宇宙そのものであるモナド

生命または精神ともよびうるモナドは宇宙そのものである

カフカ「夢」:この世に絶望しかない時、人は快感原則を捨て《死への欲動(憧れ)》を持つ!&この世的価値と異なる《美の価値》に憧れる!

2020-05-20 18:18:44 | Weblog
※カフカ(1883-1924)「夢」(1916)『カフカ短編集』岩波文庫(池内紀編訳)

ヨーゼフ・Kは夢を見た。彼は散歩に出た。2歩で墓地に着いた。墓地の道を彼はポッカリ浮かんで滑っていく。掘り返したばかりの墓が遠くに見え、何本の旗がたち賑わっているらしかった。ところが気づかなかったが、ふと目を落とすと、その同じ墓がそこにあった。二人の男が墓石を持ち上げ、ずぶりと土に突き立てた。そして芸術家が現れ、墓石に金文字を書き始めた。「――ココニ眠ル」。Kが見ていると、芸術家はなかなか「――」の部分に名前を書かない。Kが見ていると、芸術家は困惑した。礼拝堂の鐘が鳴りだした。Kはわっと泣き出した。芸術家は決心し名前を書き、腹立たしそうにした。突然、Kの前に大きな穴が現れた。Kは流れに揺られ仰向けのまま、穴に沈み込んだ。穴にぐんぐん引き込まれていく。堂々とした飾り書体の金文字のKの名前が、墓石に完成した。Kがうっとりと眺めていると目がさめた。

《感想1》ヨーゼフ・Kが散歩に出たと思ったら、二歩で墓地。Kはそこで仰向けに流されていき、自分の墓の穴のなかに吸い込まれた。Kは墓石の飾り書体の金文字の自分の名前をうっとり見た。すると目が覚めた。
《感想2》Kはなぜうっとりしたのか?①死ぬのが自分だと知ってうっとりした。Kには《死への欲動(憧れ)》があった。自分の死に満足した。②Kは、金文字の飾り書体が立派で美しかったのでうっとりした。彼はこの世的価値と異なる《美の価値》に憧れた。
《感想3》フロイトによれば、人は快感原則に生きる。ただし快感原則は自己の生活の安寧のため現実原則による修正を受ける。
《感想3-2》だがこの世に絶望しかない時、人は快感原則を捨て、現実原則もあきらめ、《死への欲動(憧れ)》に身を任せる。フロイトは、《死への欲動》について語っている。恐るべき不安を克服するため患者が、苦痛or死を求める。
《感想3-3》ヨーゼフ・Kは、①秘かに死に憧れていた。彼は《死への欲動(憧れ)》に従う。(Ex. 自分が死ぬと知ってKはうっとりした!)
《感想4》美は、快感原則のこの世的価値(カネ、性欲、権力欲、傲慢、名誉等々)と異なる。ヨーゼフ・Kは快感原則のこの世的価値と異なる②《美の価値》に憧れる。(Ex. 立派で美しい金文字の飾り書体にKはうっとりした!)
この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「今の系列」は時間性の脱自... | トップ | カフカ「夜に」:精神or魂に... »
最新の画像もっと見る

Weblog」カテゴリの最新記事