徴兵制への一里塚・石破発言に見る

2013-08-06 09:59:22 | 日記

徴兵制への一里塚・石破発言に見る

子どもが次のような質問をした。「徴兵制になるの」。「僕は兵隊にはなりたくない。戦争には行きたくない」と。この質問は何も子どもだけではない。大方の国民は、同様な疑念を持っているのではないだろうか。

麻生副総理の、憲法改正の進め方をめぐる「ナチス発言」が問題となっている。怖い発言であるが、同時に、元防衛庁長官、そして現自民党幹事長の石破発言も見過ごすわけにはいかない。麻生発言は国際的にも批判、糾弾されたが、次に述べる石破発言は問題とはならない。それだけに、その怖さは麻生発言以上のものがある。

自民党の改正草案の第9条をめぐっては、世の討論は「国防軍」の創設に集中している。それは大事なことである。しかし、厳密に言えば、第9条にわざわざ「平和主義」を挿入した裏の意図も討論されなければならないし、2号から5号までの新設についても同様である。

とりわけ今回取り上げるのは、第5号に「国防軍に審判所を置く」ことを明記している点である。いわゆる「軍事裁判」あるいは「軍法裁判」の設置である。

この設置に関する、石破幹事長の熱心度は並みのものではない。

それが次の報告である。「防衛相の経験もある同党の石破幹事長は4月に出演したテレビ番組で、この審判所設置に強い意気込みを見せている。『死刑・懲役300年』などの不穏な言葉が飛び出してきた」。(7月17日東京新聞)

以下が、その発言である。「これは国家の独立を守るために出動せよと言われた時に、行くと死ぬかもしれないし、行きたくないと思う人がいないという保障はどこにも無い。だから国防軍になったときはそれに従えと。それに従わなければ、その国における最高刑が、死刑とあるなら死刑。無期懲役なら無期懲役。懲役300年なら300年。そんな目に遭うなら命令に従うだろう。こうした重罰を科すために審判所は必要だ」と。さらに、これは「公開の法廷ではない」とわざわざ付け加えている。

「国の独立を守る」ための出動命令。その命令に服させるためには刑罰が必要。これが石破発言であり、自民党草案「第9条第二項第5号の(軍事裁判)の設置」である。

その法廷に立つ者は「志願(就職)した国防軍隊員」である。隣の子どもが自衛隊員になった(就職した)。そして国防軍隊員に。「他国からの侵略に対し、国を守るということで出動命令」。その命令には「軍事裁判」が存在する。それは貴方の子どもが選んだこと、私とは関係がない。そのようなことが通じるだろうか。「公の秩序を守る責任は全国民が有する」とする憲法の精神が、草案のいたるところに存在している。「国の防衛という公の秩序を守る」責任は全国民が等しく負うものである。そこには「個」を重んじる基本的人権は存在しないと。

その最大のものが、第10章・最高法規・第97条の「基本的人権」の条文である。改憲草案は、その条文をばっさりと切り落とし、削除していることを見ても明らかであろう。             「国民皆兵制」(徴兵制)を危惧するのは私だけであろうか。

冒頭に述べた。「麻生発言に国際的な批判が出ても、石破発言は問題にならない」。そうだろう。軍隊を持つ国にあっては「命令服従の規律」は絶対である。銃殺刑もある。日本も「戦争のできる組織(軍隊)」への一歩を大きく踏みだそうとしている。その一つの布石が、石破発言であることをきちんととらえたいと思う。