一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

藤井システムの快勝譜

2019-01-28 00:56:11 | 将棋雑記
25日にAbemaTVを観ると、王座戦二次予選・藤井猛九段と木村一基九段の一戦を流していた。私は日本将棋連盟の携帯中継は契約していないので、こういう無料中継は本当にありがたい。
将棋は先番藤井九段の藤井システム。何だか久しぶりに、正調藤井システムを見た気がする。後手の木村九段は、穴熊に潜る気満々だった。藤井システム相手には、やはりこうでなくちゃいけない。

第1図以下の指し手。▲2五桂△4二角▲4五歩△1二玉▲4四歩△同銀▲4五歩△同銀▲1三桂成△同桂▲4四歩△5三金▲1五歩(第2図)

第1図で▲2五桂と跳ねたのがすごい。ここは▲1五歩と伸ばしておく手もあるが、△1二香との交換はおもしろくないのだろう。大山康晴十五世名人は「最初のチャンスは見送る」と言ったが、藤井システムは「隙あらば攻める」のだ。
△4二角に▲4五歩。私はこの局面から見た気もするのだが、アマ同士なら八割方先手が勝つ。というか、プロ同士でもこの局面は先手がおもしろいのではないだろうか。
木村九段はたまらず△1二玉と寄り、藤井九段は▲4四歩△同銀に▲4五歩! 芹沢博文九段は、歩切れになっても1歩補充できる状況にあればよい、と言った。そしてその歩は1三に落ちている。
そしてその歩で▲4四歩。△4二角・△4三金の形は、ここに歩を打つ手が絶好である。それが実現したわけで、これは先手負けられない展開だろう。
そして△5三金にゆうゆうと▲1五歩。ここからでも端攻めが間に合うのかと、私は唸った。さすがに本家藤井システムは違うのだった。

第2図以下の指し手。△2二銀▲1四歩△1五歩▲5六銀△3六銀▲1三歩成△同銀▲2六歩△4六歩▲2八桂△4七歩成▲3六桂△5八と▲同金(第3図)

木村九段の△2二銀は仕方あるまい。△1五歩には▲5六銀とぶつける。藤井九段著「四間飛車上達法」には、振り飛車は駒の交換を迫って捌くのがよい、と説かれていたが、それを実践している。
▲1三歩成△同銀に▲2六歩は、何となく予想できた手。銀バサミができるわけではないが、△2五銀と引かせたくないところである。
木村九段は△4六歩と指し、お互いカナ駒を駒台に乗せたが、この交換は振り飛車の望むところ。また差が拡がった気がした。

第3図以下の指し手。△5一桂▲6四歩△同歩▲1四歩△同銀▲2二銀△3五歩▲4三歩成△同金▲1一銀成△1三玉(第4図)

第3図からしばらく目を離していたが、再度見ると、▲2二銀の跳び蹴りが飛んでいた。
これを△2二同玉は▲4三歩成で一丁上がり。先手は角の利きが素晴らしい。藤井九段は「四間飛車上達法」で、対穴熊に▲6五歩の重要性を述べていたが、それはすべての作戦に当てはまると思った。

第4図以下の指し手。▲4九香△3六歩▲4三香成△同桂▲1二金△2四玉▲2二角成△3四玉(第5図)

▲2二銀の局面からまた目を離し、次に見たのは第5図の局面である。
後手玉は屋根裏から命からがら逃げだしたが、よく見ると先手の▲1一成銀・▲1二金もヒドイ形だ。この数手前、先手は▲4九香とこれ以上ない田楽刺しを実現させ、駒得を果たした。しかしその金を1二に使うのでは効果が薄い。もっと有効な手はなかったものか。
画面では藤井九段が俯いて考えている。藤井九段の駒台には何もない。急に手段に窮した感じで、ネットの掲示板を見ると、「藤井九段やり損なったんじゃないか」の声が大勢を占めていた。

第5図以下の指し手。▲4七金△5五歩▲1五香△同銀▲3六金△5六歩▲4八飛(投了図)
まで、79手で藤井九段の勝ち。

目を離すと、▲4七金△5五歩の2手が指されていた。▲4七金では▲1三金が考えられるが、それは△5三角(参考図)が絶好で、次に△2六角の王手と△2二飛を見て、後手が優勢である。よって▲4七金はこのくらいであろう。

対して△5五歩が意味不明である。これは▲3六金△5六歩▲4八飛で、後手玉が妙に受けにくい形になる。しかし私に一目で浮かぶ手を木村九段が見落とすはずがない。それなら▲4八飛にも対策を用意しているはずだが、私にはその順が見えない。
次に見た時は、▲4八飛の局面になっていた。ただ「▲1五香△同銀」の交換が入っていた。これがあれば▲2五金の順も生じるので、なおよい。ということは、後手がさらにいけないように見える。
次に見ると、藤井九段の勝ちになっていた。木村九段、あれから1手も指さずに投了したのか! まあ、受けがないのだから投了もやむを得ない。それにしたって、△5五歩の局面から5手で終わる!? 私はキツネにつままれたようだった。

形勢がどのように揺れたか私は分からないが、アマ同士なら先手が勝つ、という局面が長かったようには見える。ただそれは個々の局面を見せられたらの話であって、私が藤井システムを指したら、たちまち空中分解しそうである。
ともあれ本局は、藤井システムの快勝譜。まさに藤井九段にしか指せない作戦で、こりゃあ藤井九段の人気があるわけだと思った。
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