白米千枚田の田植え 5月13日

石川県輪島市にある「白米(しろよね)千枚田」で、300人のボランティアによる田植えが行われた。「白米千枚田」は、1,004枚もの田んぼが幾重にも重なって美しい幾何学模様を織り成す、国が指定する名勝だ。日本の棚田百選にも選ばれている。

形がいびつなため、農業機械を入れることが出来ずすべて手作業で行わなければならない棚田には、高齢化と後継者難のため休耕田が目立っていた。海岸に面するこの棚田があまりにも絶景で象徴的であったため、1992年、輪島市と農協の呼びかけで、ボランティアによる田植えが始まったのだ。景観の保全のみならず、生産や水源涵養など田んぼの多面的機能が県内外のボランティアによって維持されることの意義は大きい。田植えや稲刈りを一度でも体験した人々は、その後の人生で農業の重要性を忘れないだろう。

能登半島の北端に近い日本海沿岸に、白米千枚田はある。そこから眺める日本海に沈む夕日は、筆舌に尽くしがたい美しさだ。観光スポットになり得る棚田は、全国からボランティアが集まり荒廃しないように手が尽くされるが、多くの急傾斜地や中山間地域の耕作不利地の田んぼはそうはいかない。カロリーベースで60%もの食糧を輸入に依存する日本では、農業は進歩発展する職業にはうつらない。環境保全の観点から、WTOが認める「緑の政策」を基本にした農業戦略を、政府が打ち立てることが出来るかどうかに、日本の農業の浮沈はかかっている。

近年、都道府県が導入を始めた「環境税」の本来の意義が、納税者に正しく理解されているといえるだろうか。特に作業の厳しい中山間地域の農業の実態を知らずして、税金だけ支払っても納税者に緑を守る意識が芽生えることは、決してない。白米千枚田のように、田植えや稲刈りのボランティアを県内外に募ることは、農業への理解を広く求めることに大きく貢献する。一度でも田植えを経験した人は、その新鮮な体験に驚き、その後の人生においても農業への認識は高まるものだ。

最初の入り口は、観光気分のボランティアで良い。自分の植えた稲を、秋には自分で収穫し味わう醍醐味を、多くの人々に経験してもらいたい。間違いなく、農業と食への意識が、新たに芽生えるはずだ。

白米千枚田の田植えの映像に、しみじみ心が熱くなった。

ご覧ください→白米千枚田

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
« 大豆イソフラ... 医食同源 5... »