一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

仮面ライダー50年

2021-04-03 00:08:53 | プライベート
1971年4月3日(土)、すなわち50年前の今日の午後7時30分、NET(現在のテレビ朝日)で、ある子供番組が始まった。「仮面ライダー」である。身長40メートルのウルトラマンの向こうを張って、オートバイに乗って戦う等身大のヒーローだった。
だが主人公・本郷猛を演じる藤岡弘(現・藤岡弘、)はその時間、病院のベッドから仮面ライダーを見ていた。収録中にオートバイ事故を起こし、入院していたからである。
第10話の収録時、藤岡弘はオートバイで角を曲がり切れず、激しく転倒した。左大腿部からは骨が突き出て、脚はあらぬ方向を向いていた。藤岡弘はその脚を元に戻すと、そのまま気を失ったのだった。
全治には最短でも1年近くを要する。スタッフは大幅な設定の変更に迫られた。とりあえず、本郷猛の旧友・滝和也(演・千葉治郎)を登場させ、アクションシーンは彼に任せた。本郷猛の出演シーンは過去の収録分からツギハギで登場させた。仮面ライダーの戦闘シーンを多くし、本郷猛がオートバイに乗る新撮シーンは、影武者にヘルメットを目深にかぶらせ、顔が分からないようにした。
これで1クールをどうにか乗り切ったが、これからどうするか。いろいろ案は出たが、本郷猛は外国へショッカーを追いかけに行ったこととし、新規に「仮面ライダー2号・一文字隼人」を登場させることにした。
それまでの仮面ライダーは黒一色で、やや不気味だった。番組全体のトーンも不気味だったが、原作者の石森章太郎(のちに石ノ森章太郎)は「そのほうが子供の印象に強く残る」と満足していた。ただコスチュームだけは、デザイン変更をした。
すなわち、頭頂部から鼻にあたる部分と、口にあたるマスクの下半分を白くし、腕と脚に白のラインを入れ、明るいイメージにした。
一文字隼人役には、藤岡弘と劇団で同期の佐々木剛を起用した。彼は「藤岡さんの役を横取りするのは……」と最初は断ったが、スタッフの熱意に押され、最終的には出演を快諾した。
さらに、変身シーンを加えた。いままでの仮面ライダーは全身に風を受けると変身できるというものだったが、2号は「へんしん!」の掛け声とポーズで、自由に変身できるようにした。
主題歌は当初藤岡弘が歌っていたが、藤浩一(のちの子門真人)を起用した。
そして第14話から第2号が登場した。ニヒルな本郷猛に対し、甘いマスクの一文字隼人は、すぐに子供たちに受け入れられた。ショッカーもゾル大佐や死神博士などの大幹部を登場させ、悪者をよりパワーアップさせた。
藤浩一の独特の歌い方も子供に大受けし、当時の小学生は全員がこの歌を歌えた。ちなみに「とんねるずのみなさんのおかげでした」内の「仮面ノリダー」で、木梨憲武が粘っこい歌い方をしているのは、この藤浩一をリスペクトしている。
さらに仮面ライダー人気に拍車を掛けたのはカルビーが販売した「仮面ライダースナック」だった。これにおまけで付いている「仮面ライダーカード」が大受けした。このスナックはいまでいう「おさつクッキー」で、必ずしも美味くなかった。だから子供たちの中には、カードだけもらってスナックのほうは捨てるということもあり、社会問題になった。
実は私も当時一度だけ、スナックを棄てたことがある。
カルビーのスタッフは仮面ライダーの収録現場に同行し、より臨場感のあるカードを発行し続けた。
そんな1972年正月、第40話にあたる鹿児島県桜島ロケで、1号ライダーが復帰した。ダブルライダーの登場に、私たちは歓喜したのである。
その後本郷猛は一文字隼人からバトンを受け、1973年2月まで活躍した。実に1年11ヶ月。変身ヒーローが同じ番組名でここまでロングランになった例はなかった。
そして同月からは、仮面ライダーV3が登場する。デストロンとの戦いで窮地に陥った仮面ライダーの2人がV3を生み出すというストーリーで、仮面ライダーが2人いなかったら、V3はこの世に現れなかった。藤岡弘のケガは、文字通り「ケガの功名」となったのである。
それから2021年の現在も、仮面ライダーシリーズの制作が続けられているのは感慨深い。また、藤岡仮面ライダーも、現在東京MXテレビで、毎週金曜日夜7時から放送中である。
そんな藤岡弘は現在75歳。だがいまもドラマやCMに登場するなど、元気いっぱいである。しかもそのどこかに、本郷猛臭を漂わせているのがすごい。何というか、本郷猛が俳優をやっているという感じである。
これは、現在居酒屋を経営している佐々木剛(73歳)や、V3で風見志郎を演じた宮内洋(73歳)にも同じことがいえる。佐々木剛はいまも一文字隼人を演じ、宮内洋もまた、風見志郎を演じ続けているのだ。
これから50年経っても、仮面ライダーとその演者の存在感が色褪せることはない。日本のテレビ史に燦然と輝くヒーローをリアルタイムで鑑賞できた私は、幸せだった。
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