一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

第94期棋聖戦第3局

2023-07-05 23:34:16 | 男性棋戦
さて、3日に行われた第94期棋聖戦第3局である。ここまで藤井聡太棋聖、佐々木大地七段とも1勝。通常なら挑戦者が第3局を勝って面白くなるのだが、ここまで両者の対戦成績が3勝3敗ということを考えると、藤井棋聖のほうもそんなに余裕はないだろう。
将棋は藤井棋聖の先手で、角換わりとなった。ついに十八番の登場である。
佐々木七段は右玉に構える。と、藤井棋聖が左桂を端に跳ねた。
端桂はプロの公式戦でも時折見られるが、作戦の根幹をなす局面で現れるのは珍しい。
注目すべきは藤井棋聖の考慮時間で、この桂跳ねは短考だったという。ということは藤井棋聖の研究だったわけだが、まず、この局面を想定していたのが恐ろしい。次に、この局面でAIが端桂を推奨したのかどうか。もしAIの手助けなしで藤井棋聖がこの端桂を掘り起こしたのだとしたら、恐るべき発想力と言わねばならない。
藤井棋聖は空いた桂の地点に飛車を回る。なるほど遠大な構想で、どうも藤井棋聖が長年温めていた作戦に思えてきた。
さらに藤井棋聖は、相手の桂を玉で取りつつ、飛車取りに出た。この玉が四段目で、また私たちは驚く。
五段目に歩で封をして、玉を左に寄って態勢を整える。あまりにも大胆な指し口で、私たちは開いた口が塞がらない。
元来藤井棋聖の玉は、捉えどころのない動きをし、相手の攻めをギリギリに躱していた。しかし今回の力強い動きは、木村一基九段の玉捌きを彷彿とさせる。
そういえば先ほどの端桂は、花村元司的といえようか。先の叡王戦五番勝負の相穴熊戦もそうだったが、藤井棋聖は対局を重ねるにつれ、多くの棋士の特性を、自分のものにしている感じなのだ。
もっともABEMAのAIはこの時点で、藤井53:佐々木47だった(と思う)。AI的にはいい勝負だったが、両対局者には、先手指しやすい、が共通認識だった気がする。
ここからも私的には解説がつかないと訳の分からない指し手が続いたのだが、藤井棋聖が敵駒を責めているのが分かった。佐々木七段も何とか攻めの糸口を掴もうとするが、藤井棋聖の責めが手厚い。
最後は藤井棋聖が飛車取りに銀を打ったところで、佐々木七段の投了となった。
相手の攻めを切らせて勝つ。どこかで感じたことがあると思いきや、先日の王座戦・羽生善治九段戦と似た展開なのだった。これも新たな勝ち方、というのも以前述べた通りである。
対局後、藤井棋聖は「難しい将棋だった」といつものコメント。藤井棋聖の構想通り進んで、最後は切らせて勝ち。完勝といってもいい内容だったから、これを言われると対局相手はクサル。ただ、藤井棋聖は本気で「難しかった」と思っているのだ。
第4局は18日。ただしこの間に王位戦七番勝負の2局が挟まれる。これが棋聖戦にどう影響するだろうか。
コメント (2)
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