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HIV予防の最前線での問題指摘

2015-02-25 | 毎日いんふぇくしょん(編集部)
シアトルで日和見感染症とレトロウイルスの会議が開催されており、「科学」な話はまた英語や日本語でもニュースになるのではないかと思います。

これまでにHIV感染予防でエビデンスとして証明されているものはいくつかあるのですが、日本ではあまり実践的ではないのが課題。

1つめ。母子感染予防。妊婦健診で陽性だったら薬を服用して帝王切開をして、母乳をとめて、、と赤ちゃんへのウイルス曝露を減らすことができ、これにより劇的に母子感染リスクが減ります。

日本でも当然行われますが、そもそもHIV陽性妊婦自体が少ないので、全体の流行への影響はありません。
(日本のHIV症例の95%が男性です)

2つめ。男性の性器の包皮切除。日本では、美容整形外科の広告で、とっくりセーターをかのところまでもちあげて仮性包茎を表現するものがありますが、そこには女性にモテない系脅しが書いてあり、見た目をよくするために切りませんか?アプローチがあります。
切除したほうがいいのかどうか、した場合のメリットやリスクなど医師でも説明がわかれるところですが、いくつかのSTD感染予防につながることはデータとしてわかっており、特にHIVについては、コンドームの購入や持続使用が難しい地域でWHO推奨されるほどに予防効果のデータが揃いました。
(早くに効果が把握されたため途中で臨床試験が中止になりました)

日本ではそこまで一般的ではないですし、そこまで感染拡大もしていないのでインパクトに欠けます。

3つめ。汚染された針と注射器の交換。汚染された道具の共有が問題ですが、日本では個人使用、単回使用できる物品ヘのアクセスができるためあまりインパクトがなさそうだ、ということと、こういった違法薬物のための支援を税金ですることを社会的に容認されないだろうという理由で検討されたことはないだろうと思います。

上記3つはかなりインパクトがありました。このほか、性感染症をさっさと治療しよう(梅毒やクラミジアなど)は、地道に現場で続けられています。
HIV陽性とわかった人が抗ウイルス薬を服用することで周囲への感染力を減らす treatment as preventionも有効性が示されています。

これらの他に取り組まれているのは、伝統的にはコンドーム、抗ウイルス作用のあるジェルなどを膣や肛門に塗る/注入する方法、さらに、まだ感染していない人たちに薬を服用してもらう「予防内服」であります。

予防内服も(それ単独の効果かはわかりませんが)ゲイ対象でも減らせているというデータもニュースになっています。

その中で気になる指摘がありました。

それは、この「予防内服」の効果評価の検証に参加しているカップルの間でおきた「C型肝炎の感染」です。

コンドームを使用しない性交によって、HIV以外の感染症になるリスクがあるわけです。

Sexual Transmission of HCV in Gay Men Should Not Be a PrEP Deterrent, Say Advocates


昨年、石金先生が東京の病院でのデータを発表していました。
Acute Hepatitis C in HIV-1 Infected Japanese Cohort: Single Center Retrospective Cohort Study



過去のブログ記事 ※HCV治療情報は記載の時点よりかなり変わっていますのでご注意を
「HIV陽性MSMの急性C型肝炎治療後のC型肝炎」
「HIVより多いC型肝炎での死亡」



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