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消費者に利益をもたらすのか「電気用品安全法」 2月25日

平成11年に改正された「電気用品安全法」の施行後5年間の経過措置期限がいよいよ3月31日に迫り、中古品販売やリサイクルショップの営業に深刻な影響を与えることがわかってきた。この法律が改正され今日に至るまで、経産省による法律の周知徹底が不十分だったことは、ここへきてのドタバタ劇で十分すぎるくらい判明した。

PSEマークの貼付には製造事業者としての届け出ることが前提にあり、自主検査には数十万円もする測定器が必要になるため、事実上、ビンテージものの楽器や音響機器の販売が出来なくなるのではないかと、坂本龍一氏らがネット上で反対署名を行っている。庶民の強い味方、リサイクルショップが存亡の危機にさらされることにもなる。

対象製品一覧「特定電気用品(112品目)」「特定以外の電気用品(338品目)

電気用品の製造、輸入、販売等を規制するとともに、電気用品の安全性の確保につき民間事業者の自主的な活動を促進することにより、電気用品による危険及び障害の発生を防止する。」ことを目的とする本法は、販売事業者が「製造事業者」の届出をし、「外観・通電・絶縁耐力試験」の3つの要素を自主検査によりクリアしなければPSEマークを貼付できない。外観と通電は容易に判断できるが、絶縁耐力に関する試験には1台数十万円はすると言われる測定器が必要だ。経産省は、測定器の貸し出しを可能にしている点を強調するが、経産省の対応も後手後手で、測定器を貸し出すにしてもその要領を固めきっていないのが実態だ。

絶縁耐力試験を容易に行うことができないとなると、冷蔵庫や洗濯機など各種家電製品などリサイクルショップが扱う商品の種類が、間違いなく激減する。その結果、資源の循環がなされなくなった中古家電が街中にあふれ、野山に不法投棄される大型ゴミの量が一段と増加し、環境破壊を加速することになる。本法を看過する環境省にも、重大な責任があり、小池環境大臣は対応を明らかにすべきだ。

本法経過措置期間終了の半年前の昨年9月、学生時代以来一貫して環境政策に関心が高く環境省水環境部企画課長であった谷みどり氏が、経産省消費経済部長に就任した。谷氏は、2月1日本法の周知徹底を目的に個人でブログを立ち上げ情報発信を開始したが、予想外に多い非難コメントの嵐に、2月20日あえなくブログ閉鎖に追い込まれたようだ。

経産省は、チームマイナス6%キャンペーンの顔でもあり消費者寄りのイメージの強い谷氏を、あえて起用したのかもしれないが、谷氏がブログ閉鎖という行動に出てしまったことは極めて残念としか言いようがない。少なくとも経産省消費経済部長の責任として、電気用品安全法に対する国民の疑問に、谷氏は徹底的にこたえる義務があるはずだ。

安全に使用され流通していた製品を、あらためて数十万円の測定器を使用して絶縁耐力試験を行う必要性を、殆どの消費者は理解できない。その手間とコストによって、リサイクル品の価格がつりあがることを、誰も望まない。仮に、製造に起因する事故の可能性を秘めた製品が存在するとして、その安全性の確認を、何故、リサイクルショップが背負わなければならないのだろうか。第一、販売業者がただ単に「製造事業者」の届出だけをして、安全性の確認をどこまで立証できるのだろうか。素人が簡単に見分けられるような欠陥なら、そもそも製造業者そのものに問題がある。企業の怠慢のために、消費者やリサイクルショップにしわ寄せがくる本法は、素人の自主検査で「安全が保障」されるという点にも疑問があり、決して消費者の利益につながる法律だとは思えない。

本法が成立した平成11年当時、むしろ安全性の確保は後退するとしてこの法案に反対したのは、共産党だけだった。消費者の立場に立ち法案の問題点に気付く議員が民主党にいなかったことは残念だが、いよいよ経過措置期間が切れることとなり、川内博史議員が最後の踏ん張りを見せてくれている。少なくとも今週中には質問主意書が提出される予定だし、場合によっては委員会で質問に立つチャンスが回ってくるかもしれない。リサイクルショップを製造事業者とするのか。リサイクルショップにPL法をかぶせるのか。特許法との関連はどうなるのか。疑問は山ほどある。

ここへきて、日経新聞でさえ批判的な記事を掲載している。経産省は、法律の周知活動に関する努力不足を認め、中古品や更には修理業者の取扱については、少なくとも更に経過措置期間を延長すべきだし、できるならば、事前に法律の不備が明らかになったことを率直に認め、もう一度法律を見直しする決断を下すべきだ。製造業者が製品の安全を確保することは当然であって、そこに消費者やリサイクルショップを巻き込むこと事態、まったく理に叶わない。本法は中古品を否定し、強引に中古品を廃棄物にして新品を購入させようとする、製造業者寄りの不当な法律といえる。

坂本龍一氏らも立ち上がり、レコード輸入権の時の盛り上がりと様相が似通ってきた。坂本氏らが呼びかけているネット署名に、一人でも多くの人が参加されることを期待する。既に4万人近い人々の署名が集まっている。消費者の意思の反映こそが民主主義の大前提であり、法律の不備に気付いた以上、国会で再検討されることが必要だ。その気運を高めていくのは、紛れもなく私たち消費者である。まだまだ間に合う。積極的に声をあげていかなければならない、と思う。

参考経産省「電気用品安全法のページ」

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