一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

第5回 信濃わらび山荘将棋合宿(第5手)・対局つづく

2012-11-10 11:13:26 | 将棋イベント
Fuj氏は「私はこっちで」。
それで私は、中井広恵女流六段の前に座れた。それはめでたいことだけど、座ったら座ったで、緊張の極みである。同じテーブルにはMinamiちゃんとHanaちゃん。私だけ空気が違うので、お呼びでない雰囲気だ。
これじゃあほかのメンバーとにぎやかに食べたほうがよかったんじゃないか、の思いもよぎったがそこはそれ、現実的に中井女流六段と卓が囲めるとは光栄で、食事もいっそう美味しく感じられた。
食後はコテージに戻って、将棋である。ここから深夜まで、ノンストップだ。
まずは女流王座戦第2局を最後まで並べてしまう。加藤桃子女流王座の強引な寄せが通って、そのまま押し切った。1手詰まで指したところに本田小百合女流三段の無念が表れている。しかし本田女流三段は苦しくなった。
食後の第1局目はN氏と。N氏は大野教室で何度か見かけたことがあるが、初対面に近い。合宿での指し手を見ていると、四間飛車穴熊が得意のようだ。というか、これしか指していない。
いくら私だって、相手の指し手が分かれば、対抗法を考える。N氏が穴熊に組む前に、急戦を仕掛けようと思った。
私の先手で、N氏の角交換四間飛車。△9二香▲3六歩△9一玉に、私は狙いの▲3五歩! もし△同歩なら、▲5六角△8二銀▲2三角成△3四角▲同馬△同銀▲2四歩でどうか。本譜は単に△8二銀だったので、▲3四歩△同銀▲2四歩で、おもしろい形勢になった。
N氏は△2二飛だが、私の▲5六角が継続の好手。△4五角は▲同角△同銀▲2三歩成で先手勝ち。やむない△2五角に▲2六銀と上がって、これは私が有利になった(読者の指摘により、▲2六銀では▲2三歩成△同飛▲3五歩or▲2六歩で先手必勝であることが分かった。言われてみればその通り…)。
しかし△2四歩に▲2五銀と角を取った手がどうだったか。ここは▲3七桂と跳ぶ手もあったかもしれない。
まあ、シンプルに角銀交換で先手よしだろう。しかしその後の私の指し手が雑で、形勢は逆転してしまう。
ところが形勢を悲観していたN氏はその順を逃し、最後は飛車を詰まされたところで投了となった。
感想戦では、△9一玉で△7二金が正着とされたが、いままでは何の苦もなく穴熊に組めてきたから、ここで細心の注意を払って△7二金は指せないだろう。ここは私がうまくやったということだ。
それにしても、有利になってからの私の楽観は何とかならないか。私は逆転勝ちより逆転負けのほうが圧倒的に多い。これを少なくするのが今後の課題であろう。
続いてSat氏と指す。Sat氏は自他共に認める強豪で、大野教室では大野八一雄七段や植山悦行七段と平手で指し、何度も勝利を収めている。私とは1勝1敗の戦績だがとても勝てる相手ではなく、指導を受けるつもりで臨んだ。
私の先手で矢倉に進むが、Sat氏は△6四歩。急戦で来るのかと思いきや、なかなか攻めてこない。
Sat氏△6二玉。ああ、Sat氏は右玉が得意だった。いつの間にか相手の得意にハマリ、指しにくさを感じた。
私は▲8九玉型で構える。Sat氏、桂を交換して、△9六歩▲同歩△9七歩。これを▲同香では△8五桂でツブレ。私は▲8八桂と受けたが、こんなところに桂を手放すようでは苦しい。
その後私は▲9七香と歩を払い、▲4五歩と△4四角を追ったが、△5三角と引いた手が、次の△6五歩(香取り)を見せて幸便。香を守るため▲9八銀と手放さざるを得ないようでは、いよいよ敗勢を自認した。
その後私にココセ級の悪手があったが、N氏はそれに気付かず。しかし△8六歩▲同歩△9四桂の控え桂が好手で、次の△8六桂が厳しい。
その手順を2度やられ、本当に投げようかと思ったが、私は▲8五桂と、未練がましく指す。
Sat氏、△8七香の田楽刺し。▲同飛△同馬で先手玉は必至となったが、私は▲7三銀の王手。以下△6一玉▲6二銀成△同玉▲6三銀(▲6四に歩があるので打てる)△5三玉▲5二金△6四玉▲6五香まで、後手玉がトン死してしまった。
いやはや、何とも不思議な勝利があるものだ。終盤まで私が悪かったから、感想戦をやるのも忍びない。と、Sat氏が
「大沢さんは早く投げるからもう投げてくれると思ったのに、なかなか投げないんで、戸惑ってしまいました」
と苦笑する。私の早投げはSat氏にも浸透していたのかと、私も苦笑するしかなかった。
時刻は午後10時を過ぎているが、His氏とKaz氏の姿がない。自室で仮眠しているようだ。この合宿では考えられないことである。His氏はやむを得ないにしても、Kaz氏も寝ているとは、どういうことだろう。
Kaz氏、最近は残業続きで、寝る時間もないという。いまの時代、仕事があるだけありがたいから、残業過多に同情はしないが、将棋の時間を削ってまで仮眠に充てるとは、よほど疲れているに違いない。
かくいう私だって、慢性的に体がだるいが、きょうは眠っていられない。
私はW氏と対局。旧LPSA金曜サロンでの、かつての黄金カードである。
この数年間、もっとも棋力が向上したのは、W氏であろう。氏と初めて対局したときは私の二枚落ちだったが、いまはふつうに平手である。しかもW氏は序盤巧者で、中盤まで私が必ず不利になる。W氏は植山七段や大野七段と接する機会が多く、よく教えを請うている。それが指し将棋にも反映されているのだ。
そんなW氏は、アマ1級で指している。彼が棋力を詐称しているから、周りがおかしなことになるのだ。
将棋はW氏の石田流。私は△4四歩。これにW氏が▲4六歩と受けなかったので、私は△4五歩と伸ばした。以下は△4四角~△3三桂の狙い。私が密かに得意にしている形である。
W氏は▲6五歩と決戦し、飛車角総交換の派手なやりとりになったが、私が△5五角と先着したところで、W氏が戦意喪失してしまったようだ。
これでもむずかしい戦いだったのだが、最後は私の勝ち。局後は大野七段に入ってもらい、濃密な感想戦が行われた。W氏、実戦より研究のほうが好きらしく、対局より感想戦のほうが長かった。
たしかこのときだったか、大野七段が、仮眠に入った。そういえば中井女流六段、Minamiちゃんの姿もない。やはり仮眠しているようだ。中井女流六段も、だいぶ疲れがたまっているようだったが、大丈夫だろうか。みんな、少しずつ歳を取っているのだ。
(つづく)
コメント (2)
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