内宮の正式名称は「皇大神宮」。外宮から約6キロ、神路山のふもとにあるらしい。
さすがにここは観光客、いや参拝客が多い。時代劇に出てきそうな大橋(宇治橋)の下を、豊かな清流が流れている。五十鈴川だ。その向こうには大鳥居。思わず居住まいを正してしまう。大鳥居をくぐるとき、けっこう若いカップルもお辞儀をする。彼らにも日本人の血が流れているのだ。
一の鳥居をくぐると、右手の五十鈴川でみなが手を洗っている。どうも、お清めらしい。私もそれに倣う。
二の鳥居の近くに、神楽殿が見えてきた。入母屋造が美しい。さらに歩くと、正宮が見えてきた。一番奥のご正殿に、天照大神がお鎮まりになっている。ちなみに式年遷宮の斎行は、内宮が10月2日、外宮が10月5日である。
さすがにここは、襟を正してお参りをする。といっても私は、Tシャツ姿だったが。
再び神楽殿に戻り、ご朱印をいただく。これが外宮と同じそっけないもので、きょうの日付を揮毫したあと、「内宮○○」と朱印を捺しただけのものである。さすがに天下の伊勢神宮。ごちゃごちゃしたことは書かないのである。
ここでも式年遷宮の献金を行っていたので、出雲大社と同じ2,000円を奉納する。この金額が高いのか安いのか分からない。恐らく、安いのだろう。
待合室みたいなところがある。ジュースの自動販売機があったが、冷水器が置いてある。もちろん無料で、ありがたくいただいた。
再び宇治橋を通って、内宮を出る。これで出雲大社と伊勢神宮外宮、内宮、3つの式年遷宮参拝が終わった。どのくらいパワーをいただけたのか分からぬが、やるだけのことはやったつもりである。
右手を見ると、古風なたたずまいの飲食店が、一直線に連なっていた。ここが旧参宮街道の「おはらい町通り」である。これが物凄い人出で、思ったのだが、参拝者はこの通りの観光が目的で来ているのではあるまいか。そう考えれば、京都の清水寺界隈にも、同じ雰囲気はあった。これらはいわば、日本の元祖テーマパークなのだ。
お昼はとっくに過ぎているから、伊勢うどんを食したいが、ホントに時間がなくなってきた。後先考えずに伊勢うどんを食し、それが原因で新幹線にでも乗るハメになったら、数百円の出費が数千円の出費になってしまう。ここはぐっと我慢するしかない。
右手に赤福本店が見えてきた。誤解を恐れずに言えば、伊勢神宮のイメージは内宮でも宇治橋でもなく、この赤福本店ではないかと思う。
本店は物凄い客だった。この不景気に、羨ましいことだ。
そしてその手前の道を右に曲がれば、小さな橋があるはずだ。きょうは6月30日、みそかだ。
伊勢には毎月1日、いつもより早く起きてお参りする風習が残っており、それにちなんで赤福では毎月1日、「朔日餅(ついたちもち)」を発売している。お笑いのU字工事がテレビ朝日「いきなり!黄金伝説。」で紹介したことから、一躍有名になった。その橋の袂に、購入の順番を待つ行列があるはずなのである。
またU字工事が並んでいるのかと期待しつつ角を曲がったが、彼らの姿はなし。ただし一番乗りの席も空席になっていた。つまり、席を外しているということだ。
朔日餅の「1番」をゲットするために、早い人は数日前から並ぶという。しかしそれは、食事とトイレ以外はそこに着座するものでなければならないと考える。空席の時間が長ければ、それは順番待ちをしていることにはならないと思うがどうか。
例えばどこかの将棋まつりで、最前列の席にチラシを置いて、本人は目当ての女流棋士が出てくるまで戻ってこない。その間別の出し物があっても、その席は空席になっている。世田谷の将棋まつりで実際にあったことである。こんな愚行をするバカ将棋ファンと、朔日餅先頭グループの本質は、同じことと思う。
赤福で赤福もちを買う。私が両親にお土産を買って帰ってもあまり喜ばれないが、赤福もちだけは別だ。これだけはすぐになくなる。
本店の向かいは別店舗があり、「おかげ横丁」の正面入口になっている。おかげ横丁とは初耳だが、さすがにここ数年の間にできたものだろう。
江戸の趣がうまい具合に再現されている。その一隅にラムネが売られていたので、買う。120円は良心的な価格である。
店の人にフタを開けてもらい、飲む。いうまでもないが、ラムネを飲むときは、ビン上部の窪みのところにビー玉を引っかける。これがうまくいかないと、ビー玉が飲み口を塞ぎ、うまく飲めない。
喉が渇いていたから、ラムネは実にうまかった。
おはらい町通りに戻る。古風な外観のコンビニがあったので、入る。103円のパックのお茶を買おうとしたが、小銭がうまく取り出せず、断念した。
もっと旧道界隈を楽しみたいが、もう東京に向かわなければならない。バス停前で赤福もちの追加を買い、私は伊勢市方面行きのバスに乗った。
バスは途中、五十鈴ヶ丘駅に止まる。風雅な駅名だが、近鉄の駅だろうか。若い女性が駅舎に向かって、恐ろしく長い列を作っている。近くで何かイベントがあったのだろうか。
私も降りたいが、JRとの接続がうまくいくか分からず、そのままやり過ごす。
宇治山田駅でも停車。ここはローカル線の一駅というイメージだったが、これは私の錯覚。堂々たる名駅舎だった。しかしやっぱり、降りられない。
時刻は午後3時20分。私が乗るべき電車は、15時26分・JR伊勢市駅発の快速みえである。そして鈍行を乗り継ぎ、東京駅には23時46分に着く。つまりこの快速みえが、私が東京に戻れる「最終列車」なのである。
3時22分、バスは駅前に着いたが、停止はせず、そのまま進む。何をやってるのだ!? バスは外宮方面ぞいで止まった。
私はバスを降り、駅前に駆けだす。しかし駅に着いても、そのまま改札を抜けるわけにはいかない。切符を買わねばならないからだ。
しかしバス代410円を払って、残りの所持金は7,010円。東京都区内まではここから7,630円かかる。つまりこのままでは東京に帰れない。ああ、どうする!?
(つづく)
さすがにここは観光客、いや参拝客が多い。時代劇に出てきそうな大橋(宇治橋)の下を、豊かな清流が流れている。五十鈴川だ。その向こうには大鳥居。思わず居住まいを正してしまう。大鳥居をくぐるとき、けっこう若いカップルもお辞儀をする。彼らにも日本人の血が流れているのだ。
一の鳥居をくぐると、右手の五十鈴川でみなが手を洗っている。どうも、お清めらしい。私もそれに倣う。
二の鳥居の近くに、神楽殿が見えてきた。入母屋造が美しい。さらに歩くと、正宮が見えてきた。一番奥のご正殿に、天照大神がお鎮まりになっている。ちなみに式年遷宮の斎行は、内宮が10月2日、外宮が10月5日である。
さすがにここは、襟を正してお参りをする。といっても私は、Tシャツ姿だったが。
再び神楽殿に戻り、ご朱印をいただく。これが外宮と同じそっけないもので、きょうの日付を揮毫したあと、「内宮○○」と朱印を捺しただけのものである。さすがに天下の伊勢神宮。ごちゃごちゃしたことは書かないのである。
ここでも式年遷宮の献金を行っていたので、出雲大社と同じ2,000円を奉納する。この金額が高いのか安いのか分からない。恐らく、安いのだろう。
待合室みたいなところがある。ジュースの自動販売機があったが、冷水器が置いてある。もちろん無料で、ありがたくいただいた。
再び宇治橋を通って、内宮を出る。これで出雲大社と伊勢神宮外宮、内宮、3つの式年遷宮参拝が終わった。どのくらいパワーをいただけたのか分からぬが、やるだけのことはやったつもりである。
右手を見ると、古風なたたずまいの飲食店が、一直線に連なっていた。ここが旧参宮街道の「おはらい町通り」である。これが物凄い人出で、思ったのだが、参拝者はこの通りの観光が目的で来ているのではあるまいか。そう考えれば、京都の清水寺界隈にも、同じ雰囲気はあった。これらはいわば、日本の元祖テーマパークなのだ。
お昼はとっくに過ぎているから、伊勢うどんを食したいが、ホントに時間がなくなってきた。後先考えずに伊勢うどんを食し、それが原因で新幹線にでも乗るハメになったら、数百円の出費が数千円の出費になってしまう。ここはぐっと我慢するしかない。
右手に赤福本店が見えてきた。誤解を恐れずに言えば、伊勢神宮のイメージは内宮でも宇治橋でもなく、この赤福本店ではないかと思う。
本店は物凄い客だった。この不景気に、羨ましいことだ。
そしてその手前の道を右に曲がれば、小さな橋があるはずだ。きょうは6月30日、みそかだ。
伊勢には毎月1日、いつもより早く起きてお参りする風習が残っており、それにちなんで赤福では毎月1日、「朔日餅(ついたちもち)」を発売している。お笑いのU字工事がテレビ朝日「いきなり!黄金伝説。」で紹介したことから、一躍有名になった。その橋の袂に、購入の順番を待つ行列があるはずなのである。
またU字工事が並んでいるのかと期待しつつ角を曲がったが、彼らの姿はなし。ただし一番乗りの席も空席になっていた。つまり、席を外しているということだ。
朔日餅の「1番」をゲットするために、早い人は数日前から並ぶという。しかしそれは、食事とトイレ以外はそこに着座するものでなければならないと考える。空席の時間が長ければ、それは順番待ちをしていることにはならないと思うがどうか。
例えばどこかの将棋まつりで、最前列の席にチラシを置いて、本人は目当ての女流棋士が出てくるまで戻ってこない。その間別の出し物があっても、その席は空席になっている。世田谷の将棋まつりで実際にあったことである。こんな愚行をするバカ将棋ファンと、朔日餅先頭グループの本質は、同じことと思う。
赤福で赤福もちを買う。私が両親にお土産を買って帰ってもあまり喜ばれないが、赤福もちだけは別だ。これだけはすぐになくなる。
本店の向かいは別店舗があり、「おかげ横丁」の正面入口になっている。おかげ横丁とは初耳だが、さすがにここ数年の間にできたものだろう。
江戸の趣がうまい具合に再現されている。その一隅にラムネが売られていたので、買う。120円は良心的な価格である。
店の人にフタを開けてもらい、飲む。いうまでもないが、ラムネを飲むときは、ビン上部の窪みのところにビー玉を引っかける。これがうまくいかないと、ビー玉が飲み口を塞ぎ、うまく飲めない。
喉が渇いていたから、ラムネは実にうまかった。
おはらい町通りに戻る。古風な外観のコンビニがあったので、入る。103円のパックのお茶を買おうとしたが、小銭がうまく取り出せず、断念した。
もっと旧道界隈を楽しみたいが、もう東京に向かわなければならない。バス停前で赤福もちの追加を買い、私は伊勢市方面行きのバスに乗った。
バスは途中、五十鈴ヶ丘駅に止まる。風雅な駅名だが、近鉄の駅だろうか。若い女性が駅舎に向かって、恐ろしく長い列を作っている。近くで何かイベントがあったのだろうか。
私も降りたいが、JRとの接続がうまくいくか分からず、そのままやり過ごす。
宇治山田駅でも停車。ここはローカル線の一駅というイメージだったが、これは私の錯覚。堂々たる名駅舎だった。しかしやっぱり、降りられない。
時刻は午後3時20分。私が乗るべき電車は、15時26分・JR伊勢市駅発の快速みえである。そして鈍行を乗り継ぎ、東京駅には23時46分に着く。つまりこの快速みえが、私が東京に戻れる「最終列車」なのである。
3時22分、バスは駅前に着いたが、停止はせず、そのまま進む。何をやってるのだ!? バスは外宮方面ぞいで止まった。
私はバスを降り、駅前に駆けだす。しかし駅に着いても、そのまま改札を抜けるわけにはいかない。切符を買わねばならないからだ。
しかしバス代410円を払って、残りの所持金は7,010円。東京都区内まではここから7,630円かかる。つまりこのままでは東京に帰れない。ああ、どうする!?
(つづく)