感染症診療の原則

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感染していても気づかない(気づけない)

2010-03-09 | 毎日いんふぇくしょん(編集部)
(数値解説を補足3/10)
昨日の東京の私立中高での集団結核ニュースから一般の方からの質問が増えました。

■結核の人のそばにいたら絶対うつるのか?

菌に曝露することと、感染することは異なります。
(適切な治療開始後2週間すぎれば感染力はほとんどないといわれています)

■感染したら必ず具合が悪くなるのか?前駆症状のようなものはあるか?

必ず、ではありません。曝露と感染は異なりますが、感染と発症も異なります。

おおざっぱな説明になりますが、結核菌に感染した健康な成人は、90%の人は発症しないで人生を終えます。
残り10%のうち、5%が1-2年以内に発症します。5%は残りの人生(おそらく人生後半)で発症する、と考えられています。

以上は、National Jewish Medical Center TB Courseでならったこと。日本の研究所は別の数字を提示しています↓
http://www.jata.or.jp/rit/rj/meneki/reaction/defence/defence3.html

■発症する人としない人の違いは?

免疫力が下がり、それまでじっとしていた結核菌が活動しやすい条件があるかどうかと考えるとわかりやすいです。
健康な人と比較をすると、高齢者、糖尿病やHIVなど免疫の低くなることがわかっている病気になる、その他にも別の病気で人工透析・抗がん剤・免疫抑制剤の使用・ステロイドの使用など免疫が低くなるような条件がある人では発症リスクが高くなることがわかっています。

■治療をすれば治りますか?

基本的にはYESです。問題があるとしたら、薬に抵抗性をもつ耐性の結核菌の場合です。
複数の薬が効かない・効きにくい多剤耐性結核の場合は治療は難しくなります。

■病院にいけば結核かどうかすぐわかりますか?

医師が結核の可能性を考える必要があります。
3ヶ月以上続く咳、熱、疲れやすさ、体重減少、寝汗などの症状が内科を検討します。
ツベルクリン検査は指標とはなりますが、反応しない人もいます(ので完全ではありません)。
胸部レントゲン写真は、肺で問題の場合の異常把握になります。画像上異常がなければ除外につかえます。肺以外の結核は胸の画像だけではわかりません。
肺の結核を確定診断をするためには組織を調べる必要があり、痰を出していただいて調べるのが通常のやりかたです。


<曝露・感染のハイリスク層>

-濃厚接触をした
-結核感染の広がっている国の出身者
-集団生活・集合施設、シェルターなどの居住者
-ハイリスク層をケアする医療従事者
-医療アクセスのよくない低所得層
-上記のようなハイリスク成人と接触のある新生児、こども、思春期層
-薬物使用者

<発症のハイリスク層>
-HIV感染者
-2年以内に結核菌に感染した人(特に新生児・子ども)
-糖尿病のような基礎疾患のある人
-薬物使用者
-過去に不適切な結核治療をした既往のある人
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2 コメント

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結核の除外について (BAN)
2010-03-10 06:56:50
胸部レントゲン写真が活動性結核の除外に使えるという事ですね。これについては何か論文等ございますでしょうか?後学のために教えて頂けると幸いです、
返信する
別記事に (編集部)
2010-03-11 07:50:27
たいへんよいご指摘をありがとうございます。本ブログは研修医ターゲットのため、検査前確率の考え方として別記事まとめようとおもいます。

National Jewish Medical Center のTB Courseでの講義でもこのような説明でしたが、一般に使える情報と広く認識されていると思います。

HIV診療に関わると、典型的な結核っぽい画像は結核ではなく、結核にはまったくみえない画像が結核・・・という事実に何度も出くわすので、基本事項(疫学含む)を勉強した後、除外に使えない例外パターンを学ぶとよいのでしょうね。
返信する

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