ポジティブリスト制度の余波 5月18日

ポジティブリスト制度は、食の安心・安全の観点から大きな進歩ではあるが、農産物直売所、所謂「朝市」に思いのほか大きな負担をかけているようだ。農村地帯の国道沿いによくある農産物直売所は、少数多品目の野菜を栽培する地域の小規模農家からの出荷が大半で、多くが出荷する農家の奥様方によって運営されている。朝一番の採れたての野菜を、格安に手に入れることが出来る直売所は、周辺都市部の住民には大人気だ。

ポジティブリスト制度が導入されると、当然、これらの直売所に出荷される農作物についても、残留農薬の濃度が問題になる。新鮮さにかけては天下一品だが、直売所に出荷される野菜であっても農薬を使用していたり、近隣農家による飛散被害を被っている可能性はある。野菜が違えば使用する農薬の種類も異なるため、少数多品目を栽培する小規模農家にとっては、ポジティブリスト制度に呼応した残留農薬の自主検査は、消費者の信頼を損なわないためにも重くのしかかる課題だ。

サンプル一点につき、自主検査の費用は2万円だ。例えば、キャベツ・じゃがいも・人参・キューリ・ナス・たまねぎと6種類の野菜を出荷すると、それだけで12万円もの検査費用が自己負担となる。仮に複数の農家で分担するとしても、決して軽い負担ではない。輸入品や大規模農家への規制強化には大きく貢献するポジティブリスト制度が、地産地消の象徴的存在である「朝市農家」には、義務ではないが消費者からの信頼を損なわないために重くのしかかる可能性があるのだ。

今回のポジティブリスト制度では、保健所が行う公的検査で違反が発覚した場合にのみ回収が義務付けられ、自主検査や民間の検査システムにより基準値以上の残留農薬が検出されても、回収の対象にはならないという矛盾がある。更に国土の狭い我が国では、ドリフト被害にあいやすい国産品のほうが、輸入農作物よりも回収される確率が高くなりかねない恐れがあるのだ。何より、この期に及んでも尚、個々の生産者に、ポジティブリスト制度が周知徹底されていないという不安がある。彼の有名な農家のお嫁さんブロガーも、ポジティブリスト制度が始まることを知らされていなかったくらいだ。ポジティブリスト制度が、輸入農作物よりも国産農作物を不利に追い込むことになってしまっては本末転倒だ。PSE法のように経産省の怠慢と言われないように、所管である厚労省と生産農家を所管する農水省は、残された時間、周知徹底に全力投球すべきだ。

ポジティブリスト制度の締め付けから逃れる方法が、唯一つだけある。農薬や化学肥料を使わない農業に取り組むことだ。農薬使用の履歴のない農作物から残留農薬が検出されれば、それは明らかにドリフト被害ということになる。農薬を使用しないことが、販売禁止に追い込まれない最大の防御となるのだ。ポジティブリスト制度の導入が、結果的に、環境保全型農業への転換をもたらすことになれば、農薬使用を前提としたこの制度も、食の安全に大きく貢献することになる。

ポジティブリスト制度に振り回されるリスクを負うか、コストアップはしても環境保全型農業に切り替えるかは、農家の選択だ。しかし、どちらが持続可能な好循環型社会につながる農業かは明らかだ。農薬使用を大前提にするポジティブリスト制度が、結果として、日本の農業全体を、環境保全型農業へと牽引する第一歩になるのなら、制度の導入はこれ以上ない大きな成果を挙げることになるのだ。
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グレーゾーン金利の撤廃 5月17日

強引な取立てで業務停止命令を受けたアイフルの影響で、ここ何日かは時間帯による規制がかかったものの、今やテレビコマーシャルは、外資系保険会社と消費者金融とが席巻している。中でも消費者金融各社は、チワワやグラビアアイドルなど親しみやすいキャラクターを起用して、取り付きやすいソフト路線で集客を狙う。所謂「サラ金」からイメージする暴力的な取立て風景とは似つかないそのCMに、コロリと惑わされ、本来、返済能力のない人までもが気軽に借りるケースが激増した。しかし、現実はそんなに甘くはなく、テレビCMの印象とは裏腹に、30%近い利息によって借金は雪だるま式に増えていくのだ。

貸金業を規制する法律には、「貸金業関連3法」と通称される「貸金業規制法」「出資法」「利息制限法」の3つがある。議員立法である「貸金業規制法」は、過剰貸付の禁止など主に業務面を規制するもので、立入検査や業務停止・登録取消しなどの行政処分や一定の刑罰規定が設けられている。一方「出資法」は、貸金業者の上限金利を29.2%と定めるもので、「利息制限法」の上限(元本10万円未満は年率20%、元本10万円以上100万円未満は年率18%、元本100万円以上は年率15%)を超えて支払った場合、それが債務者の自由意思で支払われたと認められる場合にのみ(みなし弁済)、例外としてその上限である29.2%の金利が合法とされる。

法務省と金融庁とが管轄する「出資法」には罰則規定があるが、法務省のみが所管する「利息制限法」に罰則規定はない。しかし裁判で争えば、グレーゾーン金利を悪用してきた貸金業者は、負ける。最高裁でも、「利息制限法を超えた金利分は、元本の返済にあたる」とする解釈が定着し、1月には、利息制限法と出資法との間の「グレーゾーン」を認める条件を大幅に制限する、厳しい判決が下ったばかりだ。これを受けて、金融庁の「貸金業制度に関する懇談会」は、グレーゾーンの撤廃に向けて前向きに動き出した。

グレーゾーンの撤廃には、常識的に考えて「利息制限法」に一元化することが妥当だが、リスクのある人には貸せなくなるとして貸金業者は反発する。しかし、消費者金融の最大の問題点は、返済能力のない人にまで貸している点だ。合法な貸金業から借りられないとなると、違法なヤミ金に走る人が増えると貸金業者は主張するが、例えば、どうしても病院に行くお金が必要で借金せざるを得ないような人に対しては、公的な扶助を用意すればよいのだ。それが社会のセーフティネットというものだ。例えば、たとえ民営化されても公的要素の高い郵便局が、不動産担保ローンや年金担保ローンサービスを提供することが、最も望ましいのではないかと私は思う。郵便局は、完全民営化されても公的セクターが1/3は株式を有し、中立性を保ち、郵便局にしか出来ない社会的使命を、その後も果たしていくことが必要なのだ。

2004年3月末時点で、貸金業界の貸付残高は、46兆8千億円(うち消費者向けは19兆6,500億円)という膨大な金額だ。ひとえに、グレーゾーン金利が悪用された結果である。グレーゾーンが撤廃されれば、人生を棒に振らずにすむ消費者は沢山いるはずだ。2006年3月期連結決算で、大手4社が公式に発表した、利息制限法の上限金利を超える「過払い金」の返還額と返還に備えた引当金の合計額は1,507億円だが、公式に発表されないプール金が、闇社会の資金源になっていることも十分に考えられる。貸金業界から政治献金を受けとる自民党議員などが存在する影響で、これまで業界に対しては、様々な抜け道が用意されてきた。しかし、常識を逸脱し、借り手の人生を破壊するような強引な取立てが横行する事実がある以上、政治は借り手に対して、救いの手を差し伸べなければならない。違法な取立てには、「消費者団体訴訟制度」による差し止め請求を行えるよう、速やかに法整備を進めていくべきだと、私は思う。
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またも香港で、骨付き肉発覚! 5月16日

香港で、またまた、骨付き米国産牛肉が見つかった。3月、4月に続いて今回で3度目だ。過去2回とも香港政府は、骨ではあるがSRM(特定危険部位)ではないとして、輸入元のパッカーとの取引きのみの停止という寛大な措置をとってきた。それに甘んじてか、どこまでも杜撰な米パッカーにはあきれるばかりだが、問題の本質は、パッカーを十分に指導できない米農務省の姿勢にこそあることは明らかだ。

今回、香港に骨付き肉を輸出したカリフォルニアの「Harris Ranch Beef Company」も、過去2回のパッカーと同様に、日本への輸出認定を受けているパッカーだ。これほどたて続けに骨付き肉が発見されると、米パッカーをまったく信用できなくなるが、日本や香港のリクエストに応えられないパッカーを米農務省が施設認定していること自体、重大な約束違反ではないか。香港での事例は、「EVプログラム(日本向け輸出プログラム)」が、事実上有名無実化していることを如実に物語っている。米国の約束は、いい加減極まりないのだ。米農務省は、BSEに関する日本との協定を、パッカーに遵守させることが出来ないのだ。

米国産牛肉の輸入再開に慎重だった食品安全委員会プリオン専門調査会のメンバー6名の突然の辞任は、ここまで来ると無理もないことがわかる。日本でどんなに議論を重ねても、米国は、日本の要請や意見を傾聴しないどころか、米国流のやり方を押し付けようとするのだ。日本政府は、米国に対して結局は弱腰で、たとえプリオン専門調査会で真剣な議論がなされたとしても、それは「輸入再開ありき」という大前提のもとでの、単なる通過儀礼のようなものでしかないのだ。

米国の食肉加工処理施設で働く従業員の多くは、ヒスパニックや不法移民の人たちだ。中南米などから渡ってきた彼らの中には、英語をまったく話せない人も数多く存在する。そのため、SRMの除去方法などのEVプログラムの内容が、実際には現場の従業員に正しく伝えられていない可能性が極めて高いのだ。それを十分に承知している米農務省こそ、確信犯なのだ。明日から始まる日米専門家会議では、一歩も譲らぬ強い姿勢を、日本政府は貫けるだろうか。飼料規制が強化され十分なサーベイランスが拡大・継続されないのなら、輸入再々開を日本の消費者に説明できないと、政府は強く主張しなければならない。

変異型クロイツフェルト・ヤコブ病が集団発生した競馬場のレストランを、競馬場もろとも解体して事実を隠蔽する米国を、そもそも信頼することなどできないのだ。共産党独裁国家である中国と、強力な業界政治国家である米国とは、政治的に弱い立場にある消費者の声が政府に届かないという点で、一致している。食の安心・安全の見地からも、日本は輸入に頼らない食糧確保に、真剣に取り組む必要性があるのだ。

カロリーベースで食糧の6割を輸入に頼る日本では、その一方で、毎日大量の食品が食べずに捨てられている。コンビニでは、売上の2~3%の食品が毎日廃棄処分されている。農業と水産業との生産額を合わせた11兆円にほぼ等しい額の食品が、食糧を輸入していながら毎年捨てられていくのだ。地球上の約半数の人々が、十分な栄養を摂ることができない一方で、私たち日本人は、不必要な食糧を大量に輸入して、「飽食」という愚かな行為を平気で行っているのだ。

知財戦略の一環で、日本の農水畜産についても、「ジャパンブランド計画」が進められようとしている。日本の農家が、農薬や化学肥料に頼った農業から脱皮して、確固たる安心・安全が保障された質の高い農業にシフトしたとき、消費者と生産者との信頼関係は初めて構築される。コストが価格に反映されても、消費者は健康への投資として受け入れることができる。WTOに対しても、世界の公衆衛生の観点から、健康を阻害する恐れのある食糧は輸入できないと、堂々と主張できる日本でなければならないのだ。

ポジティブリスト制度は大きな進歩ではあるが、中途半端ではなく徹底して有機農業や有機酪農にこだわることが、日本の農業や畜産業が生き抜く、最後の手段だ。例えば、都市の生ゴミを農村部の田畑に返してやると、その土は見事に生き返り、健康な農作物を生産する。都市と農村との好循環が実現したとき、所得補償政策が生きる自立した農業が実現できるのだ。もとより、日本の消費者はリスクの高い米国産牛肉を必要とはしない。日本の農業の将来展望と食糧自給率の増加は、米国や中国の圧力に屈しないゆるぎない食糧政策の柱を、日本政府が打ち立てることが出来るかどうかにかかっていると、私は思う。
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ポジティブリストは絶対か!? 5月15日

「農薬には、そもそも残留基準がある。生産する側がそれを守れば、残留など問題ない。」これは、全国消費者団体連合会事務局長の発言だ。今月29日にスタートする残留農薬の規制強化を狙った「ポジティブリスト」がフィルターになれば、これからは安心して農薬が散布された食材を食べられるとも受け止められかねないこの発言は、やはり、消費者に誤解を与える発言だ。

これまでのような、基準が設けられた農薬だけを対象とするネガティブリストと比較すると、ポジティブリストは、確かに大いなる前進だ。ポジティブリスト制度では、ペットフードや飼料添加物も対象とし、残留農薬が一定の基準を超えるか、基準の定められていない農薬については0.01ppm以上検出された場合に、販売禁止措置がとられる。農作物から加工食品まで、すべての食品が対象となるため、仮に原料の茶葉に基準値以上の農薬が検出された場合には、コンビニに並ぶペットボトルのお茶であっても、販売禁止の措置がとられることになるのだ。現行のネガティブリストが283品目の農薬を対象としているのに対して、ポジティブリストでは、全世界で使用されている農薬を殆ど網羅する799品目が規制の対象となる。

指定外の農薬に適用される0.01ppmという濃度は、水深1m・幅12m・長さ25mのプールに、塩ひとつまみ(3g)を溶かした程度の濃度だ。僅かなようだが、これで害虫は死滅するのだ。農薬は、体内に蓄積して、人体に様々な悪影響を及ぼす。ポジティブリストの導入は、これまでのザルに近かった規制の相当の強化に違いないが、安心・安全の保障では決してない。

ポジティブリスト導入によって、農家が最も恐れているのは、「ドリフト被害」と呼ばれる飛散による被害だ。近隣の田畑で使用する農薬が、不幸にも飛び散ってくるケースだ。風向きの関係というよりも、その場合、農薬を散布した農家の杜撰な散布方法に問題があることは明らかだ。加害者である農家は、まさに「生産者は絶対に食べない」出荷専用の農作物を生産しているとみなすべきなのではないか。

ポジティブリストをして、「農薬に関しての食の安全は担保された」とする日本生活共同組合連合会理事の発言は、あまりにも短絡的だ。更に、「昔のような農薬=悪との判断は誤りで、生産者に必要以上の負担を与えかねない」とする消費者団体連絡会事務局長の弁は、それこそ消費者に誤解を与えかねない発言だ。たとえポジティブリスト制度をクリアしても、無農薬や有機栽培の農作物のほうが良いに決まっている。野菜本来の味を逃さない無農薬や有機栽培の野菜を食べつけると、農薬を使用している野菜は、正直まずくて食べられない。何より、農薬や添加物は、アトピーやアレルギーの主要なリスクファクターに他ならないのだ。

5月29日を前に、農家は戦々恐々としている。ポジティブリスト制度の導入は、農家の社会的責任を明確するには良いきかっけとなる。生産者には、生産者自身が安心して口に運べる農作物を、消費者に提供する責任がある。実際、無農薬や有機栽培の農業に取り組む農家は非常に前向きで、インターネットを通した産直販売にも積極的だ。農薬に頼らない農業は、コストもかかり農家の苦労も半端なものではない。しかし、健康な農作物でなければ、消費者に健康は与えられないのだ。法律は、国民の意識を超えたものにはなりえない。60兆の細胞をつくる「食」に対して、安心・安全を求める厳格な姿勢を貫くことは、日本の足腰を強くする原動力になることを忘れてはならないのだ。
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医食同源 5月14日

90年代のバブルの頃には、連日連夜の暴飲暴食が引き金となった生活習慣病やその予備軍の人々で、病院の待合室は混み合った。食事療法が出来ないことが前提にされ、基準値よりもちょっぴり高いだけで投薬され、生活習慣病用薬は飛ぶように処方されていった。中でもコレステロール値が高いと心筋梗塞の恐れがあるとして、治療というよりもむしろ予防を強調した抗コレステロール薬の投薬が日常的に行われ、結果、都心の一等地に製薬会社の立派なビルが建ったことはいまだに語り草だ。

単独で服用している限り大きな副作用の心配のないコレステロールの薬は、製薬会社にとっても医療機関にとってもいわばドル箱だ。バブル当時は、景気の良い企業は社員の健康診断にも積極的で、健康診断という正当な儀式を通して、患者が量産されていたとも言える異常事態に陥っていた。そんな時代を経て、気が付けば日本の医療費は莫大な金額に膨れ上がり、日本の財政の今や足を引っ張る有様だ。最近になってようやく、人間ドックで行われる一部の検査について、その有用性が議論されるようになり、厚労省はメタボリックシンドローム(不健康な生活習慣による内臓脂肪型肥満に加え、血中脂質・血圧・血糖が高い状態)に着目した健康診断の見直しを始めている。患者にとっても負担のかかる、本当は意味のない不必要な検査を、今後は避けるためだ。

日本人を対象にして、心臓病とコレステロールなどの血中脂質との関係を追跡したメガスタディ(大規模調査)が、昨年初めてまとめられた。高脂血症患者7,832人のうち、心筋梗塞や狭心症を発症した人の数は、食事療法と同時に高脂血症薬を併用していた群で66人、食事療法だけの群で101人だ。高脂血症薬を併用すると、心筋梗塞や狭心症などを発症するリスクは33%減、心筋梗塞に限ると48%も減少したと製薬会社は息巻くが、データを解析した大橋靖雄東大教授によれば、心筋梗塞を発症したのは、1年間の発症件数に換算すると薬の投与群で1,000人あたり0.9人、食事療法だけの群で同1.6人と大差はなく、119名が5年間継続して薬を服用して、心臓病が発生するのをたった1人防ぐことができたにすぎないということだ。

コレステロール値が基準値を超えると、心臓病のリスクが高まることは事実だが、即、投薬治療に結びつけることは患者負担の観点からも推奨できるものではない。リスクマネジメントとして、患者に受け入れられやすいメタボリックシンドロームは、医療機関や製薬会社にとっては「金のなる木」だ。しかし、これまでのようにやたらめったら投薬すれば良いという時代では、もはやなくなっている。多くが不健康な生活習慣の代償である本症候群は、その治療については自己責任で行うことが本筋だ。耽溺病であるにもかかわらず保険適用されることが、生活習慣の改善を遅らせる最大の要因になっている。

命をつなぐ「食」への意識が、現代は極めて希薄だ。便利食は、往々にして脂肪分が高い。合わせて、添加物や農薬にまみれたそれらの食品は、私たちに健康をもたらしてくれるとはとても言い難い。仮に、便利食で「時間」が買えたとしても、健康はお金で買えるものでは決してない。生活習慣を改善するか、耽溺におぼれ健康食品や薬漬けの人生を送るかは、勿論それぞれの選択だ。常識的に考えて、製薬会社と医療機関とは一蓮托生。自ら率先して「ありがたい患者様」に成り下がることほど、馬鹿げた話はない。口にした食品が、私たちの健康を左右する。間違った食品を口に入れてはいないか、もう一度考え直してみる必要がある。

厚労省は、40代以上の男性の半数が予備軍も含めメタボリックシンドロームであると発表した。勿論、男性ばかりではない。医食同源、即ち、食へのこだわりで健康は維持できる。諸刃の剣である医薬品には、可能な限り頼るべきではない。地産地消で出来る限り無農薬・無添加の食材にこだわることは、社会に健康をもたらすと同時に第一次産業をも活性化する。持続可能な好循環型社会の実現こそが、社会の様々な問題を解く、最大の決め手となるのだ。
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白米千枚田の田植え 5月13日

石川県輪島市にある「白米(しろよね)千枚田」で、300人のボランティアによる田植えが行われた。「白米千枚田」は、1,004枚もの田んぼが幾重にも重なって美しい幾何学模様を織り成す、国が指定する名勝だ。日本の棚田百選にも選ばれている。

形がいびつなため、農業機械を入れることが出来ずすべて手作業で行わなければならない棚田には、高齢化と後継者難のため休耕田が目立っていた。海岸に面するこの棚田があまりにも絶景で象徴的であったため、1992年、輪島市と農協の呼びかけで、ボランティアによる田植えが始まったのだ。景観の保全のみならず、生産や水源涵養など田んぼの多面的機能が県内外のボランティアによって維持されることの意義は大きい。田植えや稲刈りを一度でも体験した人々は、その後の人生で農業の重要性を忘れないだろう。

能登半島の北端に近い日本海沿岸に、白米千枚田はある。そこから眺める日本海に沈む夕日は、筆舌に尽くしがたい美しさだ。観光スポットになり得る棚田は、全国からボランティアが集まり荒廃しないように手が尽くされるが、多くの急傾斜地や中山間地域の耕作不利地の田んぼはそうはいかない。カロリーベースで60%もの食糧を輸入に依存する日本では、農業は進歩発展する職業にはうつらない。環境保全の観点から、WTOが認める「緑の政策」を基本にした農業戦略を、政府が打ち立てることが出来るかどうかに、日本の農業の浮沈はかかっている。

近年、都道府県が導入を始めた「環境税」の本来の意義が、納税者に正しく理解されているといえるだろうか。特に作業の厳しい中山間地域の農業の実態を知らずして、税金だけ支払っても納税者に緑を守る意識が芽生えることは、決してない。白米千枚田のように、田植えや稲刈りのボランティアを県内外に募ることは、農業への理解を広く求めることに大きく貢献する。一度でも田植えを経験した人は、その新鮮な体験に驚き、その後の人生においても農業への認識は高まるものだ。

最初の入り口は、観光気分のボランティアで良い。自分の植えた稲を、秋には自分で収穫し味わう醍醐味を、多くの人々に経験してもらいたい。間違いなく、農業と食への意識が、新たに芽生えるはずだ。

白米千枚田の田植えの映像に、しみじみ心が熱くなった。

ご覧ください→白米千枚田

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大豆イソフラボン 5月12日

今やドラッグストアだけでなく、コンビニやキオスクまでもがサプリメントをずらりと並べる時代になった。CoQ10やヒアルロン酸は、爆発的なヒット商品だ。しかし、3度の食事に自信のない人々がお守りのようにすがるサプリメントに、果たしてどれほどの効果が期待できるのだろうかと、私はいつも疑問に思う。医薬品であれば、体内でどのように代謝されどういう効能効果があらわれるのか、主作用・副作用ともに緻密に精査され、高いハードルを超えたものだけが承認され世に出てくるが、俗に言う「健康食品」にそれはない。害もないかわりに、そのまま排出されているものも少なくないのではないかと疑いたくなる。

このほど食品安全委員会・新開発食品専門調査会は、「大豆イソフラボン」を含む特定保健用食品について、安全な1日摂取量の上限を30mg(大豆イソフラボン配糖体のアグリコンの量で換算)とする最終評価案をまとめた。通常の食事も含めた大豆イソフラボン(アグリコン)の1日摂取量の上限を70~75mgとし、食事以外に追加摂取するサプリメントなどの特定保健用食品の上限を30mgと定めたのだ。

大豆100g中に大豆イソフラボン(アグリコン)は平均140mg含まれるが、そもそも大豆イソフラボンは、体に必要な栄養素には指定されていない。それでも美肌などの女性ホルモン様作用を期待して、大豆イソフラボン含有食品は、飛ぶように売れていく。大豆イソフラボンは、化学構造が女性ホルモンのエストロゲンに酷似し、体内で大豆イソフラボンアグリコンに変化して、促進的あるいは競合的に骨粗鬆症・更年期障害あるいは前立腺ガンや乳ガンの予防作用を発揮すると考えられている。しかし、過剰摂取により、ホルモンのバランスが崩れたり、逆にガンを誘発する可能性もあることから、食品安全委員会は慎重な検証を重ねてきた。

平成16年に特定保健用食品としての許可申請された3品目「イソフラボンみそ」「オーラツヘルスタブレット・カルシウム&イソフラボン」「大豆イソフラボン40」について健康影響評価を行った食品安全委員会は、日本では過去に大豆イソフラボンを濃縮強化して摂取した経験がないことから、英・米・仏などの検討状況も踏まえ検討を重ね、大豆イソフラボン(アグリコン)の健康影響発現量を150mg/日摂取(閉経後女性が、大豆イソフラボン150mg錠を服用。60ヶ月時点で子宮内膜増殖症発症の割合が有意に高かった。)と定め、その1/2の70~75mを1日の安全な摂取量の上限とし、日常の食事を加味して、特定保健用食品である大豆イソフラボン(アグリコン)の上限摂取量を30mg/日と定めるに至ったのである。

妊婦及び胎児においては、動物実験で有害作用が報告されていることと、大豆イソフラボンのトポイソメラーゼII阻害作用(転座や再配列等の変異など遺伝子の異常)に鑑み、乳幼児及び小児においては、その生殖機能が未発達であることを考慮し、いずれも特定保健用食品として大豆イソフラボンを通常の食事に上乗せして摂取することは推奨できないと結論付けた。

どんなものでも、過ぎたるは及ばざるが如しで、摂り過ぎは禁物だ。大豆イソフラボンについては、生体内での作用をなまじ有するが故に、健康影響評価がなされ上限値が定められることとなった。逆に言うと、上限値が検討されないサプリメントの有用性の真偽のほうが、よほど問題なのではないだろうか。

日本人の食生活に欠くことのできない「大豆」に含まれる大豆イソフラボンについて、国が正式に健康影響評価を行った意義は大きい。次は是非とも、正式に食品安全委員会の場で、「錆びた脂」である牛乳の有害性についても検討をして欲しい。小児のアレルギーの増加など牛乳による健康阻害は、看過できる余地を既に超えている。

旬の食材をバランス良く取り入れた手料理が並ぶ食卓を、家族が笑顔で囲めば、これ以上の良薬はない。健全な食卓に、サプリメントは必要ない。もとより、「毒にも薬にもならないもの」を摂取する必要性など、まったくない。どんなものを摂取するかで、60兆の細胞の行方は決まる。ガン対策の中心は、ガンにならない食生活の勧めでなければならないのだ。どういう食を選択するかで、その人がどんな生き方をするかが見えてくる。大豆イソフラボンに上限値を定めることは、私たちが求める真の食育への第一歩だ。私たちは、口にするすべての食品について、その功罪を噛みしめながら食べていかなければならないのだ。
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若年性認知症とヤコブ病 5月11日

認知症といえば、物忘れや徘徊・暴力など高齢者特有の脳神経疾患を思いがちだが、近年、若くして同様の症状があらわれる「若年性認知症」の患者が増加し、ひとつの社会問題になってきている。18歳から64歳までに発症した認知症の総称を「若年性認知症」と呼び、高齢者の場合と同様、アルツハイマー・脳血管障害・頭部外傷など、その原因は様々だ。推計では、10万人当たり40人程度の発症率であるとされ、全国に数万人レベルで存在するとみられている。

65歳以上の高齢者の痴呆も急激に増加し、2000年には高齢者の7%が認知症であり、2010年には高齢者の8%・2030年には9%が認知症を発症すると厚労省は予測している。不十分とはいえ、介護保険制度が適用される65歳以上の場合はまだ救いの手はあるが、「老化が原因である」と診断されない場合の「若年性認知症」をかかえる家族の暮らしは、物心ともに壮絶を極める。

日本でも「アリセプト」という名のアルツハイマー治療薬が保険適用されているが、その効果は限定的で、病気そものもを治すものではなく、患者に漫然と投与し続けることには、疑問が残る。きっかけがはっきりしている脳卒中や外傷を除き、問題は、認知症の発症メカニズムの解明が、遅々として進まないことにある。

欧米でも、認知症患者は近年急増し、患者と家族に対する支援体制が強化されているところだが、興味深いのは、米国では、急増する認知症は、アルツハイマーではなく、実は、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)などのプリオン病ではないかと疑われている点だ。プリオン病は、脳に異常なタンパク(プリオン)が蓄積し、脳神経細胞の機能を阻害し、異常行動や歩行障害・痴呆などが特徴的な症状で、痙攣発作を繰り返し、次第に自発運動がなくなり、発病後は1~2年以内に全身衰弱・呼吸麻痺・肺炎などで死亡する。プリオン病の発症後の進行は早いが、認知症の一つなのである。

不可逆的な致死性神経障害を生ずるプリオン病の大半を占めるのが、CJDの中でも「孤発型」と呼ばれるタイプのもので、日本でも毎年100~120名の患者が発生している。孤発型CJDに地域差はないが、男性より女性にやや多く、発症年齢は平均63歳だ。BSE感染により発症する変異型CJDとは異なり、原因は不明だ。

「若年性認知症」との診断は、患者やその家族にとって受け入れがたいものだ。他の疾患と比較して、なかなか第三者に口外できるものではない。そして、科学的エビデンスに乏しい認知症は、詳細な判定が、実は容易ではない。

老年性痴呆でない進行性痴呆であって、痙攣発作・錐体路または錐体外路症状・小脳症状または視覚異常・無動性無言の4項目のうち2項目以上の症状を示し、脳波に周期性同期性放電を認める場合、孤発型CJDとほぼ確定されるが、CJDのなかでも、BSE感染による変異型CJDの確定診断となると、患者が死亡した後、WesternBlot法などにより脳組織から異常タンパクを検出することが必要だ。確定診断を受けていない「若年性認知症」様症状の中には、アルツハイマーもあれば、その気になって調べればCJDである可能性も、実は秘められているのだ。

変異型CJDを発症した英国の13歳の少女の映像は、非常に衝撃的だった。米国でも、テキサスの小さな村で、同じ競馬場に行ったことのある人々が、次々と変異型CJDで死亡した。日本でも、BSEが大きな社会問題になる以前に感染した人が居ても、決して不思議ではない。原因不明の急増する「若年性認知症」の一因として、CJDを否定することはできないのだ。

米国は、全頭検査を拒否したり、飼料規制も杜撰だったり、疑惑の競馬場を解体抹消したりして、BSEや変異型CJDをむしろ隠蔽する傾向にあるが、米国で激増する認知症の中には、CJD患者や変異型CJD患者が多く存在する可能性があるのだ。日本で増加する「若年性認知症」についても、何が原因なのか、特に食生活の面からの科学的な追究を急ぐべきなのではないかと、私は思う。
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後藤組組長逮捕は、安倍包囲網か 5月10日

山口組系後藤組組長と菱和ライフクリエイト西岡進社長との逮捕は、一体何を意味するのだろうか。電磁的公正証書原本不実記載・同供用容疑が、本来の逮捕目的だとはにわかに信じがたい。後藤組といえば、「オン・ザ・エッジ」を東証マザーズに上場させた頃からホリエモンとただならぬ関係にあることは、つとに有名。ホリエモンの保釈とほぽ同時期の逮捕であるだけに、様々な憶測を呼ぶ。

ホリエモンと後藤組との付き合いは長いが、ホリエモンは昨年、住吉連合のフロント企業であるダイナシティを傘下におさめている。東西にまたがり、ホリエモンは闇社会とのつながりを深めていったのだ。ところが、ホリエモンに対する容疑は、ライブドアの風説の流布・偽計と粉飾決算にとどまっている。ダーティな組織や政界への資金の流れについては、検察は権力に対して起訴することができなかったのだ。本当の「本丸」に踏み込むことなく保釈され、公判前整理手続きにより短期間で結審するホリエモンの裁判は、ホリエモンの持つ闇社会への影響力のほんの一握りにすぎないのだ。

菱和ライフクリエイトの西岡進社長は、自身の逮捕を果たして予測していただろうか。予期せぬ逮捕であれば、物証を押さえることができるかもしれない。逮捕を常に意識してきた後藤組からは、捜査に有益な情報が出てくるとは思えない。

この時期の逮捕は、政界への波及も考えられる。西岡進社長は、あの「安晋会」の事務局長格であるゴールドネット杉山敏隆氏と、懇意な関係にある。「安晋会」と言えば、安倍晋三官房長官の事実上の後援会。今回の逮捕は、反安倍勢力による安倍包囲網の一環と捉えるべきなのかもしれない。闇社会とつながりのある人物が、日本の総理大臣にふさわしいとは思えない。そんな人物が総理になったら、日本をどんな国へと導いていくだろうか。マフィアが支配する社会になりかねないのではないか。

アメポチで狂的な小泉総理の暴走を止められなかった責任は、先の総選挙が物語るように国民にもある。一方で、「フロント政治家」を総理大臣にしない責任も、国民にある。後藤組組長と菱和ライフクリエイト西岡進社長の逮捕は、総裁選を控え、司直による国民への大いなる警鐘だ。闇社会が闇でなくなるとき、日本の民主主義は、間違いなく崩壊してしまうのだ。
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