ヒラリー・クリントン 4月30日

サミット前の小泉総理の訪米のお土産が、米国産牛肉の輸入再々開決定になりそうだ。ブッシュ大統領は、横田めぐみさんなど拉致被害者の救出支援と引き換えに、米軍再編費用3兆円と牛肉の輸入再々開とをセットで小泉総理に強く求めてくるに違いないからだ。小泉総理が、ブッシュ大統領の要求にコロリといっちゃうことは目に見えている。横田早紀江さんの連邦議会公聴会での証言は、テレビを通してでも痛いほど胸に突き刺さる思いのこもったものだった。人権問題として、米国が拉致問題に協力することは無条件に当然のことだ。

全米食肉業界の代表が幹部にひしめき合う米国農務省は、今後、BSE検査をこれまでの1/10に縮小することを決定した。2004年6月以降約4,200万頭のうち70万頭を検査して、BSE感染牛は2頭に過ぎず、「米国が極めて健全な飼育環境であるかが証明された」とまで言い放つ始末。しかし、この発言が、いかにでたらめであるかは火を見るよりも明らかだ。

4月28日には、香港に次ぎ台湾でも、米国産輸入牛肉から背骨が見つかった。何度言ったところで、米国には、日本が要求するような適切なBSE対策をやる気はないのだ。そもそも米国は、変異型クロイツフェルト・ヤコブ病患者を多数出した競馬場のレストランを、競馬場ごと解体し抹消して完全に証拠を隠蔽してしまうような国なのだ。所得の高い消費者には、オーガニックミートが提供されるが、所得の低い庶民には、BSEリスクの高いローコストの肉しか提供されない。米国は、日本以上にダブルスタンダードだ。

今年は、米国は中間選挙の年だ。にわかに、2年後の大統領選挙に向けて、有力候補の名が挙がり始めた。世論調査でもダントツの人気を誇るのは、女性初の大統領を目指すヒラリー・クリントンだ。事実上、所得の高い人しか享受できない米国の医療制度を、根本から立て直し、低所得者でも必要な医療を受けられるように国民皆保険制度の導入に全身全霊をかけるヒラリーは、低所得者層のいわばジャンヌダルクだ。この先も、ヒラリー・クリントンなくして、米国の医療制度の改革は不可能だ。

弁護士でもあるヒラリーは、光と陰に二極化する歪んだ社会の是正に努めるはずだ。消費者の食の安全に配慮し、BSEによる被害者をこれ以上出さないために、徹底した飼料規制を行い日本並みの全頭検査の実施と正確なSRMの除去を実現し得る可能性の、最も高い大統領候補ではないかと思う。ビル・クリントンの最大の支持母体は、タイソンなどのパッカーだ。しかし、それと消費者の食の安全とは別次元であると割り切れる聡明さが、ヒラリーにはあると信じたい。米国の食肉加工工場で働く多くの人々は、ヒスパニックだ。ヒスパニックにとって、医療の皆保険制度は待ち望んでいたものに違いない。

ポスト小泉には、米国と対等の立場で話のできる人物が望ましい。小沢民主党代表ならば、それができると思う。生命を危険にさらすBSEの感染リスクを、徹底的に排除する努力を、この先も日本は米国に強く要求し続けなければならない。ヒラリーが大統領になったなら、世界の公衆衛生の模範となり、持続可能な地球であるために京都議定書も批准して、大国にふさわしいリーダーシップを発揮するよう、強く願わずにはいられない。
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