「軍が隕石を撃墜すべきだった」「直径17㍍の隕石を迎撃できずに、ミサイルの攻撃にどう対処できるのか」。
まあ、そういわれてもしょうがないだろう。
あの隕石落下と、おまけの小惑星のすれ違いは、終わっていない。
むしろ、始まりか。
ロシアには、歴史上の実績があるのだ。1908年、シベリア・ツングースカで今回と似た空中爆発が起きている。
47年にも極東沿海地方でやはり大規模な隕石落下があったという。
宇宙からの脅威にどう備えるのか。この問題は、費用対効果などの面から態勢づくりが難しい。
隕石を発見し破壊するための、見つけるための施設と各種攻撃兵器を統合したシステムの構築には280億㌦
(約2兆6200億円)以上かかるのだが効果は薄いとみられている。
また、NATOにも共同対処する案を持ち掛けているが、NATOは極めて冷淡だという。
「強い指導者」であるべきプーチン大統領は、沈黙するしかない。さらにプーチンらロシア指導部が
神経をとがらせている深い問題があるという。
それは、ロシア人の宗教性と深く関係しているというのだ。
これは、あの佐藤優氏の指摘である。
1986年4月26日のチェルノブイリ原発事故にさかのぼる。この事故をロシア人は、合理主義の限界と考えたという。ソ連体制の構造的欠陥がみえてしまった。
ソ連社会はその後、内側から崩れ始めた。
チェリャビンスク州にも原発がある。隕石の爆発地点がずれていたら、事故が起きたかもしれない。
また、軍事関連の秘密研究所や工場もたくさんあったという。
ロシア人はさまざまな想像をしたであろう。ロシア人は不安を感じたのである。
それも、かなり深いところで感じたらしいのだ。
チェルノブイリとは、ロシア語で「苦(にが)よもぎ」の意味だそうだ。
「新約聖書」に、「ヨハネの黙示録」がある。その記述。
《 第3の天使がラッパを吹いた。すると、松明のように燃えている大きな星が、天から落ちて来て、
川という川の3分の1と、その水源の上に落ちた。この星の名は「苦よもぎ」といい、水の3分の1が
苦よもぎのように苦くなって、そのために多くの人が死んだ。
第4の天使がラッパを吹いた。すると、太陽の3分の1、月の3分の1、星という星の3分の1が損なわれたので、
それぞれの3分の1が暗くなって、昼はその光の3分の1を失い、夜も同じようになった 》(8章10~11節)
ロシア人が聖書に記されたこの世の終わりの天から落ちてくる星の名とチェルノブイリ事故を
結びつけたことが重要なのだ。
プーチン大統領は直接、隕石爆発事故対策に取り組んでいる。
隕石をめぐる流言飛語に対する監視をFSB(連邦保安庁=秘密警察)が強めている。
(2013年2月23日 SANKEI EXPRESS “佐藤優の地球を斬る”によります)
佐藤さん、ありがとうございます。