感染症診療の原則

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エボラウイルス疾患とその周辺 2014年7月

2014-07-28 | 毎日いんふぇくしょん(編集部)
ICTなどで質問されることもあるでしょう、、ということで中間サマリー的なものを書いておきます。

これまで中央アフリカでアウトブレイクしていたエボラ出血熱ウイルスが、西アフリカで流行。
これが今回考えるポイントの一つです。

感染症の情報は、time, place, personでまとめます。
位置・地理情報で把握することはとても重要。記事にある地図をみせるとよいでしょう。

次に感染ルートと拡大(2次3次)ルートです。
誰かが運んだのか?
媒介する動物が広がったのか?

仮説を元に検証されることです。
エボラウイルスにはいくつかの型があります。拡大しやすいタイプのものとそうでないものがあります。

環境調査とともに、文化社会的背景を検討し、曝露源をみつけ介入できないか考えます。
今回の流行では、公式にコウモリの喫食を控えるよう注意喚起がおこなわれています。
食事や、性交など日常生活や習慣にねざしている行動リスクをかえるのはとてもたいへんです。
食料が限られているところでは代替物も必要になることも。

すでに1200例を超えている確定症例ですが、これは過小評価です。
ラボ診断が難しい地域だからです。

昨年終わり頃、アウトブレイクの探知初期は、ラッサ熱+下痢(コレラなど)の合併ではないか?といわれていました。
記事にもエボラ出血熱、ではなくエボラウイルス疾患、と書かれているのはそのためです。
出血よりも嘔吐や下痢がめだつ、が今回の記述情報です。

いずれにしても、最終的にWHOや米国CDCが支援するラボで確定診断を待ちます。

このような地域では、発熱、呼吸器症状、消化器症状じたいは珍しくありません。
家庭や地域で家族や親類が看病しますし、吐物を片付けたりもします。
このような曝露は2次感染の原因となります。

どれくらいの人が発症し重症になっているのか?の分母はまだわかりません。
病院に運び込まれる数を分母とすると致死率は当然高くなります。

エボラについてのstigmaが大きくなると、受診しただけで村で噂となり、家族含めてつらい経験をします(回復しても自宅に帰れない人たちがいます)。


回復している人とそうでない人では何が違うのか。
補液などを受けられるか(医療アクセスがあるのか?)、個体差なのか、まだよくわかっていません。

対策はうまくいっているのか?

これまでは、患者やうたがい例の隔離、医療従事者の厳密なな感染予防策で収束して行くのを待ちました。
しかし、WHOが当初より数ヶ月かかるだろう、といっていたことが現実のものとなり、想像を越えて拡大・持続しています。

現地の保健省、医療者に加え、国境なき医師団やサマリタリアングループが医療支援を行っています。
日本からは赤十字の活動として和歌山日赤の古宮先生が、WHO専門家派遣として一類感染症の研究班で医療者研修を担当している国立国際医療研究センターの加藤先生、豊島病院の足立先生が派遣されています。

先週からシエラレオネの医師について、この週末に現地支援をしている米国人医師らがウイルスに曝露して検査が陽性だったというニュースがながれ、また、現地の病院から看護師がいなくなってしまったという話も報じられています。

活動団体のページ

このような混乱はさらに対策を難しくしています。

このようなときの常として、疑心暗鬼や噂が対策の障害となります。

この病気は外国人が/敵対する◯◯が我々を殺すために持ち込んだのだ、と仮想敵がうまれたりしますし、実際に外国人医療者が襲われたり、街なかでは刃物をもった住民にかこまれたりもしています。

シエラレオネの病院の混乱
病院は警察の警護の中運営されているとのことです。

潜伏期間や重症化率から、他の国にはそう広がらないだろうといわれていましたが、ナイジェリアのラゴスの空港で倒れたビジネスマンがラゴスの大学病院で死亡、エボラウイルス感染が原因だったというニュースは、飛行機でさらに地理的に拡大するのでは?とのリスクを近隣国やフライト数の多い国の再アセスメントを急がせています。

飛行機にのるビジネスマンが感染したとしたらどこでどのように?という要素も加わるからですね。

ナイジェリアのニュース

複数国にまたがる部族や生活圏の人たちは陸路で行き来をしてます。

7/27 リベリア大統領 の説明の記事によると、陸路での入国ポイントででのさらなる制限を行うとあります。


日本は?

流行地への直行便はありませんが、仕事や観光、留学やボランティアででかけている人たちが一定数います。
また、アフリカを市場として経済活動を展開している中国企業が進出していることもあり、直接・間接ルートなども関係者のリスクアセスメント事項として現実味をおびることもあるかもしれません。

じゃあ。どうしたらいいんですか?ですが。

流行地へ行く人には葬式でのご遺体との接触、体調不良者との接触を避ける(ホームステイや医療ボランティアツアーの人は要注意)。

医療機関では渡航歴、接触歴の確認。
疑問があったら早めに専門家に電話相談。

開発途上のワクチンや治療薬が導入の話もでていますが…。
Ongoing Ebola outbreak sparks debate on experimental vaccine testing

最新のニュースや専門家アセスメントを読みたい場合は、ECDCやCIDRAP、ProMedをTwitterやRSSなどでチェックしておくとよいと思います。公的な数字や評価はWHOのサイト。
(メディアは未確定段階の情報も扱うので最終的にはWHOサイトで確認を)
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