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政府によるキャッシュ・フロー政策

2011-02-09 21:51:48 | 社会・経済

 米国政府が行っている金利の上げ/下げと、金融機関への資金投入との組合せによるキャッシュ・フロー制御の仕組みがどうも分かりにくいので、図式にして整理してみることにした(本ブログでは、図式を省略する)。

 どの国の政府も共通して行っている政策として、経済がインフレ傾向を示すとき金利を上げ、デフレ傾向を示すとき金利を下げるという施策がある。金利を上げたとき、消費者は可処分所得のうち消費に向ける分を減らし、貯蓄に多くを回す。投資家は資金の多くを投資に回す。また、産業界は金融機関からの借り入れを減らす。

 政府が金利を下げたとき、消費者は貯蓄に向ける分を減らし、消費に多くを回すという。ただし、今の米国のように失業率の高い状態では、これによって消費が増えることは大いに疑問となる。投資家は投資を減らす。産業界は金融機関からの借り入れを増やすことが期待される。

 ところが、金利の下がった状態で、産業界が借り入れを増やして投資に多くを回すか否かもまた少なからぬ疑問となる。消費者の消費が期待通りでないので、投資の必要がないケースもあろう。また一方では、消費者が貯蓄に回す分が減るので、金融機関は資金不足に陥り、いわゆる貸し渋りをすることになり、投資意欲のある会社も思うように借り入れができないということが起こる。

 そこで、米国では、低金利に加えて、キャッシュ・フロー制御についての方程式の右辺の第2項として、政府は、金融機関からTreasury billsを購入することによって、金融機関に資金を投入し、産業界へ多くの資金が流れるように制御する。このような金融機関への資金投入は、破綻しそうな金融機関へのbail-outとは別物なので、ややこしい。2008~2009年の金融危機の時代の金融機関の救済は一段落し、不況とは言ってもすでに次の時代に移っているのである。

 ところで、日本では、米国とは異なり、政府が金利を下げても消費者は貯蓄に向ける分を減らさないようである。将来の失業不安や、老後の年金不充分という不安があるためか。このため、日本政府は、国債を発行して国内の金融機関に購入させ、金融機関からだぶついた資金を吸い上げて税収不足の穴埋めをしている。つまり、キャッシュ・フロー制御方程式の第2項が米国とは異なるのである。米国政府も国債を発行しているが、上記のような事情のために、国内の金融機関が国債を購入する余裕がないのであろう。米国国債の多くは、中国によって買い取られている。