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回想――頭を元気にする習慣づくり

2009-12-17 | ポジティブ心理学


回想――頭を元気にする習慣づくり 第8回 
「過去の楽しい思い出が頭の元気を作る」

●回想療法
 高齢者用の心理療法、というよりケアー(介護、援助)技術の一つとして回想療法というのがあります。

 過去の思い出を引き出して、高齢者の頭の働きを活性化し、さらに、過去を思い出させることによって、自分の人生の物語作りをしてもらおうというものです。

 活性化とか物語作りという耳なれない言葉がいきなり出きましたが、これについては、のちほど説明することにして、話を続けます。

 

楽しい思い出は、気持ちを元気にしてくれますが、反対に、つらい思い出は気持ちを落ち込ませます。
できれば、楽しいことを思い出したいものですが、そう都合よくはいきません。

ここでは、もっぱら楽しい思い出の回想が、頭を元気にする話をしますが、その前に、つらい、悲しい思い出の回想はどうするかについて、先に一言述べておきます。

悲しい回想はないのに越したことありませんが、しかし、そんな思い出がまったくないという人はまれだと思います。そして、あるときふと脈絡なくそれが頭に浮かんできてしまいます。
でも、そうした回想も、実は、回想することで心が開放されるということもあります。
無理にそうした回想を閉じ込めて思い出さないようにするよりも、むしろ思い出すことで、気持ちが楽になることもあります。そして、思い出すたびに悲しい、つらい気持ちが、だんだん弱まって冷静に見つめることができるようになってくるところもあるはずです。
感情の知性化ですね。
このように考えれば、回想も、プラスもマイナスも含めて、頭を元気にする心の働きとして活用できます。

● 回想ってどんなもの
① 必ずしも事実が思い出されるわけではない
 一般的に思い出せる量も思い出した内容の正確さも、時間に反比例します。名前、場所、エピソード、いずれも、昔になればなるほど思い出は曖昧になってきます。したがって、思い出せたとしても、どうしても不正確なものになってきます。

② 回想には一貫性がある
回想された内容は曖昧で不正確だとしても、思い出した人にとっては、それなりに一貫したものがあります。なぜかというと、一貫性があるように自分で記憶している内容を編集してきているからです。編集を促すのは、自分自身やあなたの周囲にいた家族などです。
 先ほど、「物語作り」という用語を使いました。記憶内容の一貫性のある編集とは、この物語作りと関係します。

なお、 
 青年期は、その「物語作り」が混乱しています。というより、いくつもの物語作りが同時進行しています。過去と現在と未来とが渾然一体となって進行します。

だから青年期は、大変なのです。あまりの混乱ぶりに、心が耐え切らなくなってしまうことさえあります。その混乱をおさめるためには、一貫性のある自分についての物語が必要になります。
青年期は、この物語づくりで悩無時期です。
 
回想の3つ目の特徴は、
③ 感情的な要素が入り混じっていること です」
うれしいかったことや、反対に悲しかったこと、それも凄くうれしかったことや、反対に凄く悲しかったことがよく回想されます。
 回想されるのは、このように強い感情を伴うエピソードが多くなります。
いたずらしてひどく叱られた思い出、艱難辛苦のすえ試験に合格した思い出などなど。
 ただ、その感情は、回想されるときには、客観的なものになっています。
そういえば、「涙を流しながら喜んでいたなー」となります。

さて、
● 頭を元気にする回想をするための習慣づくり の話です
まずは、
①今現在が幸せと思えること、あるいは、感じること です
  なぜかというと、楽しい時には楽しいことが思い出されるからです。これをポリアンナ(快)原理といいます。
 先ほど、悲しい、つらい思い出をどうするという話をしましたが、過去の回想は、現在の気持ちに強く依存しているのです。
②幸せ物語を持つこと
 自分の過去を振り返り、さらに、将来を見すえて、今の自分をポジティブな存在として自分なりに納得することです。
幸福感と幸せ物語作りが幸せエピソードの回想を促すわけです。
また、幸せエピソードの回想が、幸福感をさらに強め、幸せ物語をもっと精緻はものにこともあります。
つまり、幸せエピソードの回想は、幸福感と幸せ物語とを行ったり来たりきたりしているのです。この往復が大事になります。
‘‘‘‘‘‘@@@@@@@@@
  幸福感    幸福エピソードの回想  幸せ物語

‘‘‘‘‘‘‘‘‘‘‘‘‘‘‘‘‘‘‘‘‘‘‘‘‘‘‘‘‘‘‘‘‘‘‘‘‘‘‘‘
そして、こうした往復がどうして頭を元気するかは、おわかりですね。
往復ですから、どちらから出発してもかまいませんが、一番楽なのは、幸せエピソードの回想だと思います。これまでの人生を振り返って何かうれしかったことを一つでも2つでも思い出してみてください。だんだん幸せな気分になってくるはずです。
そして、自分をほめてやりたい気分になってきませんか。
そこで、自分についての幸せ物語作りをするのです。
「貧しかったけれども、お母さんはかわいがってくれた」
「試験では失敗ばかりだったが、よくここまでがんばってきた」
などなど、物語といってもそれほど大げさなものを考える必要はありません。自分の誇れるところをつないでいけばいいのです。
そして今が幸せだと、過去の不幸せさえ、今の幸せのためのこやし、あるいはその不幸せがあったこその今の幸せ、と考えるようになります。

④ 思い出品をみえるようにしておくこと
家族の写真、表彰状、あるいはお土産などなどを、みえるようにしておくことです。
自分の場合は、過去に書いた50冊ほどの自分の本です。これが、デスクの脇の縦型本棚に積んであります。
回想にも、回想のきっかけになる手がかりが必要です。
20代では、また早いかもしれませんが、回想に値する幸福な体験をたっぷりとすることですね。そして、その証拠を残しておくことです。
なお、大学の卒業アルバムを購入するのは、圧倒的に女子学生が多いとありました。
このことに限りませんが、女性の幸福戦略は実に豊かで強烈なところがあります。

⑤ 回想に浸る余裕を作り出すこと
 IT社会は超多忙社会でもあります。
 寸暇を惜しんで、仕事をし、遊び、そして生活します。時をかまわずに、メールが押し寄せ、ゲームをしてしまいます。
 回想、連想に浸っている時間的な余裕がない毎日を過ごしてしまいがちです。
それでは、心のため がなくなってきます。あげくは、心の元気を失ってしまうことになりかねません。
ぼんやりと回想、連想に浸る時間を確保することにも留意してください。