桜田門外ノ変〈下〉 (新潮文庫) | |
クリエーター情報なし | |
新潮社 |
吉村昭さんのこの本は、桜田門外で井伊大老を襲った水戸藩士たち、特にその首謀者 関鉄之介を中心とした視点で書かれてます。
その描き方は、クールであり、あえてアンチドラマチックに押えた筆力が光ります。
諸田さんの、温かみあふれる筆致とまったく異なる表現で、いたずらな詩劇化を拒絶しているよう、、、。色彩を消している。
暗殺、切り合いは、決してかっこいいことでなく、ぶざまなものだと静かに語っているようです。
幕府側、水戸藩、薩摩藩、朝廷側、そして水戸浪士たち、井伊直弼、、、、、、登場人物の視野、世界観がおのおのすごく限定的で、まったく交わることがなく、ぶつかり合いがエスカレートしていく。
まさに、物語全体に時代の圧力を大きく強く感じさせるように描いているようです。
井伊大老はアメリカからの圧力に不安を増大させていて、その連鎖として安政の大獄を指示していった。その圧政で追いつめられていた水戸の攘夷派、不安感の相互増殖は、ついにテロ 暗殺へと、、、。
そこで、薩摩は約束どうり動かず、何が変わったんだろう。
鉄之介の、長く飛散な潜伏逃避行。
いつの場合でも国家権力は自己に不都合なことは抹消しようとする。そのことが強く印象に残ります。
私も同じ考えでしたので(リアルタイムでしたらマスメディアもそうだと思っています。報道であり、それが時に誘導であり、のような・・・)お話が面白かったです。
井伊大老の護衛は即逃げたり、軽い傷を負った所で逃げたりして、
真剣に守ったのは2,3名?
けれど後に逃げた者(そして御家)には厳しい沙汰、任務を全うし命を落とした者の御家は存続、
と聞きましたが、どうだったのでしょうか??
万延元年の事件も、隠されました。井伊大老も怪我とされましたので、逃げたお付きは、謹慎処分が多かったと、この小説ではなっていました。