感染症診療の原則

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H7N9 今週のまとめ 

2013-04-13 | 毎日いんふぇくしょん(編集部)
中東や中国から帰国してお熱が出て咳もあるよ、というひとはずっとまえから医療機関を受診しています。
(渡航歴を伝えているかどうかは不明ですがー)
軽症ならお帰りになりますし、肺炎とか重症感があって入院ならば、通常呼吸器感染症で行う感染予防策をOnにします。
現在は、この条件にあてはまったら保健所にお知らせ下さい、、ですのでお知らせもすることになりますが、2003年や2009年の反省を生かすならば、ここで人権問題につながるようなことのないよう、患者さんやご家族に必要以上の負荷を与えないようにするのが臨床の人の仕事でもあります。

医療者がオタオタ、アワアワしないためには、通常、「インフルエンザ様症状」の患者にどのような対応ができているか?が問われます。
患者さんは診断書をもって(遺伝子検査結果をもって)受診しませんしね。

いま、風疹が流行しているので麻疹の見落としがおきています。
インフルエンザインフルエンザ、、と緊張していると他の感染症や疾患を見落とす可能性もあるので、ときどきチームの間で声をかけあって現況把握ができるといいですね。


そして、状況がよくわからないわ・・・というときは、情報源豊富で、判断力のある信頼スジ情報をみておくのが便利。
自分で全部1次情報を見渡しても、あまりに高度すぎてわからないから。

このような表に胸がときめくかどうかは人によります。

そんなときに便利なのがCIDRAPです。

H7N9ウイルスの遺伝子情報について

お。そこにJapanの文字。

"The Japan group's findings appear to echo the report from Chinese researchers yesterday that there have been at least two introductions into humans.

The Japanese researchers also detected mutations increase binding to human receptors, a key marker health officials use to gauge the infectivity of new flu viruses. They found that the two Shanghai strains and the Anhui strain had mutations that increase the binding of H5 and N7 viruses to human-type receptors.

One was the Q226L mutation, also flagged by Chinese researchers yesterday. It has been linked to the spread of respiratory droplets in ferrets and was a finding in two controversial studies―one by Kawaoka's group―in 2012 involving lab-modified H5N1 strains."
 
関心ある人は上のリンクをお読み下さい。

CDCが暫定のガイダンスを発表したのは4月11日(日本は12日)
Interim Guidance for Infection Control Within Healthcare Settings When Caring for Patients with Confirmed, Probable, or Cases Under Investigation of Avian Influenza A(H7N9) Virus Infection

など、最新情報みわたして、これみておいたほうがいいんじゃないかなというお勧め記事がならんでいます。

あとは、ECDC。リスクアセスメントを定期的に発表するので、よくわかっていないメディアの憶測記事を減らす効果も期待できます。
公的情報とか専門家個人的コメントしかないと、全体像がよくわからないので、あいまい~かもしれないテンコモリ情報が流れてリスコミとしてもよくないです。

ECDCが12日に発表したリスクアセスメント情報 


こんなに美しく整然とした感染症情報をかいてみたい。英語で。

On 31 March 2013, Chinese authorities announced the identification of a novel reassortant A(H7N9) influenza virus isolated from three unlinked cases of severe respiratory disease in eastern China. This is the first time that human infection with avian influenza virus A(H7N9) has been identified.

アウトブレイクの状況が数行ですっきり。記述疫学の基本。ひと/とき/ばしょ。
場所は中国の東部 人は誰?重症の呼吸器疾患 とき、最初に「発表」されたのは3月31日。新しいインフルエンザウイルスが把握された、というアナウンス。

In light of this, ECDC issued its initial risk assessment on 2 April.

2日後には初期評価を発表。これはその10日後の2回目のアセスメント。

Since then, human cases have continued to be reported from eastern China.
As of 11 April, there were 38 laboratory-confirmed cases including ten deaths reported from four bordering provinces with a concentration of cases in and around Shanghai.

現在も報告は増えており、4月11日の時点では38例の「検査室で診断された」確定症例と、10例の死亡例が周辺地域含めて把握されています。上海との関連性に注目。

検査室で確認されていない、かもしれない例とか、元気なので受診していないひとたち(おそらくたくさんいる)はカウントされていません。
分母を超重症呼吸器の人にすると死亡率は超高くなり、
血清サーベイ等で市場で働く人をしらべて、けっこう感染しているんですね、ということがわかると分母がとても大きくなるので致死率の数字は小さくなります。


Cases occur sporadically, without obvious epidemiological links.
There is currently no confirmed human-to-human transmission.

明確な疫学的なリンクはなく、散発的に発生している(把握されている)。
ヒトヒト感染は現時点では確認されていない。

(仮に同じ家族内に症例がいても、全員が生きているトリを扱う市場で働いていたらなんだかよくわかりませんね・・・)

The updated ECDC risk assessment of 12 April concludes that the risk of the disease spreading to Europe via humans or through poultry is low at this time. It lists major developments since the initial risk assessment, as well as recommendations for the EU/EEA countries.

現時点では、ヨーロッパに人やトリを介して広がるリスクは低いです。

という評価。

日本は法律施行を前倒し。そんなことできるんですね。他の感染症の対策もそれくらいのパッションでおねがいします。
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