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B型肝炎(だけの話じゃないけど)注射器"使い回し"調査

2012-09-26 | 毎日いんふぇくしょん(編集部)
「使い回し」という言葉は(医療では)日常的には聞かないとおもいますが、たらいまわしから想像した言葉ですかね。

医療、グローバルな世界で語るところの「再使用」問題ですね。

注射器など医療器具が今のような基準で使用・消毒・滅菌されていなかった時代、また、まだウイルスが分離・認知されておらず、そのようなウイルスがいることさえわからなかった時代にも、「血液体液由来感染症」が広がっていたことは想像できます。

この9月から国が注射器使いまわし調査をするということで、ニュースになっていました

「全国実態調査」ということですが、どのような手法をとるか、であります。

日本では臨時で予算をつけて「研究班」の仕事にすることが多いのですが、
今回もそのやりかたですね。

記事によりますと、
研究班班長は多田羅浩三・日本公衆衛生協会会長)。地域住民の慢性疾患や生活習慣病、結核などの研究を手掛けてこられた方です。

■9月にアメリカやイギリスに調査担当者を派遣。
■10月に全国の自治体や医療機関に調査票送付。

記事によりますと、状況としては、
予防接種を国が義務としたのが1948年、使いまわしを禁止したのが1988年。この間の40年間に、世界はコモンセンスやプラクティスがどのようになっていたのか?ということと、それは日本にどう伝わり、実際にどのような製品供給、現場での使用状況にあったのか?です。

■当時の予防接種の実施方法や手順の変遷を調べる。
■予防接種をしていた医師に、当時のB型肝炎に関する認識や注射器の消毒方法などを尋ねる。

ということです。

ぜひ、医療機のデバイス会社にもヒアリングにいっていただきたいですね。
いつ頃から、何がスタンダードになったのか。
当時の製品リストや出荷状況を見れば定量的に把握ができます。


しかし。2012年までこのことは整理されないまま、研究もなく、今あらためて調べないといけないのか?ということがまず最初のおどろきでありますが。

医療器具のreuse(single useできなかった時代)の感染の問題は予防接種の注射器や針だけの話ではないですし、

注射器や針を媒介して感染拡大するのはB型肝炎だけではないですし、

B型肝炎は他の医療行為での感染リスクもあれば、日常生活(性行為含め)の中で水平感染もしますし、

予防接種のことだけ調べるのでは、全体像はあきらかにならないわけですよ。

また、地域や世代集積性があるのかなど、血清サーベイを行って、疫学的な検証も必要になります。
すごいお金がかかりますが、日本の肝炎の現状がどうなっているのかもわかりますし、同じ血液検査や医療行為媒介感染を考えるならば、C型肝炎もあわせて調べたほうがお金を書ける意味があるんじゃないかと思うところです。

「予防接種のせいだ」というストーリーで偏った調査にしていくのは、誠実じゃないですし、公衆衛生・科学としてどうかとおもいます。

メディアがこのことに気づくのはいつでしょうね。科学系の記者さんがんばってください。
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