トランプ政権の本音丸出し「気候変動・発信するな、米政権政府機構に通達」
「TPP資料、閲覧できず・永久離脱」(ワシントン時事1・23)の見出しであり、それが次の内容である。
トランプ米政権は通商代表部のホームページにアップされている「環太平洋連携協定(TPP)」に関する資料の開示を停止した。トランプ大統領が23日に命じた「TPPからの永久離脱」をもって、協定に関する資料を「国民の目に触れない闇の戸棚に封じ込めた」のである。スパイサー大統領報道官は24日の記者会見で「政権交代があれば政策を見直されること、驚くことではない」と主張している。もちろん政策の違いを争って当選をしたトランプ大統領である。そしてTPPは争点の一つであった。しかし、資料までも開示させないということをどのように受け止めたらよいのだろうか。
加えて、トランプ大統領が消極的とされる地球温暖化対策、性的少数者の権利保護に関する記載などが、ホワイトハウスや環境保護局のホームページから消えたと報じられている。
これに先立つこと1月20日に、トランプ米大統領は「オバマ政権が地球温暖化対策として導入した行動計画など環境問題をめぐる構想や規制を撤廃すると発表した。いわゆるエネルギーの国内産業育成を重視する観点から国内産の原油、天然ガス、石炭の使用を増やすことに力点を置き、環境保護や温暖化対策を優先するオバマ前政権の政策を切り捨てる方針を明確にした」
「複数の関係筋によると、トランプ米新政権は先週以来、環境問題に関わる複数の省や局に情報発信を控えるよう指示している。地球温暖化に懐疑的で環境規制の削減を目指す新政権が、政権の主張に沿わない意見や科学研究を封じ込める手段に出た様子だ」とワシントン/シカゴロイター通信は報じている。(1月24日)
そして「気候変動・発信するな、米政権政府機構に通達」というトランプ大統領の政治方針を改めて毎日新聞が取り上げた。(1月26日)
そこで思い出す苦々しい記憶がある。第二次大戦における「大本営発表」である。ウソの日本軍の戦果を一方的に報じ、国民の目を塞ぎ、東京大空襲に非戦闘員の国民を巻き込み、広島、長崎の原発投下にまで引きずり込んだ為政者の歴史がある。このように歴史は、時の為政者の手によって隠され、消され、そして「為政者にとって都合の良い」ものに書き換えられる。
トランプ大統領は、自分が押し進めようとするエネルギー政策の変更が、大気汚染弊害と健康被害を起こしかねないことを覆い隠さなければならない。そのためには気候変動の発信を抑えなければならないということである。まず政府機関から、やがては民間機関にまで手を伸ばしてくるだろう。
そして、思い出すもう一つの事実である。太平洋戦争開始の真珠湾攻撃が行われた昭和16年12月8日の午前8時、中央気象台の藤原咲平台長は、陸軍大臣と海軍大臣から「気象報道管制実施」の命令を受けている。戦争遂行のための機密のひとつとして「天気予報」は完全に隠されてしまった。気象情報は戦争遂行を有利にするために自国の気象情報を隠し、相手国の気象情報の入手を試みる。
気象情報によって得られる台風情報の予測を失った国民は、東南海地震(44年12月)や「三河地震」(45年1月)という大地震に見舞われる。しかし、この事実が気象管制の下で秘密にされた。そして地震や津波で犠牲になった学童疎開の子どもたちの親にすら「軍事機密」を理由に知らされなかった事実を忘れてはならない。
この戦時中の気象管制が解除されたのは1945年(昭和20年)8月22日、すなわち敗戦の日の一週間後のことである。この日、ラジオの天気予報が再開され多くの人が天気予報を平和のシンボルと感じとったと記録されている。
1月24日、強い寒気に見舞われた欧州各地では、風がほとんどなく暖房用に石炭や木材が多く使用されたことによるスモッグが発生した。そしてイングランド地方全土が「深刻」な状態にあるとして注意を呼び掛けたという報道を見ることになる。
世界各地の気象情報が自由に入手できるというのはまさに平和の証である。