一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

式年遷宮の旅・4

2013-08-08 00:11:57 | 旅行記・その他の地域
大阪市内の夜はきらびやかだ。新宿のネオンともちょっと違う。一言で言うと、ハデなのだ。これは大阪でしか味わえない「色」である。
エスカレーターに乗ると、人々が左側を空けていた。東京とは逆で、大阪へ来たことを実感する。
駅ビルとその付近は、飲食店が多い。きょうは金曜の夜。どこも客でいっぱいだ。よく見ると、立ち飲みの店が多い。大阪の人はせっかちなのだろうか。
私は飲まないし、もう夜も遅いので、このまま大東洋に向かう。しかしそれがどこだか分からない。スマホの地図と路上の地図板を見較べるが、何が何だか分からない。北海道や沖縄は詳しいのに、大阪では不案内者なのだ。
数十分迷ったあと、警備員さんに、大東洋に抜ける通りを教えてもらった。とりあえずほっとする。
駅前のアーケード街に、美味いうどんを食わせてくれそうな店があったが、いまはうどんより、米を食いたかった。そのまま進む。
アーケード街を抜けてしばらく歩くと、大東洋の看板が見えてきた。新聞の売店がある。この店には記憶がある。懐かしい。
旅装を解く前に、遅い夕食である。「やよい軒」があったので、入る。食の都・大阪まで来てチェーン店とは芸がないが、ひとり旅だから、どこに入ろうと私の自由だ。
かつ丼とうどんのセット(790円)を頼む。かつ丼はもちろん、うどんはコシがあって美味い。
横のテーブルに座っている女性の2人組が、いろいろ話している。そのひとりが「ホンマや!」と言った。おおお…。本場の「ホンマや」ではないか!
東京で「ホンマや」は、明石家さんまが言ったのしか聞かないから、これは新鮮だ。私は静かに感動した。
大東洋に入る。大東洋には数年前にも1回訪れたが、そのときはもう、談話室に将棋盤は置かれていなかった。
私は受付を済ませ談話室に入るが、やはり今回も同じだった。しかも将棋盤があったところは、いまは自販機が置かれている。20余年前当時の常連客も、もちろんいない。さびしいことだが、時代は変わってしまったのだ。
カプセルに入り、スマホのメールを見ると、ジョナ研メンバーから同報メールが入っていた。きょうは東京・将棋会館で、植山悦行七段が石川陽生七段と竜王戦を戦っている。植山七段が勝てばいいが、負ければそこで引退となる。
もう結果が出ていてもいいはずだが、はっきりしない。勝っても負けても、W氏あたりには連絡が行っているはずだが、どうなっているのだろう。
午後10時2分、「大野先生は負けました(泣)」のメールがW氏から入っていた。大野八一雄七段は昨年2月にNHK杯の予選で勝って以来、白星に恵まれていない。きょうも棋聖戦の対局があったが、敗れたようだ。しかしきょうは、大野七段より植山七段である。勝ってほしいが、どうも、敗れたような気がした。
大浴場に行く。なんだか、場所が変わった感じだ。洗い場には、キュートな女性スタッフがうろうろしていて、妙に興奮する。
ちょっと熱めの湯だったが、むしろ寒気がするくらいだ。だいぶ体調は悪いが、いくぶん回復した感じだ。
湯から上がって鏡を見ると、頭髪が悲惨なことになっていた。だんだん髪の毛が薄くなってゆく…。体重計に乗ると、98.4kgあった。堕落した人生を送った結果が、このむごたらしい数字だ。旅行から帰ったらダイエットしなければと思う。

明けて29日(土)。きょうは一日京都観光の予定だが、早朝から動くことなく、ふつうに起きた。
午前8時半ごろ、大東洋を出る。「松屋」があったので、ここで牛丼の朝食を摂る。これは半ば定跡化している。
阪急梅田駅前に着いた。エキナカは綺麗に掃除が行き届き、華やいだ気分になる。室谷由紀ちゃんがどこかにいないかと目をこらすが、もちろんいない。
さて京都に行くにはいくつかのルートがある。JRは今回置いといて、京阪電鉄か阪急電鉄のどちらかを利用したい。京都と大阪の一文字を取った京阪電鉄がいいが、その駅が分からない。結局私は、そのまま阪急梅田から大阪に向かうことにした。
阪急電鉄京都線の特急電車が9時40分に出る。終点の河原町まで390円だ。安い! 大阪に住んでいる人は、たった390円で、ふらっと京都まで行けるのだ。そしてその逆もまた然りである。大阪と京都の人が羨ましく思えた。
電車は定刻に発車した。私が新卒サラリーマンのとき、旅先で知り合った女性が大阪在住のひとだった。彼女と私はウマがあい、彼女とは私が大阪に出張するたび、会っていた。
この阪急電車は、彼女と京都をデートした際に利用した。いまとなっては、懐かしくもせつない思い出である。
周りの乗客は若い女性が多い。服装も東京より若干ハデ目の気がする。スマホを繰るが、日本将棋連盟の対局結果が、まだ反映されない。植山七段はどうなったのか。
10時23分、河原町着。地上に上がると、そこは京都の街並である。しかしここがどこだか、さっぱり分からない。京都を訪れるのは、彼女とのデート以来。通算でも、4回目である。
とりあえず、目の前の大通りを左に進む。大橋が見えてきた。その下を流れるのは鴨川か。テレビ朝日の刑事ドラマでお馴染みの川であり、感激の極みだ。
その先に見えるは、食事処の納涼床か。ちょっと食事をしてみたいが、私には敷居が高そうだ。
その先を進むと、右手に豪壮な建物があった。京都南座だ。この程度は挨拶代わり。これから京都を象徴する建物に、いやというほど巡りあえる。
花見小路なる通りがある。ちょっと覗くと、江戸の街並みがそのまま残っているような、風情あふれる通りだ。もちろん足を踏み入れる。その一軒一軒に味があり、タイムスリップしたかのようだ。
再び大通りに戻り、直進する。その突き当たりに、朱塗りの正門があった。八坂神社だ。石階段を登り振り返ると、道路向かいのコンビニが、ずいぶん地味な外観をしていた。出雲大社の通りもそうだったが、周りの景観を損なわない配慮がなされているのだ。
神社をお参りする。しめ縄が輪っか状になっている。ここをくぐると御利益があるそうだが、ひとり旅ではやる気がしない。
お賽銭を投じ、御朱印をいただく。能舞台の手前、舞殿では、婚礼が行われている。公開結婚式というわけである。神社の関係者さんに聞くと、婚礼はけっこう行われているという。週末など、予約がいっぱいだそうだ。
自販機に冷水が売られていたが、200円では買う気がしない。このまま緑の中を先に進めばまだまだお寺がありそうだ。「高台寺」とあり、そちらも行ってみたいが、それをやると今後のスケジュールに支障を来す。
たった1日の京都観光である。清水寺、金閣寺、銀閣寺は見学したい。私は後ろ髪を引かれる思いで、引き返した。
きょうもギラギラと暑い。500mlのペットボトルスポーツドリンクが100円で売られていたので、買う。しかし20m進んだところに、同じドリンクが80円で売られており、ひっくり返った。
しかし私はどこへ向かっているのか。ガイドブックぐらい用意しておけばよかったと後悔する。
左を見ると、五重の塔が見えた。これはこの坂道を登るしかないが、それでは結局高台寺方面に行くことにならないか。なんだか遠回りした気もするが、まあいい。
五重の塔を外から拝観して、高台寺方面に行く。と、これまた見覚えのある坂道があった。二寧坂(にねんざか)だ。ここも彼女と歩いた記憶がある。夕暮れ時で、
「これから人が少なくなって、さびしいよね」
と私が言ったら、
「かずちゃんって、そういうひとなんだ」
と彼女は言った。
二寧坂を下ると、右に似顔絵屋があった。店内には人の良さそうなオニイサンがいて、「ご覧になって行きませんか」という。入るか否か。ここが運命の分かれ道だった。
(つづく)
コメント (4)
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