一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

第3期女流王座戦本戦・2回戦の4局を振り返る

2013-08-10 14:24:50 | 女流棋戦
女流王座戦本戦2回戦の4局が、8日までにすべて終わった。きょうはその4局を振り返る。

●真田彩子女流二段-○里見香奈女流四冠
下馬評では里見女流四冠が圧倒的有利。真田女流二段がどこまで食い下がるか、というところだった。
相振り飛車模様の立ち上がりから、先手の真田女流二段が居飛車を選択した。
さて32手目△4五歩に対して、▲3四銀のぶっつけがどうだったか。△同銀▲同歩に△6五歩と突かれては、先手早くも収拾困難である。
その前の△6四歩は△6五歩の狙い。そう突かれては厄介だから、素人目には△6五歩を警戒したくなる。が、真田女流二段にその気配はまったくなかった。この辺の感覚がよく分からない。
本譜△6五歩には▲7七角だが、受けが一手遅れている感じである。以下は里見女流四冠が気持ちよく攻め、快勝した。
真田女流二段は加藤桃子女流王座にも勝ったことがある実力者だが、本局は力を出し切れないまま終わった。

●鈴木環那女流二段-○伊藤沙恵奨励会1級
私の奨励会員における信用は絶大である。鈴木女流二段も実力者ではあるが、本局、伊藤奨励会1級がいかにして勝つかが見どころだと思った。
鈴木女流二段の先手で、相居飛車の立ち上がり。しかし伊藤奨励会1級の指し手が、やや消極的だと思った。
鈴木女流二段は角を換えて▲6八角。次に▲2四角△同銀▲同飛の狙いで、そうなれば歩切れの後手は指しにくいでしょう、という主張だ。
しかし伊藤奨励会1級は平然と△7四歩。その手は怖くありませんから、というわけだ。
対して鈴木女流二段は▲6六歩。
これで勝敗が決したと思う。上の狙いを持って打ったのに、やってこいといわれて行けぬようでは女がすたる。ここは断乎▲2四角と勝負してもらいたかった。
本譜は△5八角が不思議な好手で、伊藤ペースとなった。
終盤、鈴木女流二段がおもしろそうな局面もあったのだが、どうも後手が余していたようだ。
伊藤奨励会1級は手固い指し回しで準決勝進出。次の里見女流四冠戦が、大一番となる。

●上田初美女流三段-○渡辺弥生女流1級
下馬評では上田女流三段が有利だったが、渡辺女流1級は前局、清水市代女流六段を破っている。何かやってくれそうな予感はあった。
将棋は渡辺女流1級の角交換四間飛車。渡辺女流1級は銀桂交換から香得を果たし、ほぼ銀得となった。ここから渡辺女流1級の指し手が冴える。飛車を手前に引っ張り、▲6二香に△5二金が、指されてみればなるほどの受け。さらに△6四馬と引きつけ、元女王の上田女流三段を向こうに回し、盤石の指し回しだ。
女流棋士の指し手には、いい意味でも悪い意味でも、「ええっ?」と驚かされることがある。しかし本局の渡辺女流1級は、「なるほど…」と感心することばかりだった。
120手目△7五銀も冷静な好手。▲8四香にどうするのだろうと見ていると、渡辺女流1級は△8六桂。なんと、これで即詰みなのだった。
かくして渡辺女流1級は、大豪を倒してのベスト4入り。合わせて「女流初段」も手にした。
渡辺女流初段は東京大学在学時代に将棋を始めた晩学である。その彼女の活躍…清水女流六段や上田元女王を破ったことは、私たちに勇気を与えてくれる。
ここまでくればあと2番。是非ともタイトル戦の檜舞台に登場してもらいたい。

●中井広恵女流六段-○本田小百合女流三段
本格的居飛車党の対戦。後手本田女流三段の△8四飛戦法となった。
誤解を恐れずに書けば、女流将棋は序盤を穏やかに済ませる傾向があると思う。対抗戦だと、まずはお互い穴熊に組んで、さあこれから戦いを始めましょう、というところがある。
対して横歩取り系は序盤から神経を遣うので、女流将棋ではあまり見られない。それを堂々と指すふたりは、やはり将棋が「強い」のだと思う。
49手目▲4六角が中井流。ここはふつうに▲2七歩でよいと思うが、それは利かされと見たのだろう。以下の手の作りもなるほどと思った。
以下終盤まで激戦が続くが、凱歌を上げたのは本田女流三段。中井女流六段は129手目▲1八玉で▲3八玉と上がれば勝ちだったようだが、▲1八玉も自信を持って指したのだろうから、これはやむを得ない。
本田女流三段は連続挑戦まであと2勝。彼女にも頑張ってもらいたい。
コメント (2)
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