ハローワークで働く専門職員・実は「1年契約の非正規労働者」
ブラックジョークでは済まされない
【平日の日中、仕事を探す人々が真剣な表情で求人票を眺めている。東京都墨田区のハローワーク相談員、平智裕さん(46)は求職者にさまざまなアドバイスを与える。キャリアコンサルタントの資格も持つ。ある日、上場企業をリストラされたという中年男性が「お前なんかに俺の気持ちが分かるかっ」と声を荒らげた。「分かりますよ。私も1年契約の非正規ですから」。相手は驚き、怒気はしぼんでいった。2012年1月から非正規職員として働いている。雇用期間は最長1年で、毎年3月末に契約を更新し、3度目の契約満了時に雇い止めになる。働き続けるにはハローワークが出す求人に応募し、採用試験を受け直さなければならない。平野さんの月給は手取り約22万円で、ボーナスはない。年収は同じ相談員として働く正規職員の半分ほどとみられる。そして厚生労働省によると、15年度にハローワークで働く職員のうち非正規雇用は6割に上ると報じている】(6月11日の毎日新聞)
国内の労働者に占める非正規雇用の割合が増え続けている。総務省によると1989年は労働者4269万人に対し非正規817万人で19%だったが、昨年は5284万人に対し1980万人で37%に増え続けている。そして非正規の賃金は平均で正規の56・6%に抑えられている。安倍首相は、国会で、記者会見で、そして街頭でいくら叫んでもこの事実は消すことができない。それどころか今後もこの傾向は拡大するだろう。
縁があって、国内有数の電機企業の一事業所の実態を聞くことができた。国内十数カ所に存在する一つの工場である。就労者は400余名、そのうち組合員は200名に満たない。非組合員(管理者)を含めても同一事業所で働くのは非正規の労働者(非組合員)が多いことになる。その事実を知って「ではその事業所の使用者側と労働組合側が結ぶ「時間外・休日労働の労使協定」(36協定)はどうなっているのだろうかいうことが頭をかすめた。久しぶりに労基法を開いて見る。
労働基準法第36条(時間外及び休日の労働)抜粋「 使用者は、当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による」となっている。とは言え当然協定はしているだろう。過半数に満たずとも労働組合の代表が締結の責任を負っていることになる。しかし、そのような状態は異常であるとの認識はすべきと思うし、「本採用化」に向けた取り組みは緊急な課題であることは間違いのない。そのことに対する、当該労働組合の方針を聞く時間は無かったことが残念であった。
さて先に進みたい。職業安定所(ハローワーク)で就労を求める皆さんの相談と援助を差し伸べる専門職員が、実は非正規労働者であり、1年契約の労働者であるということはどうしたことであろう。サービス的、非生産的な業務であるから、さして公的責任を持つ必要がないとでも言うのだろうか。このような表現は非難されるかもしれないが「お茶出し、プリント印刷」などの業務ではない。まさに「必死に就労を求める者」に対応する最先端の専門職である。その皆さんが1年契約の非正規労働者であったこと、しかもその存在は職場の6割であるということ。これを取ってみても、どこに「アベノミクス」の成果があるというのだろうか。
今日も、どこかの町の街頭で手を振り上げ「滴り落ちる恩恵の雫は全国津々浦々・アベノミクスのエンジンを全開発進」と叫んでいる安倍首相。そしてその側近弁士に怒りを感じるのは私だけであろうか。
決着までにはまだ28日の時間がある。この一例をみても与党自・公に過半数を与えてはならないことを痛感する。こちらも「エンジン全開」で身近な一人ひとりに語り続けたいものである。
同時に、安倍首相にも問いたい。「ハローワークは、そして福島原発の下請け・孫請けの賃金は」と。
今日も、どこかで「アベノシズク」を叫んでいるかと思うと怒りを込みあげます。ありがとうございました。