一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

2020年下半期、驚愕の一手

2021-04-02 00:14:00 | 将棋雑記
2020年度下半期、驚愕の一手を記す。
最近は私たちアマチュアも多くのプロ棋戦の実戦譜を見られるようになったが、それでも公式戦の全体から見れば数パーセントであろう。よって私の立場からピックアップするものは、相当に数が限られてくる。どうしてもタイトル戦とかNHK杯での一手になってしまう。
この半年間で私が最もビックリしたというか感心した一手は、2月7日に放送された、第70回NHK杯トーナメント準々決勝第1局・深浦康市NHK杯対山崎隆之八段での、山崎八段の一手である。
深浦NHK杯の先手で始まった本局、▲7六歩△8四歩▲6八銀△3四歩▲7七銀から、相矢倉になった。場合によっては初手から奇抜な手を指す山崎八段にしてはこっちの順こそ珍しく、私はホホウ……と注目したのであった。
将棋はキビキビとした攻め合いになる。放送時の解説は渡辺明名人で、解説も明快である。
余談だが対局者のふたりは2月14日が誕生日だそうで、そのふたりが対局するとは珍しい。この放送があと1週間先だったら、放送日も誕生日になるという珍記録?が生まれるところだった。
さて中盤、深浦NHK杯が77手目に▲5六香と据えたところで、山崎八段に珍しい手筋が出た。これが私の2020年度下半期、驚愕の一手である。

△5七と!
△4七のと金を5七に捨てた手に驚いた。もちろん渡辺名人も驚いた。ここ、ふつうは△5九歩成だが、それだと▲3五角と逃げられてしまう。そこで△5七とと捨てて逃げ道を塞ぎ、△5九歩成で角を詰ましたというわけだった。捨て駒で玉の退路を断つ手は詰将棋の常套手段だが、その手筋が実戦で現れたというわけだった。
その後の進行も面白い。深浦NHK杯が、▲1五の竜が取りになっているにも関わらず、▲3四銀と△2三金取りに打つ。
そこで山崎八段は△3二角! 一瞬意味が分からないが、渡辺名人の解説によると、▲2三銀成なら△同角が、遠く敵陣まで届くという寸法だった。
持ち時間が長時間ならまだしも、早指し戦でこれだけ個性豊かな手が出てくるというのは、やはり才能というしかない。山崎ワールド全開の指し回しに、渡辺名人も感心のテイだった。
これは以前も記したことだが、昨今は将棋AIでの研究が全盛で、角換わりの将棋などは、詰みまで結論が出ている形まであるという。
そんな風潮に背を向けて、初手から独創的な構想を披露する山崎八段の将棋は魅力的だ。しかもその将棋でA級昇級まで決めたのだから、実力も伴っているということだ。
山崎八段のA級での活躍を願ってやまない。
コメント
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