感染症診療の原則

研修医&指導医、感染症loveコメディカルのための感染症情報交差点
(リンクはご自由にどうぞ)

集団結核:複数の医療機関が見落とし

2010-03-08 | 毎日いんふぇくしょん(編集部)
気管支炎・・と見落とされていたとニュースにあります。
中学2年の男子生徒に結核を疑うためには・・・。

周囲で流行しているよ、というような感染症情報は貴重なのですが、2009年4月に1人発症したときの情報があれば「念のため」検査ができたのではないかと考えてみました。

都は「レントゲンを撮れば結核だと分かるのに」とのことですが、100%とかというとそうともいえない要素もあります。

しかし(記事には情報がなさすぎますが)、「6ヶ月近く続く気管支炎」はへンですし、発熱や体重減少など他の症状はなかったのか?という疑問はわきますね。

家庭、学校、塾、ならいごとなどで接触者健診です。保健所の皆さんもご苦労様です。

--------------------------------------------------------------
私立中高一貫校で35人が結核に集団感染 複数の医療機関が見逃す(3月8日 MSN産経)

東京都は私立中高一貫校で、生徒と教員計35人が結核に集団感染したと発表。
感染者の生徒の1人がせきなどの症状のため複数の医療機関を受診したにもかかわらず、気管支炎などと診断され登校を続けたことが原因。

都によると、昨年4月に結核と診断され入院した中学2年の生徒と1年時に同じクラスだった男子生徒が同年6月ごろからせきや発熱の症状を訴え、計4カ所の医療機関を受診。ところが、いずれも結核と診断されず登校を継続し、同年11月にようやく結核と判明した。

男子生徒との接触者の健康診断を実施したところ、この2人を含む同校の中高生30人と教員5人の計35人の感染が確認された。うち9人が発病しており、とくに男子生徒は症状が重く3月8日現在も入院中。

都は「誤診した医療機関は猛省してほしい。レントゲンを撮れば結核だと分かるのに、いずれも問診だけで済ませていた」としている。
http://sankei.jp.msn.com/life/body/100308/bdy1003081640000-n1.htm
--------------------------------------------------------------

東京都のアナウンス(2010年3月8日)
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/hodo/presskekkaku1003008/index.html


過去の事例
学習塾における集団結核(東京)
http://idsc.nih.go.jp/iasr/27/320/dj3203.html
高知市中学における集団結核
http://www.kenkou.med.pref.kochi.lg.jp/tiikihoken/tiken/tiken_h1124.PDF
著しい排菌を示した喉頭結核(女子医大)
http://ir.twmu.ac.jp/dspace/handle/10470/2833


コメント (6)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 患者さんが結婚しました・・ | トップ | 「What is 重症?」 »
最新の画像もっと見る

6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (さいたま赤十字病院呼吸器内科ブログ管理人)
2010-03-08 23:47:11
いつも勉強させていただいております。
今回の掲載記事内容に対する私なりの意見をブログに掲載させていっただきました。
「なぜ胸部レントゲン撮影されなかったのか・・・」の理由の一つはこのような考え方なのかな?と思いましたが。。。
返信する
感染の診断方法 (ひかる)
2010-03-10 01:24:04
多分、QFT検査で接触者の感染の有無を調べていると思うのですが、この検査方法だと、以前のツ反とX線による診断と比べて、感染者が多くなってしまうように思えます。

結核菌が体内に入って、免疫系が応答している状態を「感染」と言って良いのか、いささか疑問に感じるところです。

一度、結核菌に感染すれば、生涯、感染が持続し、体内から結核菌が排除されることはないと考えて良いのでしょうか。
返信する
なるほど (編集部)
2010-03-11 08:08:17
さいたま赤十字病院呼吸器内科ブログ管理人さま

読ませていただきました。なるほど・・です。
昔、患者が本当にエイズだったら(自分が)不安になるので絶対にHIV検査をしない、というドクターがたくさんいました(今もいるかもしれませんが)。
画像やデータはもちろん大切ですが、ティアニー先生の症例検討会のように、ひたすらヒストリーとフィジカルで絞り込んでいくような訓練と、先生がご提案されているような複数の目でみるというような見逃し防止の工夫は可能ですよね。
今回の東京都のコメントをみて、現場の叱咤激励でだけでなく、そのような研修や支援をする場をつくってくれないかなとおもっているところです。
保健所で働くことになった知り合いの外科系・精神科系ドクターからも、業務上必要が生じたので読映の勉強会とかないですか?と問い合わせがよくきます。


ひかるさま

重要なご指摘ありがとうございます。
行政のする調査と臨床ではQFTの評価にちがいがあります。ご指摘のような傾向はあるかもしれませんね。調査では可能性例をどこまでとるかはかなり重要ですが、病院では医療上の介入をする人としない人の区別でしかありません。

厳密な言葉の定義は結核菌の基礎研究者に確認していただくほうがよいとおもいます。

臨床で重視しているのは、感染している(かもしれない)人が医療介入によって発症するリスクが常にあるということです。病院では治療済みではない人は常にそのように考える、ということを教えています。
返信する
Unknown (ぴょん)
2010-03-13 00:12:41
いつも勉強させていただいております。

自己防衛として、なるべく「胸部レントゲン」を撮影しないというスタンスの医療機関は確かにあるのかもしれません。HIV合併結核で、レントゲンでは明らかな所見はないのに、喀痰塗抹陽性とか、微小な病変の気管支結核とか、難しい症例のお話も聞いたことがあるので、そういう気持ちもわかります。

一方、数年前まで、比較的大きな自治体の感染症対策をしておりました一個人としての感想ですが、都市部(罹患率の高い地域)であっても、長期の呼吸器症状がある人に、結核を疑わなかったという医療機関は多かったです。

「今でもあるんですね~」とか、「結核の患者が、まさか、自分のところに患者として来院するとは思っていなかった」、「診ちゃったけど、僕の健診は保健所がやってくれるの?」など、反応は様々でした。

出身大学の呼吸器内科の講義では、私の前年までは結核がカリキュラムに含まれておらず、私の学年から復活しましたので、きちんと勉強する機会がない医師は、まだまだ多いと思います。

医療機関に猛省を促すよりも、開業医の先生を対象としたリフレッシュセミナーなどで、地道に啓発することが必要ではないかと思っています。
返信する
リアルですね・・・ (編集部)
2010-03-16 08:39:50
予想外に医学部生・医師が学ぶ機会は少ないんですね。

『今でもあるんですか』は確かによくききますね。結核や梅毒でよくいわれます。

発生動向調査のフィードバックも力不足を感じます。

『まさかうちのところに』はHIVでよくききます。 

結核もHIVも「うちにはこない」病院では診断が遅れたり、院内感染の問題が生じやすいので、引き続き取り組まねば・・の課題です。

開業医さん向けリフレッシュセミナー、大切ですね。
返信する
鍛えている自衛官まで入院し、優秀な防衛医大まで見落としはないと思うんですけど・・・ (環境ホルモン悪化W)
2010-04-12 02:06:19
結核集団感染か、自衛隊で10人発症‎
鍛えている自衛官まで入院し、優秀な防衛医大まで見落としはないと思うんですけど・・・

どこかのサイトで質問がありましたけど
やっぱり垂れ流し中国やインドの工業化や自然災害による 重金属黄砂の影響で今後ウィルスも益々耐性・強力になっていくんではないでしょうか
返信する

毎日いんふぇくしょん(編集部)」カテゴリの最新記事