一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

藤井棋聖に勝つには(第94期棋聖戦第4局)

2023-07-20 23:49:36 | 男性棋戦
第94期棋聖戦第4局が18日に行われた。ここまで藤井聡太棋聖の2勝、佐々木大地七段の1勝。当然佐々木七段には必勝が要求されるが、藤井棋聖もここで負けると次は生きるか死ぬかの勝負になり、それは避けたいところ。藤井棋聖も必勝の気構えだった。
将棋は佐々木七段の先手で相掛かりになった。これは100%予想されたところ。以下、例によって難しい戦いになったが、藤井棋聖が指しやすくなった。
これはいつもだと藤井棋聖の必勝パターンなのだが、中盤、藤井棋聖が佐々木七段の手に乗ったのがどうかというところで、急に勝負将棋になった。
佐々木七段、銀を立って飛車取り。すると藤井棋聖も香を打って飛車取りに出た。佐々木七段は当然、飛車を取る。藤井棋聖ももちろん飛車を取る。
……と思いきや、藤井棋聖は飛車を取らず、8筋の歩を成って金取りとした。これが驚愕の一手。飛車取りに駒を打ったのだから、飛車を取るまでがワンセットと、ふつうの人間なら考える。だが藤井棋聖は、この飛車を取る瞬間が甘い、と考えたのだ。だがその指し手の間に、歩成で金を斜めに誘う手を挟めれば、藤井棋聖がハッキリ優勢になる、という理屈だ。それにしたってこの順は浮かばない。私には一生かかっても無理だ。
果たしてABEMA解説の八代弥七段も、「これで藤井棋聖が勝ったら異次元すぎます」と驚きを隠せない。同業者が藤井棋聖の指し手に驚くのはいつものことだが、今回は実感がこもっていた。
しかし冷静には、1手先に飛車を取った佐々木七段にチャンスが来ているはずだ。佐々木七段は中央に桂を打った。これが八代七段&AIの推奨手で、佐々木七段が優勢になった。
以下八代七段解説の攻め合いは、先手に分がある。藤井棋聖はたんに銀を逃げた。これが非凡な手で、「寄せてみろ」と言っているわけだ。
AIの形勢バーは、「藤井棋聖7:93佐々木七段」になっていた。ええー? そんなに差が開いてる? 全然そうは見えなかった。
ここでAIの候補手は▲7三香。これが妙な手で、なんで金と桂の利きに貴重な持駒をタダ捨てしなければならないのだ?
八代解説では一路左の▲6三香を説いていた。これなら次に▲6一角等があるから、一理ある。
と、佐々木七段は反対側の金取りに香を打った。とたんに形勢バーが動き、「藤井76:24佐々木」になった。
もう訳が分からないが、こうなったらもう、藤井棋聖は逃さない。藤井棋聖は一手先に金を取り、こちらのほうがはるかに厳しい。以下数手で、藤井棋聖の勝ちとなった。終わってみれば、数字上は余裕の3勝1敗。圧巻の棋聖4連覇だった。佐々木七段も頑張ったが、優勢の将棋を勝ち切れなかった。勝ち切れない、ということは負けなのだ。
本局、AIがなかったら、表面上は藤井棋聖の快勝である。だが実際は、佐々木七段に必勝の局面があった。ただ、それが人間には思いもつかない香のタダ捨てだった。以下、△同桂に▲8一角!だという……。
ああ、こんな神のような手を続けないと、藤井棋聖には勝てないのか? これじゃあ、藤井棋聖の天下は果てしなく続くぞ。
コメント (3)
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