「差し出す・受け取る『あ・うん』の関係」か。「満額回答」の言葉に悩む・・・・・
自民党の石原伸晃氏が環境相の時代に、原発事故で出た汚染土の中間貯蔵施設建設をめぐり「最後は金目でしょ」との発言に対し、当時の佐藤福島県知事は「「住民の古里への思いを踏みにじる発言。原発災害の厳しい状況を分かっているのか。信じられない」の批判をした。石原大臣の地元住民に対する謝罪の場面を思い出している。
また民主党政権時代、町民が避難をして無人となった町を「死の街」と述べ辞任に追い込まれた鉢呂経産大臣もいる。実は、これは原発推進のフジテレビの記者に嵌められたことが後になってわかったのだが。いずれにしても、被害を受けた町民の想いは、その立場でなければわからないものであることは確かであろう。
と言いつつも、ここにきて首を傾げたくなるが多いことにも気付く。実は双葉郡富岡町に建設を予定している「最終処分場」をめぐる町と国との協議である。この施設は、既存の民間管理型産業廃棄物の最終処分場「フクシマエコテッククリーンセンター」である。前大臣の望月環境相は、同センターを「処分事業に対する、より一層の安心の確保の観点から国有化とする」と伝え、放射性セシウム濃度が1キログラム当たり10万ベクレル以下の指定廃棄物の埋設の受け入れをあらためて要請した。さらにその実現にあたり、国は地域振興策として両町に、自由度の高い交付金を措置する方針も伝えた。これに対し施設が存在する富岡町の宮本皓一町長は「何よりも安全安心を確保するため、国の責任の明確化を求めてきた。一定の評価をしたい」と述べ、地域振興策の具体像の提示などを求めた。また、関連施設の設置などが計画されている楢葉町の松本幸英町長は「国自らが責任を持って安全安心の確保に取り組む姿勢が示されたことを重く受け止める。しっかり説明責任を果たしてほしい」と要望した。同町にはエコテックセンターへの搬入路がある。さらに内堀福島県知事も「地元の意向を踏まえた対応だ。今後内容を精査し、両町と協議を進めたい」と報じられている。
加えて新環境相の丸川大臣は16日、雨水浸透対策の強化など安全対策を示し、地域振興策として両町の復興拠点整備費用などを国の交付金で賄う方針を重ねて示したことは、直近の報道である。
この最終処分構想が生じて以降、町長はじめ町議会は建設に難色を示してきた。しかし、この変節は何を意味するのだろうか。そして「評価」をしたいとした知事の意向は11月24日の定例記者会見で明らかになった。「県が両県に対し計100億円の交付金を拠出するという発表であり、両町との協議を経て施設受け入れを正式決定する」という表明である。さらに県が、交付金措置を決めたことで富岡町の民間管理型処分場をめぐる議論は大きく前進する見通しとなった。宮本皓一富岡町長は、町が求める国と県の地域振興策への支援については「満額回答だ」と評価した一方で、受け入れに関しては「県と楢葉町と協議し熟慮の上決断する」と述べた。町議会は24日、議論は尽くされたとして町長の判断を尊重することを決めた。
いわゆる「中間貯蔵施設」と異なり県外に持ち出すとする「30年法」は適用しない。該当する個人地権者もいない。そして廃棄物のフレキシプル・コンテナは幾重に重ねられ、地下深く埋設され、眠り続ける「最終処分場」である。
科学的にも、地質学的にもどれだけの説明がなされたのか、そして住民の納得は得られたのか。そして「満額回答」と述べる地域振興策とはどういうものなのか。それが両町の住民が歓迎するものなのか。当該地域住民ではない私ではあるが今までそのことの説明があった記憶はない。
「金目」。これは時の為政者がよく使う「魔物の手」である。沖縄辺野古周辺の3地区への「交付金という名のバラマキ」にしてもそうである。「差し出す者がいて、それを受け取る者がいる『あ・うん』の関係」と見ることは非難の受けることなるのだろうか。そして「満額回答」という言葉まで飛び出した。首を傾げたくなるとはそのことである。