一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

羽生九段のトン死と藤井竜王・名人のイメージ

2023-07-16 23:42:35 | 将棋雑記
今月1日に宮城県で指された第44回将棋日本シリーズJTプロ公式戦1回戦・羽生善治九段VS山崎隆之八段戦は、衝撃の結末だった。羽生九段が負けたわけだが、局後の談話が「ひどい将棋を指した」だったので、どれだけひどかったのかと、興味津々で記譜を確認した。
しかし羽生九段が終盤までうまく指しており、どこがひどいのかと訝しんだ。
……事件は最終盤に起こった。

第1図は羽生九段が△4七香と詰めろを掛けたところ。ここから▲2二銀△2四玉に▲2五飛!(第2図)と進んで羽生九段投了。以下は△2五同玉に▲1七桂打として、簡単な詰み。
なるほど、こんなトン死を食らっては、「ひどい将棋」と吐き捨てる気持ちも分かる。

戻って△4七香では、△4九金と打って、難解ながら詰みがあったようだ。ただ、この詰みが見えなくても、自陣は簡単な詰めろが掛かっている。一手守るしかなかったのだ。
この、敵玉に詰みがあるのに自玉が詰まされてしまった羽生九段の例は、1991年4月12日に指された、第4期竜王戦(読売新聞社・日本将棋連盟主催)1組出場者決定戦・南芳一王将戦が有名である。

第3図は羽生棋王が△2七桂と打ったところ。これが大悪手で、▲2九銀(第4図)まで、羽生棋王投了。以下は△1九玉▲2八銀引までである。3手詰をうっかりしたばかりか、第3図では△7六角と打って、南玉が詰んでいた。

また、相手玉に詰みがあったわけではないが、ココセを指して1手トン死した実戦もある。

第5図は2001年9月1日に指された、第14期竜王戦(読売新聞社・日本将棋連盟主催)挑戦者決定戦第1局・木村一基五段との一戦。終盤、敗勢の木村五段が、投げ切れずに△5六銀と打ったところ。
これには▲7六玉で先手勝ち。ところが羽生四冠は▲6四玉!と立った。すかさず△6五飛(第6図)まで、羽生四冠投了。

これらを見ると、百戦錬磨の羽生九段も、完璧ではない。しかしこれらの敗戦で羽生九段の名声が落ちたわけではなく、むしろ羽生九段も間違いを犯す人間なのだ、とほっとするところもある。
ところが、だ。藤井聡太竜王・名人には、そんなところがまったくない。逆転負けの将棋はあっても、素人には分からない、ハイレベルなもの。トン死など絶対にしないイメージである。指し手だけ見ると本当にAIのようで、人間味が感じられないのである。
そんな藤井竜王・名人を負かすのは大変だと、あらためて思う。
コメント (4)
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