感染症診療の原則

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今後の日本の予防接種につながる話

2007-06-17 | 毎日いんふぇくしょん(編集部)
麻疹以外のワクチンの問題も話題になっています。今回は全体の見直しのきっかけになるのかもしれません。

先日の予防接種会議では麻疹対策の提言が国立感染症研究所から出ていましたが、より広い取り組みについても提案がありました(下記に提案8つをペーストしました)。(7)です。
米国CDCのなかにあるワクチン専門機関をお手本にした部門をつくろう、というものです。

先日、行政の方にお話をうかがったところ、医学部でワクチンについてちゃんと教育できるところは少なく、これまでも小児科医をのぞくと感染症とワクチンをセットで語れる医師は少なかった・・・とのことです。
いま感染症を勉強している人たちがワクチンも強い人!になると病院や地域で相談先として期待されますね。

(参考資料 第13回予防接種に関する検討会で配布された資料から)

提言(1) アウトブレイク対応

1例でも発生したらすぐ対応をする。積極的に接触者調査を行う。
感受性者対策としての優先順位は、
 ①未接種・未罹患患者へのワクチン接種(重症麻疹予防)
 ②接種歴不明者へのワクチン接種
 ③1回のみ接種への追加接種(primary&secondary vaccine failure対策)

※編集部注
今回ワクチン在庫不足の中で(先進国として恥ずかしいことに)「トリアージ」をしなくてはならなくなりましたが、その優先順位は①でした。在庫不足が多くの人の不安につながりました。


提言(2)中・長期対策として定期接種

MR2回接種法(平成18年4月より実施)による1期Ⅱ期における高い接種率の維持
(目標は95%以上の免疫保有;接種率95%以上)


提言(3)定期接種(1期・2期)外年齢層の感受性者対策(キャッチアップキャンペーン)

現在接種を受けていない、あるいは2回目の接種機会がない小中高校生などに対し、2回目接種(及び接種漏れ者への接種)機械の設定。

たとえば、中1・高3などでの2回目接種の実施。5年計画で行えば中高年齢及び22-23歳までの感受性者がなくなる。

提言(4)学校でのアウトブレイク防止

小中高大、就職時の健診などを利用した感受性者対策(2回目接種および接種漏れ者への接種機会)の実施
医療・教育関係など、小児に接する機会の多い教育機関(医学・看護・教育など)および職業従事者では別格に厳しい基準を設け、強く必要とする。

提言(5)

小児科などの初診時、海外渡航の際などに、予防接種歴の確認。未接種者に接種をよびかける。
20代感受性者への接種よびかけ。だだし妊娠可能年齢に対する十分な注意。

提言(6)
 
Eliminationを視点においた国としての国際的宣言。
ポリオ根絶委員会のように麻疹排除委員会の設置(Pandemic対策のひとつとして)

サベイランスの強化
 全数報告制の導入
 実験室診断の導入(IgM抗体、ウイルス分離、遺伝子診断)
 感染症流行予測調査等による血清疫学調査によるモニター継続、強化

これに見合うワクチン量・試薬類の確保

提言(7)

国、研究機関、保健行政実施機関、ワクチンメーカー、メディア、一般国民などを含んだ、ワクチンに関する中長期的プランに関する助言、提案機関の設置(米国ACIPが手本となる)

麻疹対策と風疹対策(先天性風疹症候群対策)はほぼ同様の戦略が可能であるため、多くの先進諸国同様、麻疹対策も同時に行う。
 MRワクチンの使用(多くの先進国はMMRを使用)

予防接種には、極めてまれであるが健康被害事故が起こりうる。
 これに対して、明らかに因果関係が否定できるものは除き、法的責任問題とは別 個に、 疑わしき事例、因果関係が考えられる事例へ救済を手厚く行う(不測の 事態、予見可能 な事態に対する無過失の保証、救済措置)

提言(8)

Elimination委員会等において、定期的評価を行う。
2009年に中間評価を行う。
  目標;確定麻疹全数報告 50例以下
  (現在の1/10以下、人口100万当たり1以下)
  確認;2012年までに国内年間麻疹発生例ゼロ達成の可能性
  輸入症例からの流行拡大無し

(写真は厚生労働省前の日比谷公園)
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