一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

第5回 信濃わらび山荘将棋合宿(第3手)・将棋に逃げている

2012-11-08 00:48:10 | 将棋イベント
大広間の一隅には、「将棋ペン倶楽部」のバックナンバーと一公ブログの束が置かれている。ヒマな人は一読してくださいというFuj氏の配慮だ。
いつもながら、一公ブログの束がすごい。これらをプリントアウトしたFuj氏もスゴイが、本文を書いた私もスゴイ。こんなのを書く時間があったら、仕事のひとつも覚えればいい。早く寝て、明日に備えればいい。眼を休息させればいい。すべてから逃げ回った結果がこれだ。このプリントの束は、自己嫌悪の塊だ。
隣では大野八一雄七段が、W氏に将棋を並べている。それは先日指された、竜王戦5組残留決定戦・宮田敦史六段との一戦だった。
当ブログでたびたび書いているが、アマの有効な上達法は、プロの自戦解説を聞くことだと思う。アマにはない発想、構想が斬新で、目からウロコが落ちまくる。さらにいえば、解説は敗局が望ましい。負け将棋と勝ち将棋、両パターンが聞けるからである。
本局は相矢倉だった。私はあまり矢倉は好きではないが、こうして初歩から講義を受けると、それなりにおもしろいと思う。
将棋は激戦だったが、大野七段に終盤錯覚があり惜敗、6組の降級が決まった。昨年やっとの思いで昇級し、焼肉大パーティーを開いたのが何だったのかと思うが、ナニ、また来期昇級すればいいのだ。
大野七段は続いて、片上大輔六段との王座戦を並べる。これも相矢倉で、おもしろい戦いだった。矢倉…大いに勉強になったから、今回の合宿で、Fuj氏にぶつけてやろうか。
中井広恵女流六段に教えていただく。中井女流六段には、平手1勝19敗。もう平手の手合いではないのだが、ほかの女流棋士とは指し分けなので、中井女流六段に駒を落としてもらうわけにはいかない。つらいところである。
将棋は私の石田流三間飛車。中井女流六段は穴熊に組む。対三間飛車の中井システムである。しかしイビアナは駒が偏るから、三間飛車も指せると思っている。岩根忍女流二段などは、この指し方が巧妙だ。
だが本局は、私の指し手がおかしかった。三間飛車なのに、▲5六銀と出たのはヘンだ。△5五歩に銀を引くわけにいかないから▲4五銀だが、△3五歩~△4二角と応接され、指しづらくなった。
数手後、△6六角と飛び出され、これが△5七角成と△9九角成(香取り)の両狙い。先手はすでに桂損しており、飛車成りは約束されているものの、それぐらいではとても合わない。ここで私は投了した。
W氏が呆れて、試しに中井先生が角落ちで指してみれば? と言う。
まあ、ここまで勝敗が偏ると、それもやむを得ない。じゃあ試しに…と指してみた。
「角落ちで勝てる気がしない」
とボヤキつつ、中井女流六段は指し手を進める。私は中央に▲5五銀打。
「手厚く指してますネ」
と大野七段が苦笑する。事実このあたりまでは、下手が十分だった。ところが、私の楽観と中井女流六段の追い込みで、気が付いたら混戦になっていた。
傍らでは、ペア将棋が行われている。Fuj氏はこれがことのほか好きで、今回の合宿でも何局か指したいようなことを言っている。ちなみに私は、ペア将棋が嫌いだ。男同士でペアを組んで、どこがおもしろいのだろう。
△3六金が決め手。私は見苦しい王手をかけて、投了した。角落ちでも、中井女流六段は強かった。
気が付くと、時刻は午前2時を過ぎていた。まだ何人か残っていたが、2時15分、就寝。3時まで粘る予定だったが、みんな、きょうはお疲れモードだった。
私は寝床に就くが、仕事や家のことを考えると、眠れない。将棋のように数手(年)先を読んでみると、我が人生には破滅しかないのだ。そしてそれは、軌道修正が利かない。座して死を待つしかないのだ。そうなるのが数年前から分かっていながら、何の手も打たなかった自分の愚かさ。
オレは何て親不孝なんだと思うと、目は冴えるばかりだった。

2日目。午前7時、アラームの音で叩き起こされた。それでもいくらかウトウトしたようだ。中井女流六段、大野七段、W氏、Minamiちゃん、Hanaちゃんは離れでの泊まりなので、7部屋ある「きんぷ」は、ひとり一部屋である。
広間に出ると、Fuj氏がいた。朝食は7時半からだが、7時に行っても誰もいなかったという。
私は部屋に戻り、7時半に出直す。外はきょうも雲ひとつない快晴だった。「植山効果」は凄まじいものがある。将棋三昧の私たちに天候はあまり関係ないけれど、晴れているに越したことはない。しかし昨夜はよほど冷え込んだのか、霜が降りていた。
食堂に入ると、中井女流六段ら一部は、すでに朝食を終えていた。今回、うまくやって中井女流六段と食事をご一緒したいが、残るチャンスは5回に減った。
朝食のあとは、すぐに将棋である。私たちの合宿は、食事と寝るとき以外は、将棋といっても過言ではない。
コテージに戻り、私はIs氏と対局となった。私の先手で、▲7六歩△3四歩▲2六歩△3三角。数手後、▲3三角成△同桂に▲5六角と打ち、▲3四角と1歩を掠め取ったところでは、指し易くなったと思った。
Is氏は△5五角の飛車取り。▲3七銀△4五桂▲4六銀△同角▲同歩△3七銀▲同桂△同桂成▲2九飛。Is氏の強攻だが、結果は角桂交換でこちらの駒得。これは勝ったと思った。ところがIs氏に成桂を活用され、むずかしい形勢になった。
以下、こちらにもチャンスはあったらしいのだが、いったん傾いた流れは、もう元に戻らない。最後は惨敗の形になった。
続いてFuj氏と。Fuj氏は私との対局をメインに据えていて、本当はもっと時刻が押し詰まってから戦いたかったらしいのだが、午後からはメンバーも増えるし、指せるときに指しておいたほうがいい。
私の先手で▲7六歩△8四歩。それならと矢倉に誘導した。私は▲4六銀~▲3七桂。Fuj氏は△2四銀。昨夜の大野-片上戦では、片上六段が▲2五歩と指し、大野七段は△3三銀と引いた。しかし片上六段に▲1七香~▲1八飛から1歩を交換され、おもしろくなかったらしい。△1三銀と引くのだったという。
それに倣って、私も▲2五歩。Fuj氏は△3三銀と引くだろうから、そのときは▲1七香と上がり、片上手順を踏襲して優位に進めるつもりだった。
ところがFuj氏は△1三銀! 正着を指され、これで私はクサッタ。
そこへ、Sat氏とN氏が現われた。え? もう来たの!? ふたりはクルマだが、何時に家を出たのだろう。6時に出たとしても、たった4時間しか経ってないではないか。大野教室には、何故か(愛すべき)将棋バカが集まる。
我が将棋のほうは、Fuj氏の指し手が冴え、Fuj氏の快勝。矢倉ではFuj氏に一日の長があったようだ。
(つづく)
コメント (4)
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