2部 頭を元気にするキーワード
ふつふつと思いが湧いてくる
楽しい思い出 あかるい未来 空想の世界に遊ぶ
時間を忘れる どんどんうまくなる
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
あ
あるがまま 8-4
い
いいかげん 8-8
お
オープンマインド8-13
おもしろさ 8-18
か
改善マインド 8-23
回想 8-26
き
希望 9-1
逆境 9-9
く
クイズ9-14
空想
クリティカル・シンキング 9-20
け
計画PDCA 9-24
元気づけ本
元気づけ本「知は力なり」
●元気づくりの本と名言
この原稿を書くにあたり、実にたくさんの「元気本」「自己啓発本」を購入してしまいました。ポジティブ心理学の専門書もありますが、圧倒的に多いのは、ハウツー本です。机の周りにあるものだけ、順不同で挙げてみます。
「いつも「いいこと」が起きる人の習慣;自分を画期的に伸ばす19の法則」(トマス・レナード)
「いい言葉は、いい人生をつくる」 斉藤茂太
「名言力」大山くまお
「感動する脳」茂木健一郎
「HAPPIER;幸福も成功も手にするシークレット・メソッド」(タル・シャッハー)
「Happy名言録;一瞬で人生が変わる」ひすいこうたろう+よっちゃん
「人はホメ技で180度変わる」内藤誼人
これで1/3くらいです。アマゾンで、「元気 心理学」でヒットする件数は、74件もあります。それだけ心の元気に関心のある読者が多いのだと思います。
なお、この種の元気本、大きくは2つに分かれるようです。
一つは、「それいけどんどん」元気本です。
断定口調で、心を鼓舞する類の言説で満ちています。
もう一つは、「ゆるゆる」元気本です。自分の本は、こちらです。
もっと力を抜いてゆっくりと明るく生きましょうよというなものです
さらに、私は、名言が大好きです。
著書やブログ、さらには、授業の随所で、さまざまな名言を紹介するようにしています。もっぱら本からとりますが、ウエッブにも名言サイトがありますから、活用させてもらっています。
●知は力なり
これは、哲学者・ベーコンの言葉としてよく知られています。
「元気本」は、まさに、元気になるための「知」を提供してくれます。
ただし、その「知」が力になるためには、それなりの方策が必要になります。それについては、いつものように、最後にまとめるとして、とりあえず、「知」が力になることに関して、少し考えてみたいと思います。
車の運転免許証を取得するときのことを考えてみます。
テキストを使った、もっぱら法規や車の構造などに関する知識を学ぶ座学があります。それと並行して、指導員つきっきりの運転実技があります。前者を意味的知識の学び、後者を手続き的知識の学びと呼びます。
この2つとも、運転に関する「知」の世界を作り出すための学習なのですが、その性質はかなり違います。
意味的知識の学びは、ペーパー試験でその習得がチェックされます。そして、その知識は、ときおり、必要に応じて思い出すことで、「知」が「力」になります。
後者の手続き的知識のほうの学びは、もっぱらからだでできるかどうかでその修得がチェックされます。実にこまかく下位目標が設定されていて、達成度がチェックされます。意味的知識がいわば、知っているかどうかが大事なのに対して、こちらのほうは、できるかどうかが大事になります。
運転免許の場合は、2つの知識がそれほど連動していません。ですから、実技試験は通ったのに、筆記試験はだめという人も、あるいは、その逆の人もいます。
やや理屈っぽい話がさらに続きます。
実技では、指導員が言葉を使って教えるところもありますし、実際に手取り足取りで教えてくれることもあります。
「アクセルはスピードを調整します」(意味的知識)、「では、アクセルを少し強く踏んでみてください」(手続き的知識)となります。
そして、手続き的知識は、練習を重ねることで、無意識的、自動的にできるようになって、はじめて力になります。
これが、運転やスポーツなどの技能(手続き的知識)を学ぶときの一般的な過程です。
やや理屈っぽい余談が長くなりました。
こうした認知心理学的な知見をベースに、元気本を力にするコツを提案してみます・
●元気本を生かす
①理屈も実践も大事にする
「畳水練」「畑水練」という言葉はご存知だと思います。知識ばっかりで役に立たないことを揶揄するものですね。そういえば、「知識は敵なり」というスローガンのもと、たくさんの知識人が抹殺されてしまった悲しい歴史も世界のあちこちでありました。
「理屈ばかりこねていないでやってみること」は確かに大事ですが、だからといって理屈抜きでよいかというと、それも学びとしては脆弱です。
自動車教習所の学び、つまり座学と実習の「黄金率的(最適な配分の)」学びが、学びとしては王道だと思います。その率は、学ぶもの、学ぶ段階によって違ってはきますが。
元気本についても、確かに、「読んだ、わかった、忘れた」では困りますが、
「読んだ>使えそう>使ってみた>うまくいった>また使う」のサイクルが出来上がれば言うことなしです。
そうしたサイクルにするコツは、まずは、元気本を読むこと。そしてその一部でも、使えるようする努力をすることです。
本シリーズでは、そのために、随所で「ポジティブ心理術トレーニング」を入れてみました。その効果のほど、いかがでしょうか。
②知識を信念にしてしまう
知識とそれを実践する行為の間には、越えなければならない障壁があります。知ってはいたができない、あるいは、しないとなります。
これを克服するのは、ひとつには、①で述べたように、理屈だけをこねまわさずにともかくやってみよ、があります。これはこれで有効です。
知識と行為の障壁を越えるもう一つの方策は、ここでおすすめの知識の信念化です。
これは、かなりやっかいで知の本質にかかわる話になります。簡単に、「あなたの心の琴線にふれるものが信念になります」といって済ましたいところですが、それでは、スピリチュア言説になってしまいますので、やや長くなりますが、おつきあいください。
ある情報、たとえば、「幸せと目標は切り離せない」という元気づけ言説とその論拠を本で読んだとします。そして、「言っていることはわかった」までは、通常の理解段階です。知識が一つ増えたことになります。
それが信念となるためには、すくなくとも、次のような2つの確信が必要です。(以下、「信念」の項と重複しますが、大事なことなので)。
一つは、その言説が正しいという確信です。これは、頭の中にある関連する既有知識との整合性に依存します。「幸せ」、「目標」といったことに関連する知識のネットワークなかにうまく(矛盾なく)取り込めれば、正しそうだ、となります。
元気本を読む、それもたくさん読むのは、こうした既有知識を豊富にしておくことになります。そして、信念形成のためのヒント集、というより、それまで無意識的にあなたをガイドしてきた信念の顕在化、言語化の役割を担っていることになります。
もう一つは、その言説が使えそう、有効そうという確信です。この確信がどこから生まれるかは、なかなか難しいところがあります。基本的には直感だと思いますが、それも人生観、人生経験に基づいた直感ではないかと思います。
さらに、元気本や元気づけ名言がよく使う手?は、成功者、偉い人の言説の活用です。
たとえば、松下幸之助語録。膨大な言説がたくさんの著作として公表されています。そんな成功者、偉い人が言うなら、自分もやってみよう、ということになります。「権威づけ効果」です。あるいは、自分の身近にいる尊敬している人や私淑している人の行動や言説も信念化には有効です。
③時には、信念チェックをすることが必要
このようにして、元気本などから仕込んだ知識が信念として機能するようになると、世の中の見え方が変わります。行為の方向性が定まり、元気に動けます。知識が行為としてスムーズに実行されるようになります。かくして、まわりから、あなたは信念の人とみなしてくれます。
ただし、という話を最後に付け加えておきます。
信念は、あなたの頭の中で作り出されます。現実の中にある事実を積み上げて帰納的に作りだされた世界ではありません。したがって、信念と現実との間にはズレがでてきます。
信念に基づいた行為とは、信念と一致するように現実を変えようとするものです。あくまで、現実のほうを変えようとするのです。ですから、当然、現実からの抵抗がでてきます。
その抵抗と戦うためには、信念にかかわる知識の真実性が問題になります。そこが脆弱だと、足元をすくわれます。信念が強力なほど、真実性のチェックが甘くなります。というより、信念を強化する情報しか受け付けなくなります。思い込みの世界に入りこむリスクが高くなります。
このリスクを少しでも低くするためには、
・ぶれない信念を持ちながらも、まわりの意見、情報にも耳を傾けることによって知識
の真実性チェックをする心構え(信念?)を持つこと
・現実が信念の方向に変わっているかどうかを厳格に査定すること。できれば、自分で
はなく、周りの人に査定してもらうこと。
ではないかと思います。