講談社文庫 590ページ 876円+税
零式戦闘機パイロット 宮部久蔵。彼は優秀ではあったが勇敢なパイロットではなかった。臆病者と言われても生き残ること、生きて変えることに執着していた。しかし、終戦間際に特攻で散華する。真珠湾攻撃で赤城の航空隊として出撃してから特攻で命を落とすまでの数年間の宮部久蔵の生き様、その真実が明らかにされていく。
昨年末に映画が封切りされ大ヒット。本書にまつわるゼロ戦ムック本なども多数刊行されて「ゼロ」ブームが起こっています。遅ればせながら、私も本書を手に取りました。百田尚樹さんの本は、これが3冊目。過去はクラシック音楽書、対談書えを読み、真ん中の小説に入るのを遅らせていたような感じです。
夕刻に読み始め、食事をはさんで深夜に読了。590ページを一気にいかされてしまいました。こういう素晴らしい作品は読書を中断できないから危ないです。
本書の最後についている児玉清さんの解説にもありましたが、若い読者のため、大東亜戦争を知らない、戦闘機を知らない世代のために、しっかりかつ分かりやすく情報が記されています。当時の日本の状況から戦局の展開、資源や技術、そしてその当時の日本人の考え方がこれ以上上手く表せないと思うほどの筆致です。さらに現代の新聞記者を登場させて、マスコミが作り上げた誤った歴史観についての指摘もあり、ここは痛快極まりないです。
日本軍の組織を研究した名著「失敗の本質」はかなり難解な本で学術書のような香りがしますが、本書によっても過去、そして現代も抱えている日本の組織の弱さを学ぶことができます。本書を読まれたお方は次に「失敗の本質」へ進んでいただきたい。
ヒューマン・ドラマとして、これは数度にわたって、涙が溢れました。文章が上手い下手ではなくて(文章は極上です)、描かれている人間の心に感動して涙がにじんでくる。こういうのたまりません。感情移入してしまいました。
間違い無しのお薦めです。
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