警戒を強めなければならない、福島に限る「特例法」
「福島第2原発で特例法検討・施行後3年で廃炉も―地元同意義務付け」これが福島県の地方紙「福島民報9月24日の1面トップ」の見出しである。
「政府は東京電力福島第2原発(福島県楢葉町、富岡町)について、再稼働申請の条件を地元自治体の同意を義務付ける特例法の制定を検討していることが23日明らかになった。施行後3年間で地元同意を得られなければ廃炉にすることを盛り込む。原子炉等規制法の『特例措置』として早ければ26日召集の臨時国会に法案を提出する方針」と報じている。
これに先立ち世耕弘成経済産業相は、8月19日福島県庁を訪れ就任後初めて内堀雅雄知事と会談をしている。その中で内堀福島県知事は東京電力福島第2原発の廃炉を求めたことに対し、世耕大臣は「一義的には東電が判断するものだ」としつつも、「福島県民の心情を察すると新規制基準への適合審査を申請している他の原発と同列に扱うことは難しい」との認識を明らかにしたとも報じられている。(福島民報8月20日)
これらを踏まえ、紙の記事は「福島第2原発については、今もって東京電力は明確な対応方針を示していない。福島県や同県議会は廃炉を求めている。政府が地元の意向を尊重することを法律で定めることにより、再稼働は一段とハードルが高くなり、廃炉の可能性が高まりそうだ」と解説をしているが、果たしてそうなるだろうか。
そこで、この二つの記事を重ね合わせて考えてみたい。
政府は、規制委員会の「新規制基準」を世界最高の厳しいレベルのものであり、その「適合審査」により安全と判断されたものから再稼働をすすめるという方針である。また原発を日本の重要な電源であることを公言し、さらに「安全原発輸出」を国策として強めている。そこで特例法の内容であるが、福島第2については「他と異なる」。よって規制委員会に申請をする前に「地元住民の同意」が必要と定めるとしているのだが、同意を必要とする「地元」の対象を明らかにしていない。前記を見ても明らかなように「第2原発の立地自治体である楢葉、富岡」と両町名を明らかにしている。さらに両町は、他に比べ低線量地区であったこともありいち早く住民帰還が取り組まれた地区である。そこで特例法成立3年後の町は、そして住民の生活実態はどうなっているか。その先が見えないことは確かである。
世耕大臣が述べている。「福島の場合は特別で、住民感情を考慮しなければならない」と。ではその住民を第2原発から30キロ、あるいは60キロ離れた「地域の住民の感情を無視できない」となるのか。そのことはすでに取り組まれた再稼働地域の実態からも甘いものではないことが明らかである。
しかし、政府も電力会社も再稼動の原点は「経済」である。そこには「住民感情」なるものを差し挟む余地はない。さらに無視できないものとして「福島第2の他県の原発への波及効果」がある。
その中での「特例法制定」とはいったいどういう風の吹き回しだろうかと訝るのは私だけであろうか。
さらに指摘をしたいものがある。経済問題であれば当然にして廃炉費用を含む補償問題も絡んでくる。「特別立法」により住民の同意が得られなかった。その場合、東電は「国が定めた法律に従い廃炉を決定した」という受け身の立場に立つ。よって「廃炉は国の規定によって決めた事、廃炉を含む一切の費用は政府(国会)が負担すべき」という論法が出てきても不思議ではない。現に、第1原発にからむ費用の負担を「未踏の分野」を理由に東電は政府に負担を要求し「世耕有識者会議」でその実現が準備をされている。そこに消すことのできない「東電の責任」は霧散してしまうことは確かである。負担と責任は国(政府・国会)に移り、強いては国民となる。
よって 政府は(電力会社)あらゆる分断政策をはかるだろう。それに対抗するものとして福島住民の意志が、全国民の意志となるための「総がかりの運動」が展開されなければならない。しかし、「言うはやすし、行うは難し」である。
ここまで書くと、それでは貴方は「特例法の制定に反対か」との反論を予測する。しかし、この間、政府や・電力会社が進めてきた事実を知る。そして沖縄における米軍基地の建設を強行する政府の姿勢がある。それは、いずれも「対立と分断攻勢」である。「反対しにくい、そこには亀裂が生まれる」という対立と分断の攻勢をもった歴史を幾度も経験をしてきた。そのことを鏡にして「警戒を強めなければならない特例法」であることを強調したいと思う。