中東・中近東などの概念は、歴史的に大きく変わってきましたが、いまや混迷する世界情勢を理解するにはとても大切な地域となりました。ここでは「中東」とすることにします。
「異質なようですが、似ている部分もある」イスラム教とキリスト教の対立に、世界混迷の原点があるのでしょうか。
何ヶ月分もの食糧や医薬品、冬の衣服などの支援物資を積んだトラックが、包囲されているシリアの町マダヤに入りました。マダヤでは政府軍による包囲で4万人が閉じ込められており、10月以来食糧を受け取っていません。中には飢餓のため、死亡した人もいるということです。・・・・
私たちの食べている物を見てほしい、と、この女性は言っています。この援助を求める映像は活動家が撮影したもので、信憑性のほどは確認できません。しかし国連は人々が餓死していることを示す信頼できるリポートだとしています。食べ物や毛布、医薬品は今夜、倉庫で荷下ろしされます。
一方反政府勢力が包囲している北西部の2つの村にも、支援物資が届けられます。それがマダヤに支援する条件です。:BBC ワールド・ニュース NHKBS1 2016/01/12 05:00-
マダヤは
シリアの首都ダマスカスから北西30kmにある村です。
シリア内戦は
「気になる」というレベルを遥かに超えてしまったようです。
私は、こうして知り得たことを伝える役割しかもてませんが、その知り得たことの善悪・正邪・美醜・正否、そして私の判断結果には異論があるでしょうが、それでも何もしないよりはいい、と考えています。
理解不可能なほど複雑な対立であることは誰でも分っていますが、包囲され「食糧攻めをされている」、ところも多く
- シリア政府軍が包囲している村
- 反政府軍が包囲している村
の両方が存在するため、国連が食糧援助をしようとしても
- 政府軍が包囲されている村
- 反政府軍が包囲されている村
の両方へ食糧援助をすることが「援助の条件」になっているようです。単に「食糧援助」だけでは、だめなんですね。
結局、「武器による殺傷」よりも「兵糧攻めによる餓死」のほうが「悲惨さを薄められる」、とでも判断しているのでしょうか。そんなことはないのですが・・・・
よって、「国連などによる援助」が遅れると、無数の庶民が餓死してしまうのです。
このように見るとシリアでは
- 国内で包囲されずに脱出できて、別の場所へ避難できた人は、それはそれは悲惨ではあっても、それでも母国シリアで包囲され兵糧攻めにあって餓死する人よりは「まだマシ」なのでしょうか。
- さらに言えば、国外へ難民として脱出できた裕福な人たちは、密航業者に金だけ取られてだまされたり、話とは違う小さいボートに乗せられたり、そのボートが地中海で転覆して命をおとしたり、エンジンが故障して漂流・餓死したりと、さんざんな目にあっていますが、それでも母国シリアで包囲され兵糧攻めにあって餓死する人よりは「まだマシ」なのでしょうか。
- そして何とかEU諸国にたどり着いた人々でも、同じEUなのに上陸を拒否され強制送還される人がでたり、単に通過だけさせられてドイツやイギリスへ向かう無数の人がいて、これらの難民が多すぎるため国境での審査が厳しくなり、難民の中にテロリストが含まれる可能性があるとして「人道的」に強制送還されてしまうことを考えると、それでも母国シリアで包囲され兵糧攻めにあって餓死する人よりは「まだマシ」なのでしょうか。
- スマホで情報交換しながら道中で充電ボランティアの世話になりながらでも、行進を続けなければならないという難民たちに苦悩があったとしても、それでも母国シリアで包囲され兵糧攻めにあって餓死する人よりは「まだマシ」なのでしょうか。
- また無事難民として定住できたとしても、一緒に来た家族がバラバラになり別の国家へ引き取られ、しかもそこの国の言語になじめないまま差別され脅威となってしまっても、それでも母国シリアで包囲され兵糧攻めにあって餓死する人よりは「まだマシ」なのでしょうか。
食糧がなく餓死する人たちと言えば
北朝鮮が思い出されますが、とにかく独裁政権の幹部が援助物資を横取りしてしまい、一般の国民へ食糧を届けようとする行為は「内政干渉として、許されない」。
これが独裁政権の特長で、世界の善意が届かない、のでした。
こうした内戦から
多数の難民が生まれていますが、これは近年のシリアに限ったことではなく、イスラム教の熱狂的な幹部たちが勢力を延ばそうとして支配する地区で、しばしばみられる現象です。そこにキリスト教国の利害がからんでいることは確かでしょう。
それは別としても私には、シリアへの食糧援助と、北朝鮮への食糧援助とが、重なってみえてくるのでした。
共通しているのは、「独裁政権がその地域を牛耳っている」、ということです。
ここでは、思いつくまま
近年のイスラム過激派の犯行とされているものを羅列しました。
母国を脱出せざるをえなくなった人たちが、難民として異国に渡れた幸運があったとして、そこで本人や二世たちがイスラム過激派となってテロを起こすほど、孤立し差別されているのでしょうか。
どこへも行き場がなくなったのでしょうが、この結果、穏健なイスラム教徒あるいはその二世たちでさえ、渡航先で被害にあう時代です。
この難民を発生させないようにと空爆するのですが
テロリストたちが住民に紛れて姿をくらまし、それが空爆の誤爆につながっているのを見落としてはいけません。
ヤクザの増長を防ごうとしても、普通の住民に紛れてしまい、誤認逮捕が多発しますね。
結局は、即効薬などはなく、地道に努力して治安をよくするしかないのでしょうか。
2001年9月11日アメリカ同時多発テロ事件:航空機等を用い死者3000人以上をだしたイスラム過激派による事件
それまでのアメリカの横暴をみるにつけ、私はいつか誰かがこのアメリカという国を「月に代っておしおき」しなければならない、とは感じていましたが、この事件は「おしおき」のレベルを超えていたようです。
事件後に若いアメリカ人が「これほど自分の国が世界から嫌われているとは思わなかった」と述べていました。あの攻撃的でわがままな自国アメリカの世界戦略を知らなかったというのですが、今でも印象に残っています。
この事件も1つのきっかけとなって、イスラム過激派によるテロ続発の時代へと突入しました。
2005年07月07日ロンドン同時爆破事件:地下鉄の3か所とバスが爆破され死者56人を出したイスラム過激派による事件
安全とされたロンドンでも、不穏な動きがみられるようになりました。
1991年ごろのソ連崩壊時のチェチェン独立運動失敗、そしてロシアが極端に恐れた1998年頃の第2次チェチェン紛争で押さえつけられたイスラム勢力が、ロンドンへまわってきたのでしょうか。
これは多くの国が空爆し始めたためISがシリアやイラクを追われ、中央アジアや中国その他の国でテロを実行するのではないかという予言を惹起(じゃっき)させます。
やがてこれらが2010年以降のチュニジア「ジャスミン革命」に代表されるアラブの春に繋がります。
不幸なことでしたが、独裁者が長くイスラム教徒を押さえつけて平穏を装っていました。しかし、この独裁者を倒したのはいいけれど、その後急激にイスラム内部で混乱・対立・内戦が起こり、現在の異常な混乱状態となっているのを見ると、手放しで独裁者除去を喜んではいられません。
2015年01月07日シャルリー・エブド襲撃事件:パリの風刺週刊誌本社を襲撃し死者12人を出したイスラム過激派による事件
今からちょうど1年前には、けっして品がいいとは言えない週刊誌を発行する会社が、掲載し続けた「イスラム教を侮辱するように見えた漫画」も関係し、イスラム過激派による襲撃テロを受けました。
これこそ宗教の違い、「批判・諷刺」意識の違い、から起こったものでしょう。一方は「品がないけれども許せる範囲」とみなし、一方は「断じて批判を許さない」とするのです。はたしてどちらが正解なのでしょうか。
そういえば日本でも悪魔の詩の翻訳者が大学構内で刺殺された未解決事件〔1991年07月11日発生〕があり、イスラム過激派の怖さが、知れ渡ることになりました。
2015年03月18日チュニジアのチュニスにあるバルド国立博物館で死者22人を出した銃乱射事件
これも観光客が多いところだそうですから
衝撃がありました。2010年頃「アラブの春」という名の革命を始めた国チュニジアですが、この革命(独裁者の排除)を真似たイスラム諸国では、成功どころか、ますます混迷の度合いを強めていて収拾がつかなくなっているようです。
なおチュニジアでは、この「ジャスミン革命(2012年頃)」の後、決して順風満帆(じゅんぷうまんぱん)とは言えず、まだまだ問題が山積しているようですが、この国の4団体が2015年のノーベル平和賞を受賞しています。
このノーベル平和賞というのは「反対勢力から逆利用されてきた前科」があり、政治的な意図をもっている疑惑があるものの、今回はチュニジアの混乱を収拾しようとしたその努力に報いる必要性が優先されたものと思われます。
ノーベル平和賞が「逆利用」された例としては次が挙げられます。
- 2000年:韓国大統領の金大中。北朝鮮との融和政策に走るも北朝鮮の逆利用で失敗。今も北朝鮮は孤立無援の孤低の国家。国民が飢餓で苦しんでいます。
- 2009年:米大統領オバマ。対中国で懐柔策をとりましたが、中国の逆利用で見事に失敗。その後、米軍が一旦は撤退したフィリピンへ再度駐留し始め、中国の南沙諸島埋め立てを監視中。ウクライナ領クリミア半島侵略問題でもロシア制裁に力を貸し、シリアでも主導権を持ち始めていますが、やや遅すぎた感もあります。アメリカが世界の警察官の役割を放棄し始めるとみるや、これを逆用して力を伸ばそうとする国がある、という好例です。
- 2012年:平和路線をとったEU。しかし2014年にこれを逆用したロシアがソチ五輪直後にウクライナ領クリミア半島を武力併合して、EUなどはロシアを掲載制裁して今でも継続中。少々無茶なことをしても平和賞を受賞したEUは反撃できないだろうというロシアの読みでしょうが、その後のロシアンルーブル下落・原油(ロシア輸出にとって重要)価格の暴落などをみると、これが裏目に出たと言えるでしょう。
いすれもノーベル平和賞を受賞したものの、これを逆用されて、国際関係があやしくなっております。注意したいものです。
2015年10月31日ロシア民間チャーター便機爆破:エジプトのシナイ半島上空で爆破され死者224人を出したイスラム過激派による事件
2015年9月頃から、ロシアが本格的にシリアへかかわるようになりました。シリアのアサド大統領からの要請があったものと思われます。
そしてこの参入からちょうど1ヶ月後に民間機が爆破されたようで、預かり荷物に爆発物があったらしい。
その後、ロシアはますますIS空爆を強化していますが、2016/01/12のニュースでは、ソ連時代の爆発物の再利用で、費用は極めて小さいことを誇っているようです。泥沼の介入を恐れているのでしょう。
2015年11月13日パリ同時多発テロ事件にパリで死者130人以上を出したイスラム過激派による事件
これが最新のテロ事件で、これまた諷刺週刊誌本社襲撃のあと10ヶ月後のことで残酷さがいっそう増しました。
この事件直後に行なわれたフランスの州議会選挙で、極右政党「国民戦線(FN)」が大躍進をするも、その後の決選投票でことごとく敗れたようです。ただしフランスでこれだけ支持者を得たことに留意する必要があるでしょう。
こうしてふり返ってみると、
イスラム過激派による事件がいかに多いかが分ると同時に、植民地時代の残虐な扱いと、それらの国が独立したあとで移民として旧宗主国へ渡るも差別され続けた実体が、まざまざと思い出されます。
旧植民地国家は、いまでもまだキリスト教が最善の宗教だと信じ込んでいるかのようです。
そしてこれに呼応するかのように、イスラム教側でも、イスラム教が最善の宗教だ、と信じています。
もう手が付けられませんね。
一体どうすればこの世界の混乱をなくせるのでしょうか。
まずは実体を把握しなければならない、として、こういう特集を組んでみました。皆様が何らか考える材料になれば、望外の喜びです。
私の行動が何らかの役に立つとは思っておりませんが、普通のマスメディアのニュースを時々目にする程度では理解できないだろうと思って、こういうブログを続けております。1つの判断材料としていただければ、さいわいでございます。