感染症診療の原則

研修医&指導医、感染症loveコメディカルのための感染症情報交差点
(リンクはご自由にどうぞ)

国産ワクチンのメリット(誰のメリット?)

2010-11-12 | 毎日いんふぇくしょん(編集部)
先日、0歳のお子さんが生まれた若いドクターとお話をする機会がありました。
公的な病院にお勤めの感染症が専門の先生です。
ご自分の病院には不活化ワクチンがないので、民間のクリニックにでかけて不活化ポリオワクチンを接種したそうです。

都内はいくつも接種可能なところがあるのですが、それはやはりもともと人口が多く、希望者も一定数いて、医師の個人輸入における在庫管理のリスクなどがある程度管理可能だからではないかと思います。

地方で対応されている先生のご苦労は大きいとおもいます。
とても感謝しています。

歴史を振り返ってみますと、、

1950年~世界的なポリオの流行(日本でも年間3000名規模)
1955年 米国で不活化ポリオワクチン認可
1959年 日本は緊急輸入開始
1961年 日本の国産の不活化ワクチン導入
1961年7月 生ポリオワクチン緊急輸入 
1964年 日本の国産生ポリオワクチン
2000年 米国では生ワクチン使用中止。すべて不活化ポリオワクチンへ切り替え。
 
2010年 現在、日本は先進国で唯一生のポリオワクチンを定期接種している国。

いま、世界が使っている不活化ポリオワクチンは昔のものよりも、技術が発達したおかげでより安全なものになっており、また、世界各国で使用実績があるために安全性や副作用のデータのサンプル数も大きくなっています。

緊急輸入は「国」が必要と思ってやったことです。輸入ワクチンを使うかどうかは、誰かが責任をもって判断しているわけです。輸入しないというのも誰かの判断です。

ポリオの会が署名を大臣あてに渡してもなかなか不活化への切り替えができないのは、国産ワクチンができるまで待つ、ということです。

国産はよいとおもいますが、なぜ国産ではないといけないのか?の説明は難しい状況です。

国産を使うとしても、それが完成して十分な生産量を補償して出回るようになるまでは緊急輸入してもいいんじゃないか?というのが署名をしている人たちの意見です。

いっぽう、まだデータもあまりない、新しいHPVワクチンは輸入して、しかも公費にしようという動きがあります。(国産のHPVワクチンも開発中なのですが)

生まれる赤ちゃんの数はだいたい把握されており、輸入する際の数の予測も、新型インフルワクチンほどに曖昧ではありませんし、コストもそれほど高くないワクチンです。

「すこしくらい日本の赤ちゃんがワクチンでポリオを発症してもしかたないんじゃね?」という2010年の判断をしている人は誰なんでしょうね。
コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 1/27(木) リスクコミュニ... | トップ | 新刊 『こうしてニュースは... »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
接種する医師の責任 ()
2010-11-14 10:51:42
》「すこしくらい日本の赤ちゃんがワクチンでポリオを発症してもしかたないんじゃね?」という2010年の判断をしている人は誰なんでしょうね。

一つには、生ワクチンの接種をし続けている医師たちでしょう。

その昔、全国の開業医が保険医を返上したことがありましたが、ワクチンを接種する医師が「もう、ポリオ生ワクチンは接種しません」と揃って言えば、明日にでも、不活化ワクチンに変わることでしょう。
返信する
コメントありがとうございます (編集部)
2010-11-18 08:50:49
日本医師会の署名キャンペーンじたいは生ワクが前提のように受け取れるので書名はしかねる、という意見がありました。
返信する

毎日いんふぇくしょん(編集部)」カテゴリの最新記事