晴七段と、いつもの通り。選考場所は、神保町の「魚百」が業態変換したため、神田の「東京古書会館」となった。
もうひとつは、従来の選考評価は「◎○△」だったが、今回から「5点法」になった。つまり3段階評価から5段階評価になったわけで、よりミクロの優劣が付けられるようになった。
ただここでの作品群は二次選考を通過してきたものであり、ひじょうに高いレベルでの争い、ということを再確認しておく。
今年は観戦記部門が6つ、文芸部門が5つとやや多め。しかも例年にもまして力作揃いで、選考は苦しくも楽しいものになったようだ。
入賞者はこちらで確認いただくとして、「受賞のことば」がいつもながらに面白い。ことに観戦記部門大賞・椎名龍一氏のそれは「なるほど」と思わせるし、後日談も気が利いている。
「推薦柵ひとこと集」は12頁を割き、充実している。このコメントを読むと、該当作品を読みたくなってくるのだ。
なお、今年の将棋ペンクラブ大賞贈呈式も、コロナの関係で立食形式はなし。その代わり、ネット配信を予定しているそう。詳細が発表され次第、当ブログでもお知らせしたい。

そのほかは一般投稿。拙稿も掲載されており、題して「投了図で双方持駒なしはあるか」。前号に掲載された「銀の妙手」と同時に投稿したもので、今回も無事に掲載された。
表題に関しては、もう35年以上前の専門誌に、別のライターより取り上げられたことがある。そのときは「なし」が結論だったが、ありていに言うと、今回も同じ結論だった(序盤での対局放棄は除く)。
ただそこはそれ、私なりに、ある投了図を用意した。それを確認したい方は、将棋ペンクラブの会員になって読んでいただくしかない。
なお、今号の分量は1頁余り。それでも掲載誌につき3部送られてきて、申し訳ない気がした。
ほかは井出洋介氏、美馬和夫氏、黄信号氏、バトルロイヤル風間氏の連載陣に、水野保氏、榊原智氏、今泉忠芳氏、北川晴雄氏、藤井克彦氏の常連陣。林慎氏の投稿もある。林氏は文章のどこを読んでも慎節全開で、氏の寄稿だとすぐ分かる。これぞ「将棋ペン倶楽部」という気がする。
極めつけは、湯川博士幹事の寄稿である。題して「日本将棋の完成」。これは、将棋ファンなら必読であろう。
以上、全126頁。毎号、このくらい読みごたえがあるとうれしい。
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