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D型肝炎(HDV)

2010-03-13 | 毎日いんふぇくしょん(編集部)
あまり話題にならないHDVの話。
D型肝炎はHDVがHBVキャリアに重感染、または急性B型肝炎に同時感染した場合におきます。
(HBVがないとHDVは複製できない)

このため、HDV感染はHBV感染と同じ地域的分布をしめしますが、中近東、アフリカ、中南米に多く、中国や東南アジアは少ないことがわかっています。
日本のHBsAg陽性者におけるHDV感染は1~2%未満。

慢性のキャリアになる率は80-90%、共感染症例ではより早く肝硬変になり、肝細胞性肝がんになりやすいといわれています。

B型、D型肝炎ウイルス重感染患者の長期予後とそれに影響を与える因子の解明(外間、琉球大学)では、宮古群島の離島住民を対象に1994年から実施している調査(対象2575名)では、HBVキャリアは9.2%、このうち21.2%がHBVとHDVに重感染。
受診者調査で肝硬変、肝癌への進行に関連していることが判明。

2009年9月にジャーナルにあった論文Hepatitis D outbreak among children in a hepatitis B hyper-endemic settlement in Greenland(Journal of Viral Hepatitis Volume 17 Issue 3, Pages 162 - 170)はデンマークの研究者によるものです。

グリーンランドではB型肝炎は広く感染が広がっており、一般人口の5-10%がHBs抗原陽性。高い有病率にも関わらず、急性・慢性のB型肝炎、肝硬変・原発の肝がんの発生頻度は低くその原因は不明。こどもへのHBVワクチンは未導入。

このような状況にあるグリーンランドの定住者の子どもにおいてD型肝炎のアウトブレイクが報告された。
113名の居住者のうち、27%がHBsAg陽性(慢性キャリア)で、83%はHBcAb陽性。
HBsAg陽性のうちの46%は20歳以下。一年後のフォローアップ検査ではHBsAg陽性の68%はHDV-IgG陽性。
2006年にHBsAg陽性の5人の子どもでは2006年から2007年の間にHDVのセロコンバージョンがみられ、HBVとHDVの重複感染が判明。HDV-IgG陽性のこどもでは顕著に肝酵素値が上昇。
HBVワクチンをこどものワクチンプログラムに含めるべきである、、、という結論でした。

HDVについて
Hepatitis D(Medscape, Jan 3, 2010)
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