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男性におけるHPV感染の実態調査

2011-03-01 | 毎日いんふぇくしょん(編集部)
米国の国立がん研究所(National Cancer Institute:NCI)の研究費で行われた(ワクチンメーカーや検査メーカーのお金がからんでいない)HPVについての調査がLancet 3月1日号に掲載されています。

Incidence and clearance of genital human papillomavirus infection in men (HIM): a cohort study

前向きコホートです。

アメリカ、メキシコ、ブラジルの18-70歳男性。
米国タンパ 1,427人、ブラジルのサンパウロ1443人、メキシコのCuernavaca(読めない・・)1,429人です。

平均年齢は32歳。

全員、HIV陰性で、がんの既往はありません。
6ヶ月ごとに、検査を行い、HPV関連症状の有無をチェックしました。平均フォローアップは27.5ヶ月。

検査では3検体を採取(penile and scrotal cells were obtained from the coronal sulcus, glans penis, penile shaft, and scrotum for the detection of HPV DNA and for HPV genotyping)。

なんらかのHPVに感染していたのは50%。がん関連HPVは30%。
どの年齢群でも高率にHPVは検出され、生涯にわたってHPV感染リスクがあることがわかりました。

新規のHPV感染(incidence)は、38.4/1,000 person-months 。

がんに関連するハイリスク型のHPVは、性的指向(相手が男性か女性か両方か)を問わず、パートナーが複数いる男性で検出されました。

■50人以上の女性との性交を行っている男性は、性交相手なし・または一人だけに限定してる男性と比較をして、2.4倍、高リスクHPVに感染していました。

■10人以上の女性と性交をした男性でも、ゼロまたはひとりだけの人と比較をして2倍以上のリスクがありました。

■高リスクHPVに感染するリスクは、少なくとも3人の男性と肛門性交をする男性では、最近パートナーのいない男性と比較をして2.6倍高くなっていました。

HPVは感染しても多くの場合自然消失しますが、18~30歳の男性では、想像よりも長く感染が持続していることがわかりました。

WebMed
Half of Men Have Genital HPV
Internal Medicine News
Study: Half of Men Had Genital HPV Infection

パートナー数の増加によるHPV罹患リスクの上昇はすでに知られていることですし、何かすごく新しい情報があったわけではありませんが、ワクチン接種を男性に公費で提供するかどうかという政策判断に使えるのではないか?ということが指摘されています。

日本とこの調査地域との違いとして、まず「コンドーム使用率」を考える必要があります。
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