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Uberのケースから経済格差を考える

2019-06-02 08:27:38 | ブログ
 米国のUberという会社と言えば、顧客がスマホのアプリを介してタクシーを呼んで利用できるようにサービスを行う会社と理解している。

 全世界に400万人近くいると言われるUberの運転手と言えば、おそらくスマホのアプリを介してUberと運転手の契約をしてタクシーを運転する人々を指すのであろう。彼らは、フリーランスの労働者と言ってもよいが、会社と契約した一定額の時間給をもらっている点をみると、フリーランスと言うよりパートタイムで働く労働者とみた方がよいだろう。

 彼ら運転手のなり手が多く競争も激しいらしく、支給される時間給も下がる傾向にあり、一定のノルマを達成したときに支払われるボーナスも削られる方向にあるという。

 一方、Uberは、その株式を所有する投資家に対して、initial public offering(IPO)を実行した。IPOとは、増資の株式の無償提供のようなものだろうか。いずれにしても、株主の利益になるような施策であろう。

 ここまで書いたことを振り返ると、特に目新しい点はないように思える。古くから言われてきた資本家と労働者の対立という構図も、現代ではそれが意味するものがすっかり変わってしまっている。言うなれば、パラダイム・シフトしている。

 資本家とは、会社の経営者と言うよりも、むしろ投資家を指している。投資家の多くは、会社の経営に直接的には関与していない。また、ここで言う労働者は、一種のパートタイマーではあるが、そのタスク(各利用客に対するサービス)は会社が設定したものではなく、自分の自由意志によって選択したものである。従って、ここでは資本家による労働者の搾取という言葉が当てはまりそうにない。

 ここで注目することは、Uberの株式によって莫大な富を手にする投資家と時間給やボーナスが削減される運転手の身分とのギャップに不満をもつUberの運転手たちが、世界的な規模でストライキを起こしたことである。Uberサービスを行っている国々の運転手の一部が、SNSなどを通じて意気投合し、日や時間帯を決めて一斉にストライキを立ち上げたようである。

 一般のパートタイマーは、職種や職場が限られているし、労働組合もないので、パートタイマーたちが結束してストライキを起こすことなど考えられない。しかし、職種が同じであり、職場が世界中の道路に広がっているUberの運転手となると話は別のようだ。

 ちなみに、米国の労働局の見解では、Uber運転手のような労働者は、被雇用者ではなく、自営業者に分類されるとのことである。Uber運転手によるストライキを否定するニューアンスと受け取れる。

 そうなると、Uber運転手によるストライキは、ストライキという形態を借りた会社に対する抗議のデモ行動と受け取った方がよいようだ。

 今回のストライキには400万人の運転手のうち何人が参加したのか不明であるが、タクシーの利用客が不満をもつことも少なく、会社に大したダメージを与えることができなかったらしい。Uber運転手の層の厚さを物語るものでもある。

 しかし、Uberが認めるように、「会社は運転手でもっている」のであり、運転手の待遇が悪くなれば運転手は他の仕事に移っていき、その分利用客が不便をこうむることになるので、会社も安閑としてはいられない。

 どうやら、パートタイマーによるストライキという目新しそうに見える話題も、分析的な考察をしてみれば、富者と貧者との間の経済格差および社会の分断という大きな問題の一端であることを知る。