一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

式年遷宮の旅・7

2013-08-16 00:04:37 | 旅行記・その他の地域
「ようこそいらっしゃいました」
あらためておかみさんが挨拶をする。宿は町屋風の趣で、私がいつも利用するビジネスホテルとは雰囲気が違う。
「きょうは市バスの一日乗車券を使いました」
しばらく雑談をしたあと、私はそう切り出した。
「あら、それはもったいないことしましたなあ」
「?」
「いまから河原町に行って11時台のバスで帰ってくれば、まだ、ただで往復できますのになあ。グエフフフ」
「ああ…」
おかみさんは、ピンクの電話の都子ちゃんをふた回り細くした感じだ。
「でも、さすがにそれはようしまへんな」
「はあ、そうですね。それより私、ここまでバスで来ないでJRを使ってしまったのが悔しいんです」
「ここにはバスが通じてますよ」
おかみさんはそういうと、ここまでの最寄りのバス停を教えてくれた。やっぱり、バスで来ることができたのだ…。「でもJRのほうが分かりやすいから、それでよかったんと違いますか」
「でもJRで140円を使っちゃったんですよ。それが悔しくて」
「それはもったいない! もったいないことしたなあ!」
おかみさんは、我がことのように残念がる。どうもおかみさんが話好きのようなので、私は例の似顔絵を見せる。
「いやあー!! お客さんによう似てますなあ。グエフフフ」
「これねー、似すぎてますよね」
そこからまた話の輪が拡がり、気がついたら30分くらい経っていた。おかみさんは話がおもしろくて、このまま夜通しおしゃべりできたら楽しいが、そうもいかない。おかみさんは引き揚げ、私は風呂に入る。出たころに2時間ドラマが始まり、それを観終えると、私はグダーッと横になった。
きょうは体調が悪かったのに、また無理をしてしまった。私はボンヤリと空(くう)を見る。もう全然、体が動かない。何もかも忘れて、このまま眠ってしまおうか、の思いがよぎる。
「何もかも忘れる」
これができたら、人間、どんなに幸せだろう。しかしなかなかそうはいかないのだ。いろいろしがらみが多すぎる。
よろよろと布団を敷き(セルフなのだ)、午前0時すぎに最後の力を振り絞ってブログをアップすると、私はそのまま横になり、眠った。

明けて6月30日(日)。きょうは今回の旅行のもうひとつの目的、伊勢神宮をお参りする。といっても早起きすることはなく、ふつうに起きた。今日中に東京に帰らねばならないが、もう伊勢神宮をお参りするだけだから、無理をするまでもないと思ったのだ。
宿を7時40分ごろに出て、ふつうに駅に向かったが、どうも52分の電車に間に合いそうだ。駅に着くと、電車が入線するところだった。急いで切符を買い、ダッシュで電車に飛び乗った。この歳になって、こんな余裕のないことはしたくないが、やむを得ない。
7時56分、京都着。ここから近鉄に乗り換える。今回の旅行では大判時刻表を携帯したのに、JRをほとんど利用しないので、宝の持ち腐れになっている。使わない時刻表はタダの1kgの紙にすぎず、これはちょっと予定が狂った。
急行・京都発9時10分。約1時間ほど車窓を楽しみ、10時15分、大和八木に着いた。ここで乗り換えるのだが、接続よく、10時21分発の宇治山田方面行きがある。しかし有料特急なので、1,280円余計にかかる。これがネックで、一瞬迷ったが、やはり普通料金で行くことにした。これが私流の旅行である。
次の急行は10時50分発だから、この間に駅を出て水分を補充しておきたい。
しかし改札を抜けるのは不可とのことで、またも予定が狂った。外はきょうもいい天気で、このまま水分なしはつらい。
急行・大和八木10時50分発。きのう大阪から京都へ向かったときもそうだったが、周りは女性が多い。
そういえばきのうのおかみさんも、「正月はお伊勢さんをお参りする」といっていた。近鉄の彼女らが伊勢神宮に行くかどうかは分からぬが、京都も伊勢神宮も、女性に人気の観光スポットとはいえる。
「ほんまや」
という声が聞こえる。大阪弁は「ホンマや!」だが、京都弁のそれは「ほんまや」で、少しソフトだ。大阪弁や京都弁の好きな男子は多いが、分かる気がする。
12時26分、伊勢市着。宇治山田まであとひとつ、というところで、「伊勢神宮外宮にお越しの方は…」とアナウンスが入ったので、反射的に降りた。
駅前からはそれふうの参道が伸び、ここはたしかに伊勢神宮なのだが、どうも様子がおかしい。なんとなくこじんまりしているのである。私は過去に伊勢神宮をお参りしたが、こんな感じではなかった。
沿道には「伊勢うどん」を食べさせる店がある。是非とも食したいが、なんとなく時間が厳しい。いうまでもないが、東京まではJRの鈍行で帰る。逆算すると、伊勢神宮での滞在時間はあまりないのだった。実は、伊勢神宮到着が昼を過ぎるとは思わなかった。ちょっと、伊勢神宮までの距離間を軽視していた。
それでも、正宮と呼ばれるところを参拝し、御朱印もいただいた。
出雲大社より、伊勢神宮を先にお参りすべきだったかと思う。ここ三重県は植山悦行七段の出身地なのである。植山七段の対局日に伊勢神宮をお参りしていれば、また違った結果が出たかもしれない…。いやしかし、日程的に、伊勢神宮を先にするのは無理だった。
さて、「外宮」があるからには、「内宮」もあるのだろう。それが宇治山田から行けるところに違いない。そしてこの内宮こそが、伊勢神宮の代名詞と思われた。
とすれば、まず外宮からお参りした私は、偶然にも正着を指したのだ。しかしいまから内宮にお参りとは、ますます時間的に厳しい。こんなことならあのとき有料特急に乗ってれば…と後悔するが、もう遅い。私の人生はこんなのばっかりだ。
駅前に戻ると、タイミングよく内宮行きの連絡バスが来た。もちろん乗る。
バスは10分もせず内宮に着く。と、見覚えのある参道が目に入った。こここそが「ザ・伊勢神宮」だ。
(21日につづく)
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