感染症診療の原則

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オカルトHBV

2009-07-22 | 毎日いんふぇくしょん(編集部)
昨日は肝炎の新しいガイドラインのお話を聞く機会がありました。

一般に、B 型肝炎のスクリーニング検査にはHBs 抗原検査が実施されていますが、HBs 抗原陰性なのに血中や組織中にHBV-DNA が認められる「いわゆるオカルトHBV」が存在します。
その人の受ける医療によっては生命のリスクがあるということが新聞でも報道されました。厚生労働省プレス発表↓
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2006/12/h1221-5.html

検査結果でみると
HBs抗原(-)、 HBs抗体(-)、 HBc抗原(-)、 HBc抗体(+)、 HBV-DNA(+)
ということになります。

“Occult hepatitis B virus (HBV) is defined as low-level HBV DNA without hepatitis B surface antigen (HBsAg)”

ガイドラインは雑誌『肝臓』に掲載され、肝臓学会のWEBで公開されています。
『免疫抑制で発症するB型肝炎ガイドライン』2009年3月
http://www.jsh.or.jp/medical/bguideline.html

免疫抑制剤を使用する人、人工透析、ステロイド使用などがリスクになり、また免疫に問題のある「HIV感染症」ポピュレーションでのプレバレンス調査では、後ろ向きにデータを見直したところそれまでHBV+とされていなかった人がオカルトHBV感染であることが把握されています。
http://journals.lww.com/jaids/pages/articleviewer.aspx?year=2007&issue=03010&article=00010&type=fulltext

HIV、HBVの治療のマネジメントは専門家でもさらに専門家に相談を必要とすることが多く、少なくともどちらか陽性だったらもう片方も必ず検査をして確認する必要があります。

HIVを診ているドクターはHBVや他のSTDなど合併感染をチェックしていますが、
肝炎を診ているドクターがHIVの検査をあまりしていないことが学会等で話題になっています。
(そしてどちらの専門家も問題だ!という割には予防接種のユニバーサル化のことはあまりいいません。ナンデダロウ)

肝炎については、医療関係者でもほとんどわかっていない、あるいは昔の知識のままでとまっているという人もいれば、専門家でも自分の領域の話(がん)は得意だが、その他の予防(ワクチン)とか性感染には興味なし、、(その逆もあり)という話をよくききます。

臨床微生物迅速診断研究会のホームページに質問箱というのがあります。一般の人から受けそうな質問であるのでぜひ一度ごらんください。

『HBc抗体陽性なので過去にB型肝炎ウイルスに感染していたと考えられる。現在, 核酸増幅検査が「陰性」で, B型肝炎ウイルスが検出されないので 健康上問題となることはほとんどないが血液は輸血には使えない』

このような連絡を受けた方は「自分は治っているのかいないのか?」と不安になります。
http://www.jarmam.gr.jp/situmon3/kenketsu-hbc.html

献血ではHIVや肝炎はNAT検査でスクリーニングをしてその安全性を確保するための仕組みがありますが、それでも輸血後感染がおきた事例が報告されています。
「Occult HBV carrier による感染事例から得られた知見について」
http://www.yuketsu.gr.jp/gakkaishi/52-5/052050599.pdf

検査の世界も日々新しい技術や情報がでてきています。
検査で疑問なことがあったり、定期的に新しい話題を知るために検査技師さんに教えてもらうようにするといいですよ。初期研修のうちに他職種の人といいコミュニケーションができるようになるといいですね!
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