宇宙(そら)を見上げて

謎の天文機材技師 ☆男(hoshiotoko)のブログです。

ASKO SkyLook 160BをOH

2019-03-31 21:59:00 | 撮影機材
アスコのスカイルック160Bという赤道儀をOHしました。


1975年くらいに販売されていた機材です。
シンクロナスモーターで追尾を行い、微動は赤経も赤緯も
タンジェントスクリュー式です。
ベアリングは極軸に小さいボールベアリングが2個だけ。
赤緯軸はメタル受け、タンジェントスクリューなどのウォームネジ
も全てメタル受け。

・超絶高精度なハメ合い。

・キチンと吟味された材料を適材適所使い分けている。

良い機械と言う感じでした。

完全に、ビス1本まで分解洗浄。






目盛環のアルマイトも腐食しています。


ベアリングは極軸に小さいのが2個だけ。




とにかく、軸などの篏合精度が半端なくピッタリ。
赤経軸、赤緯軸は言うに及ばず、例えばこのアイドラーギア。


全くガタ無し!
バラすにも組むにもドライヤーでギアを加熱しないと抜けないし、入らない。
極軸とウォームホイールなんて、一発カジったらオシマイ。
赤緯軸はベアリングを使っておらず、トップの羽子板から
バランスウェイトシャフトまで通しで1本加工物。
これをメタル受け部に真っ直ぐに入れなくちゃいけない・・・
テーパーローラーベアリングなんて、本当に簡単ですよ。

ベアリングを使わないで高精度を出すには、
使用する金属の種類と場所をキッチリと考えて設計しないとダメ。
温度変化で全く動かなくなるか、ガタガタになる。
赤道儀なのだから、尚更ですね。

固着したグリスは、接着剤かと思うほどにガッチリくっ付いています。
何処かにセットビスでもあるのか?本当に接着されているのか?
ビクともしない場合でも、パーツクリーナーを流し込んで根気よく
溶かして行きます。ドライヤーで加熱してみます。

すると、

ある時、突然にスルリ~っと抜けたりするんです。

タンジェントスクリューもOH。




目盛環は旋盤で咥えてトリートメント。
アルマイトが剥がれない、ギリギリでなんとか再生。




鏡筒を載せる羽子板を新規で製作。M8X35mmピッチタップ穴11個付き。


依頼主さん思い出の自作鏡筒に、少し加工をさせて頂きました。
こうすれば、手を放しても鏡筒が落ちません。


鏡筒の固定はM8ボルト付きローレットツマミを旋盤で薄く加工。
これで工具レスになりました。
ちなみに、角型鏡筒だとアリミゾ+アリガタは使い難そうです。
今後の改造時には、10mm板を1枚挟む必要がありますが、
丸い鏡筒や、タカハシ規格の鏡筒バンドであればそのまま付きます。


薄くしたのは、光路を妨げないようにするため。


ええ感じだわ~


しかし・・・そろそろ床がヤバイ。


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6 コメント

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Unknown (じゃんく王)
2019-04-02 20:58:59
私は実は愛知県の刈谷市出身でして、高1の頃(1975年)
アスコの工場を訪問させてもらったことがあります。
旋盤やフライスが何台かある町工場の風情でした。
そのころは工学の勉強はまだしておりませんでしたので
アスコの大きな望遠鏡たちが産まれる現場にただ
わくわくしたものです。

工学をかじって生業としてからは転がり軸受とすべり軸受の
使い分けみたいなものもそれとなく理解していますが
転がり軸受をたくさん使った方が高級といったイメージは
望遠鏡架台の世界では一般的にはあるんでしょうね。
それにしてもスカイルックの赤道儀にボールベアリングが
二個とは。

ところで、☆男さんはこういったOH業務を請け負って
いただけるのでしょうか?お近づきになってご相談させて
いただきたい架台たちがうちにたくさん転がっております。
Unknown (☆男(hoshiotoko))
2019-04-02 23:46:17
じゃんく王さん

今晩は。
お近くでしたね。一度お会いしましょう!
この返信にメールアドレスを付けましたので、何かご一報
頂ければと思います。
ご存知の通り、私は有限会社エイエフテックの代表取締役です。
つまり、望遠鏡業務は趣味ではなく仕事です。
このブログではオチャラケて書いておりますが、
保守業務は大切な生業のひとつです。
よく、本業は***ですが・・・と言う人が居ますが、
お金を頂くならば、それも本業という考えです。
手抜きは一切致しません。
機材によっては、費用対効果の観点からキビシイ物も有ります。
でも、
天体写真の機材と技法に関しては、実益を兼ねた最も興味深い
ワークと言う位置付けです。

Unknown (星雲志)
2019-04-03 13:34:40
昔話で恐縮ですが、アスコのスカイホークという経儀台+16cm反射という機材で惑星を見たことがあり、なかなか良く見えました。一方、アスコの赤道儀については、ほとんど現物を見る機会はありませんでした。
今回のオーバーホールで興味深かったのが金属部品のハメ合いと精度の高さです。当時の職人技に感心する他はないでしょう。今後はで追尾精度も上がると思いますので、夏の惑星撮影の成果を期待しています。
ところで、写真をよくよく見ると、奥には三鷹光器の架台が、さらに宇治天体精機の架台も見受けられ、☆男さんも書かれている通り、居間の耐荷重は大丈夫か? と心配してしまいました。
Unknown (☆男(hoshiotoko))
2019-04-03 21:52:43
星雲志さん

今晩は。
昔々のアスコは、なんだかカタログ写真がカッコ良かったですよね。
スカイホークなどの写真は良く見ていました。
欲しいけど買えないので、ミザールのCX150のカタログばかり見てため息。
確か\218,000.-だったような記憶があります。
あの頃の紙の匂いとか、なんとなく染みついていませんか?

しかしなあ~~

未だに物欲大魔王だものなあ~。(V)o¥o(V)

起きて半畳、寝て一畳とか、もっと質素に暮らせないものか・・・
Unknown (やまねこ)
2019-04-14 15:22:36
依頼者(笑)です。
このたびは本当にお世話になりました。

オーバーホールだけにとどまらず、実際に使う人間の立場に立った使いやすさを考えてのご提案・改良をしていただき、本当にありがとうございました。
月や惑星の撮影がますます楽しくなりそうでです。

赤道儀がきれいになって帰ってきたら自作の鏡筒が貧弱に見えてきたので、少し手を入れてやろうという気になっています。
いろいろとご相談させていただくかもしれませんが、その際にはよろしくお願いします。
Unknown (☆男(hoshiotoko))
2019-04-15 00:43:35
やまねこさん

こんばんは。
この機械は壊れそうな所がないため、まだまだ活躍でき
そうですね! 最高のシステムとは、高精度にキチンと
作られた機械と、高度な制御系が組合わさったものです。
フィードバックを掛けたところで、ガタのある再現性無き
機械はハンチングするだけです。
流行りのPECも機械の再現性があってこそ。
AGもしかり。特に赤緯軸にガタがある機械はAGが上手く
機能する筈がありませんね。
ダイレクトドライブのフリクションシステムなら最高の結果を
期待できるでしょう。
また、キチンとしたバーニヤが付いていますから、
DSOの導入だって出来る筈です。欲を言えばGN-170みたいに
恒星時目盛環だったら言うこと無しでしたが、機械強度は
ASKOの方が上ですね。
HPやblog、楽しみにしております。

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