お喋りの場の国会を変えた委員会質疑
民主党、長妻代表代行の質疑から始まった、1月29日の衆議院予算委員会は久しぶりに見ごたえがあった。
質問は、格差是正を柱にアベノミクスの経済政策の批判から始まったが、中でも国会図書館の職員を招聘し、このほど発表された経済協力開発機構(OECD、加盟=米欧日など34カ国)の経済報告書を紹介させた質疑戦法は、確かに功を奏したと言える。招聘された図書館員は、その報告の概要を読み上げていたが、後ほどネットで検索してみても図書館員の紹介と合致していた。
「成長の恩恵が自動的に社会にトリクルダウン(したたり落ちる)することはない」と指摘し、各国政府に対し格差是正の政策に力を入れるよう呼びかけています。さらに、OECD加盟国で、富裕層と貧困層の所得格差が過去30年間最大に広がり、上位10%(人口比)の富裕層の所得が下位10%の貧困層の9・5倍に達していると分析しています。そして、「所得格差が拡大すると、経済成長は低下する」とし、「格差問題に取り組めば、社会を公平化し、経済を強固にすることができる」と提言しています。各国政府に対しては、「どうすれば下位40%の所得層がうまくやっていけるようになるかに関心を持つ必要がある」と呼びかけ、教育や医療などの公共サービスを充実させるよう求めています。日本に対しても、格差の拡大が成長を押し下げていると指摘しました。英紙ガーディアン9日付は「OECD報告書がトリクルダウン経済を拒絶」と報じました。
この間安倍首相は、ありとあらゆる場で“大企業が利益をあげれば賃金が上がり、雇用が増える”と主張してきた。また国会質疑においても頑なに「滴り落ちる論」を振りまいている。こうした「トリクルダウン」の考え方は国際的にも通用しないということを、長妻質問は国会図書館職員の「在庫資料である報告書の紹介」という形で攻めたのである。
さらに追及を緩めなかった。内閣府の調査によっても「日本の子どもたちの6人に1人が貧困の状態にある」という事実を突き付け、3人に1人が「就学援助」を受けていること、「子どもの教育貧困」が拡大していること、生活保護者の子ども4人に1人が、保護世帯から抜けきれないでいる実態を指摘していた。これらを前記のOECD報告と結び付けたことは、聞く者にとって説得を深めることになったと考える。
1月16日のブログで「国会をお喋りの場としないでほしい」と私は書いた。よく見られる質問に対する答弁である。その答弁に対し「答弁者は質問の核心に触れていない」と質問者は詰め寄る。そして再答弁においても同じことを読み上げる。このやり取りにはうんざりする。答弁者の資質もさることながら、質問のあり方にも工夫が必要ではないだろうかと感じていた。その意味では今般の民主党議員による関連質問も含めた連携ぶりには拍手を送りたい。
重ねて述べれば、図書館職員が報告書を読み上げている時の安倍首相の表情は、記憶しておくに値するものであったことも触れておきたい。