一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

第5回 信濃わらび山荘将棋合宿(第2手)・クソ粘りで逆転勝ち

2012-11-07 00:03:44 | 将棋イベント
「15分○秒」
中井広恵女流六段が読み上げる。
「もう全問解いたの?」
と大野八一雄七段。
もちろん全問解いた。惜しむらくは持ち駒の見間違いによるロスタイムで、それがなければ13分台だったはずだ。
その6分後、Fuj氏も全問解いた。さらにその12分後、Is氏も名乗り。全問解答者はここまで。
左にHis氏、右にHon氏が座っていたが、His氏は惜しくも全問解答ならず。Hon氏はかなり苦戦しているようだった。
答え合わせは解答用紙を交換して行う。正解の読み上げは大野七段が担当した。唸ったのは、大野七段が問題を一瞥し、解きながら解答を述べたこと。これぞプロの至芸であろう。
答え合わせの最中、His氏が質問する。符号の書き間違いがあったが、それはどうするか、というのだ。私はHis氏の答案を見ているが、His氏にも書き間違いはあった。…あれっ? じゃあFuj氏が言うその書き間違いとは、私のものか!! ▲6二角成とすべきところを、▲7二角成と書いていた。
大野裁定は、作意が分かれば、正解として扱う、というものだった。しかし私は、書き間違えた自分自身が許せなかった。
ここで時刻は午後6時。ちょうど夕食の時間である。ここの夕食が廉価ながら豪華で、毎回楽しみだ。きょうの献立もバランスがよく、美味しくいただいた。
食事のあとは、いよいよ将棋対局だが、その前に風呂に入る。ここ信濃わらび山荘は体験学習施設だから多くは望まないが、入浴時間が短いのが難点だ。午後4時半から9時までは短い。よって、入れるうちに入っておくのがよい。
大風呂はちょうどいい湯加減で、気持ちよかった。
さて、コテージの広間に戻り、対局である。暖房機の脇には飲み物と大量のお菓子が出ている。コップはスーパーで調達した紙コップ。いままではグラスを食堂から借りており心苦しかったので、これはいい判断である。
まずは大野七段に角落ちで教えていただく。相居飛車で進行するが、どうしても私は急戦調にしてしまう。では中盤の一場面を紹介する。

上手・大野七段(角落ち):1一香、1四歩、2四歩、3二玉、3三銀、3四歩、4二金、4三金、4四歩、5三銀、5四歩、6四歩、7三桂、7四飛、7六歩、8五歩、9一香、9四歩 持駒:桂
下手・一公:1六歩、1九香、2五飛、3六歩、4六歩、4七銀、4八角、4九金、5六歩、6六歩、6七銀、7八金、7九玉、8七歩、8九桂、9七歩、9九香 持ち駒:桂、歩2
(△2四歩まで)

ここで勢いは▲7五歩である。△8四飛なら▲7六銀で下手十分。当然△2五歩▲7四歩と飛車の取り合いになるが、その先△2九飛▲3八銀△1九飛成の結果は、次に△4七香があり下手が不利と見た。
それで私は辛抱の▲2九飛だが、大野七段に△7七桂と打ちこまれ、非勢。以下飛車損の攻めで玉頭にと金を作られ、戦意喪失した私は、そこで投了した。
実際はこの局面もむずかしかったらしいのだが、いったんヤル気がなくなると淡泊になる、私の悪い癖が出てしまった。
感想戦で私が、△2九飛の変化を嫌ったと言うと、それには▲3九飛!を推奨された。対して△2九飛の動き場所が意外にない。結果飛車交換が絶対となり、▲7三歩成の桂取りが残っている下手が有望、とのことだった。
それにしても▲3九飛とは…。全然見えなかった。
感想戦の途中、W氏とHanaちゃんが到着した。Minamiちゃんはともかく、Hanaちゃんの参加は意外だった。将棋が指したい一心に違いないが、親と3日間離れての生活はどうなのだろう。私なら間違いなくホームシックにかかっていた。ともあれHanaちゃんにこれだけの情熱があるのなら、プロの四段も夢ではない。
8時すぎ、私はMinamiちゃんと対局。今回Minamiちゃんが参加したのは、お菓子の食べ放題ということもあるが、やはり将棋が指したかったからだろう。その意気やよし。
二枚落ちだったが、Minamiちゃんが格段に強くなっていたのに驚いた。いままではトンチンカンな指し手が見えたが、今回はそれもない。勝敗はMinamiちゃんが残念だったけれど、この調子ならもっと強くなると思った。
続いてHanaちゃんと。Hanaちゃんはゴキゲン中飛車一本槍。相手の作戦が分かっているから私も対策を立てやすい。私は居飛車の歩突きを後回しにし、中央を厚くする。これで模様がよくなったが、Hanaちゃんは2筋と3筋の歩をじっと伸ばし、飛車を展開する。実に渋い指し回しで、こういう指し方もできるのかと感心した。
将棋はまたも私の負け。△3六歩の馬取りに私は▲2七馬と寄ったが、ここは▲5五馬と出るべきだった。
外は夜のとばりに包まれている。それに比例して気温の低さも相当なもので、広間は暖房をガンガン入れているが、全然暖かくなっていない。昨年の同時刻は13人いたから、その差もあるのかもしれない。
9時50分、His氏と対局。His氏の得意はゴキゲン中飛車と筋違い角。私は相手の得意を外すので、His氏▲7六歩に△8四歩▲5六歩△8五歩と突いて、どちらの戦法も拒否した。
これは私がヘタをやって終始劣勢だったが、終盤、私は死んだフリをして銀を取る。His氏は当然、▲3三同角成。これで2八への利きがなくなったのがミソで、そこで私は先手玉を詰め上げた。これは僥倖の勝利だった。
どんどん行く。次はHon氏と対局。私の後手で、戦型はHon氏の十八番・変態三間飛車穴熊となった。
これはHon氏の捌きが冴え、Hon氏勝勢。もうどう指されても負けで、投了してもおかしくない状態。一般リーグ戦はチェスクロックを使っているが、Hon氏がすでに秒読みだったのと、夕方の詰将棋トライアルで苦戦していたので、もう少し粘ってみる気になった。
Hon氏も私の意外な粘りにメロメロだったが、決定的な悪手は指さない。しかしなおも私は粘り、徐々にその差が詰まってきた。
だがそこまでだったようだ。私は相手玉に詰めろをかけて首の座に座る。Hon氏の王手ラッシュが始まり、Hon氏の持ち駒は「角金銀3香」。もうどう指されても負けだったが、Hon氏が秒読みに焦って詰まし損ね、私の大逆転勝利となった。
丸負けの将棋から、いたずらに粘って手数を延ばすことを、ジョナ研用語で「Fuj」というが、本局の私は本家をも凌いだようで、「これじゃあ次からは、クソ粘りすることを『一公』と言わねばなりません」と、Fuj氏の弁だった。
(つづく)
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