一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

式年遷宮の旅・3

2013-08-07 00:31:24 | 旅行記・その他の地域
正門鳥居のたもとには、いくつかの飲食店が並んでいた。数年前にはなかったものだ。「ドクターフィッシュ」の店もあった。湯布院ほど混んでいないから、いまなら角質層を食べてもらえるが、ひとりでこの類の店に入るのはイヤだ。
私は正門に一礼して、お邪魔する。参道の端を歩くが、これが本筋である。
鉄製の鳥居、銅鳥居とくぐると、拝殿が見えてきた。さっそく参拝といきたいが、財布の小銭は、1円玉が5枚しかない。お賽銭は5円玉を1枚投じると決めているので味が悪いが、この5枚をすべて放り投げるしかない。
前の女性が、拍手を4回行っている。ここは「2拝・4拍手・1拝」なのだ。計5円を投げて、私も拝む。健康や仕事の成功など、ありとあらゆることを拝んだ。
続いて御朱印をいただく。朱印代はお気持ちで、とのことだったので、相場の300円を払った。
その先に八足門があり、奥には御本殿がある。御本殿の敷地内には、通常は足を踏み入れることはできないが、いまは特別拝観できる。平成の大遷宮ではここの修造が行われ、今年の5月、御神体が無事に、御本殿にお帰りになった。
八足門を出て、塀の外側から、御本殿を拝する。何か心が洗われるようだ。ちょっとマニア的見方をすれば、建物のデザインや構造が素晴らしいと思う。
式年遷宮に伴う寄付を募っていたので、2,000円を納める。これで己にどのくらいの徳が積もるか分からぬが、60年に一度の式年遷宮である。ここは清水の舞台から飛び降りる気分で寄付金を出した。そしてあすは、その清水の舞台に赴く予定である。
それにしても喉が渇いた。天は雲一つない青空で、初夏の太陽がギラギラと照り付けている。我慢できなくなって、土産物屋で120円のアイスを買った。
一息ついて、神楽殿に行く。注連縄は長さ13m、胴回り8m、重さ4.5tの重量級だ。出雲大社といえば、この注連縄をイメージする人も多いのではないか。注連縄の断面も大きく、少し前まではここに小銭がいくつも挟まっていた。しかしいまは綺麗に掃除されている。
10円玉が入ったので、ここで奮発して、10円のお賽銭を投じる。出雲大社といえば縁結びの神様として有名で、それにしては何度もお参りしている私はとんと御利益がない。しかし「男女の縁」で捉えるからいけないのであって、これを「将棋の縁」と捉えれば、十分御利益があった、と考えることもできる。LPSAがなかったら、中井広恵女流六段とお話することもなかったし、ジョナ研のみんなに会うこともなかった。LPSAには本当に感謝している。
「お金を投げないでください」
の声が飛ぶ。誰かが注連縄にお金を投げたようだ。「お金が注連縄に挟まれば御利益がある、というのは迷信です。やめてください」
分かっちゃいるけどやめられないのが日本人なのである。
おみくじを引いてみる。が、運勢が書かれていない。巫女さんに聞くと、それは各自で判断してください、とのことだった。
実際、おみくじは運勢より書かれている内容が重要である。けっこういいことが書かれてあったので、これは大吉だと思うことにした。
これで出雲大社の参拝はおわり、出雲大社前駅に向かう。正門を出てしばらく歩くと、右手に古風な旅館が見えてくる。「竹野屋」といい、歌手・竹内まりやの実家である。
出雲大社前駅に着くと、タイミングよく14時11分発というのがあった。
改札を抜けると、ホームの一隅に、年代ものの列車が展示されていた。1929年製造の「デハニ50形」である。時間があれば見学したかったが、私はそのまま、発車間近の電車に乗った。
定刻発。車内には観光案内役の女性車掌が同乗していた。最近のローカル線は、この類の女性が乗ることが多くなった。こうやってローカル線を盛り上げてくれればうれしい。
川跡(かわと)で乗り換え、14時36分、電鉄出雲市着。徒歩で出雲大社まで向かえば、3時間ぐらいかかるが、鉄道を利用すれば、わずか25分である。やはり列車は早い。
これからどうするか。時間があれば木次線も味わいたかったのだが、もう時間的に無理だ。午前中に予定外の時間を費やしたのが痛かった。
さっきまであれだけ天気がよかったのに、雨がポツポツ降ってきた。私は雨男なので織り込み済みとはいえ、不愉快だ。しかしもう、きょうの天気は関係ない。私はこれから大阪へ向かうのだ。
あすは京都を観光するから、本当は京都で泊まるのがよい。しかし京都は私のようなゲスな人間には敷居が高く、ワンクッション置いてからお邪魔したい、の思いがある。
私は駅前のコンビニに入り、緑茶(紙パック1リットル)とアイスを買った。アイスを食べながら、その大阪にはどの交通手段で行くか、検討する。本筋はJR利用なのだが、岡山までは特急やくもを使わざるを得ず、〆て8,610円もかかってしまう。
大阪へは高速バスも出ており、これが5,650円である。しかも所要時間は、どちらも6時間近くだ。振り子特急も体験してみたいが、これではやはり、高速バスを使わざるを得ない。
私はバスチケット売り場に行く。ここの女の子が前田敦子にそっくりで、動揺した私は、現金でチケットを買ってしまった。今回の所持金は41,263円。これで3日間がまかなえると思うが、どこで出費があるか分からない。なるべく現金は手許に残しておくのがよい。この出費がどう出るだろうか。
15時35分、一畑電鉄高速バス「くにびき号」は、定刻に電鉄出雲市駅前を出発した。
乗客は6人。なんとも贅沢なバス旅だが、どんよりした空気も漂う。列車は人の入れ替わりがあるが、高速バスにはそれが乏しい。活気がないのだ。誰にも邪魔されず自分の時間が持てるのはいいが、それが物足りなくもある。
バスは松江方面に走り、宍道湖を左手に見る。時間があれば宍道湖温泉にもつかりたかったが、やむを得ない。
高速道路に入り、17時11分、大山パーキングエリアで休憩。ジャージー牛乳ソフトクリームが125円だから買ったら、なんと170円だった。これは贅沢な買い物をしてしまった。
19時11分、安富パーキングエリアで休憩。だんだん大阪が近づいてきた。
20時54分、予定より26分早く、バスは大阪阪急梅田駅前に着いた。
大阪を訪れるのは、3年前にLPSAの1dayトーナメント・Bins Gate Cupを観に行って以来だ。
大阪を訪れた本当の理由、それは今夜泊まる予定の「カプセルホテル大東洋」にあった。
私は20数年前に新卒で入った会社で、ごく短期間、大阪担当だったことがある。月に2回ほど大阪出張があったのだが、その際の定宿が「大東洋」だった。ここは宿泊料が安かったこともあるが、談話室で常連客数人が将棋を指しており、その光景が私を掴んで離さなかったのだ。
そして私は彼らと将棋を指すことになるのだが、このあたりのエピソードは、「将棋ペン倶楽部 2002年春号」に詳しい。
その「大東洋」にいままた泊まり、往時を懐かしみたかった。
(つづく)
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