「テロ等準備罪」・知らない、わからない、理解ができない
「三ない」の法律は通すべきではない
「二人以上で具体的な犯罪について話し合いを行い、合意があった場合の「合意」に対し「共謀罪」が科せられる。しかしこの法案は過去3回にわたり廃案となった歴史がある。
そして3年後の東京オリンピック・パラリンピックを前にして、テロ行為を防ぐとの命題を掲げ「テロ等準備罪」と改めて提案されてきた。これに対し、処罰の捜査に普通に生活をしている市民が巻き込まれる危険性がある。または監視社会の中で国民の意識が萎縮する。あるいはかつての「治安維持法」に見られた弾圧の危惧が生まれるということが語られている。そのことは日常的に報じられるニュースを通しても知るところである。だがそのことを見抜く知識を持っているかとなれば、「理解しにくい。わからない」となっていることも事実である。
現に4月25日に開催をされた法務委員会の「参考人招致」の場で、質問に立った自民党の議員は「私は地元でこの法律について尋ねた。大方が賛成と答えた。そこで『内容を理解していますか』と質問したら、ほぼ全員が知らない』と答えた」と述べている。賛成の根拠は「東京オリンピックでのテロの心配」ということなのである。
しかし今般の「テロ等準備罪」なるものは、提案をしている所轄の法務大臣は説明責任を放棄している。前半国会の、予算委員会などにおける同法案の野党の質疑に対し、安倍首相は「討論の場が違う。法務委員会で徹底した論議をしよう」と反論をした。にもかかわらず、開催された法務委員会の質疑は、NHKの国会中継も含め報道機関による詳細の報道はない。まさに「国民は蚊帳の外」の審議である。それどころか答弁者の答弁の食い違い。「芝居の黒子」よろしく大臣の後ろから答弁書手渡す光景を見てこの法案に信頼を寄せることのできないことは明白である。
唯一報道されたインターネットによる「衆議院中継」の論議を見て考えた。
「オーム・サリン事件があった」。当初、オーム真理教は仏教の宗教団体としてその布教活動は認められ、参議院選挙に候補者を擁立するなどの合法的な組織であった。しかし「化学兵器のサリン」を使用した大量殺戮が、教祖の麻原彰晃をはじめとした幹部によって計画され、準備をして実施された。そこでオーム真理教は「組織的テロ集団」と化したとなり、その宗教を信じ、殺人行為が準備されていることも知らなかった多くの信者も「組織的犯罪行為を行った団体に所属した」として捜査の対象になり罪を科すことができるのかとなる。これに対し金田法相は、あるいは刑事局長は「目的を認識していなければ、対象にはならない」と答弁している。
また合唱サークルを考える。楽譜が必要である。そこでコピーをして全員に渡したがそのこと自体は著作権法に触れる。しかしこのようなことは良くあること。ところが『楽譜のコピー刷りましを目的とした』と見なせば、犯罪行為(テロ)の準備のための金銭的・物質的な利益の確保と見なされる場合があるとしている。
キノコ狩りがある。森林法違反の事例は対象犯罪277にあげられている。「保安林でキノコを採ることもテロの資金源となるのか」との質問に対し、金田法相は「森林窃盗の対象となる産物には立木、竹、キノコ(など)がある。それは相当の利益を生じる場合がある。よって「組織的犯罪集団の維持・運営に必要な資金を得るための準備・実行行為にあたる」こともあり得ると答弁をしている。
よっていったん警察が目を付けた組織(個人)に対しては、そこに加盟をしている一般市民を恣意的な捜査線上にあげられる危険性が大であることは変わらない。そのことが国民の意識に萎縮を生み自由な発言も制限される。そして25日に招致された参考人の5人のうち4人が「一般市民が捜査に巻き込まれる公算大と明言」をしている。
法務委員会の質疑を聞いても余りにも不明な部分が多すぎる。また国民の理解の得られないままの強行採決は絶対にすべきではない。
むしろテロ対策は「水際対策」であろうことを最後に付け加えたい。