「糖みつ飼育若姫牛」の怪 2月8日

今日の衆議院予算委員会での民主党・川内博史議員の質問に対し、小泉総理は「米国に対して、鶏や豚の飼料に牛の肉骨粉を使用しないよう、規制の強化を求めていく」とついに言明した。川内議員の粘り勝ち。一歩も二歩も前進した小泉総理の答弁だ。

11月18日の日米首脳会談にあわせて、12月12日の輸入再開決定と、その後の現地調査が決まっていたことは紛れもない事実で、川内博史議員の質問主意書への政府答弁書通りには事態は進行しなかった。しかし、この際、そのことは二の次だ。中川農水大臣の首をとれば、BSE問題が解決するわけでもない。米国畜産業界の、レンダリングを容認する飼料規制の甘さが最大の問題であって、輸入再開を前提とする以上、与野党あげて米国の飼料規制の強化を求めていくことが最も重要なテーマなのだ。

小泉総理は今日初めて、米国の飼料規制の甘さを認めた。本来草食動物である牛が、牛の肉骨粉が混入した鶏糞や鶏舎のゴミ(肉骨粉の残骸)を食する異常を、小泉総理も認識したのだ。あらゆる資料を読みこなし、日本の国会議員の中でBSE問題に関しては最も詳しい川内議員の今日の質問は、政府のBSE対策に一石を投じるものだった。質問終了後、元農水大臣の大島予算委員会委員長が、直接川内議員に電話をしてきて、川内議員の勉強ぶりを褒め称えたそうだ。政府も野党も目的はただ一つ、私たち日本国民の食の安全の確保なのだ。

日本版ニューズウイークも報じている通り、米国の消費者もレンダリングが許されている米国の飼料規制の甘さに不安を感じている。ただ現状では、一介の主婦がどんなに声をあげても、「農産物名誉毀損法」という奇妙な法律が現存する米国では、権力と一体の畜産業界の力のほうが強い。しかし、米国マクドナルド社でさえ、FDAに対して意見表明したように、米国民も、肉骨粉を飼料としたレンダリングを容認する畜産業界の杜撰な安全管理に、警鐘を鳴らし始めているのだ。

今日の川内議員の質問によって、「米国の牧畜の最大の問題点は、飼料規制の甘さにある」という点で与野党の認識が一致した。従って、仮に再び輸入が再開されようとも、飼料規制がなされ肉骨粉が禁止されない限り、科学的に安全な牛肉と言えるには程遠いままなのだ。

昨年2月民主党の山田正彦議員は、「ショートプレート」通称「吉野家カット」と呼ばれる輸入牛肉について問題提起している。ショートプレートとは、加工の段階で廃棄される米国民は食べない捨て肉の部分なのだが、まさに吉野家の牛丼の上に乗っかっているのが、このショートプレートなのだ。米国の捨て肉を、日本では一部の消費者が、「吉ギュー」ともてはやし好んで食していたわけだ。

何故「吉ギュー」は、脂がのっていて美味しいと感じるのか、その秘密を知れば更に驚く。吉野家は、米国のタイソンというパッカーを通して、「糖みつ飼育若姫牛」と称する牛のショートプレートを輸入していた(る)。「糖みつ飼育若姫牛」とは、糖みつをかけ食べやすくした鶏糞を飼料とした牛で、糖みつのせいで脂肪分を多く含むしもふり肉だ。まさに「吉ギューの吉ギューによる吉ギューのための牛肉」なのだ。肉骨粉タップリの鶏糞を飼料とした牛の肉が、吉ギューの正体なのだ。それでも吉ギュー食べる???

この「糖みつ飼育若姫牛」に迂回輸入の疑惑があると、山田正彦議員は指摘している。糖みつ飼育若姫牛は米国産であるにもかかわらず、メキシコ産と産地を偽装して日本に輸入されていた(る)可能性があるのだ。日増しにBSEが日本でも大きな社会問題となる中、一貫して1日も早い米国産牛肉の輸入再開を訴え続けていたのが吉野家だ。吉野家が、米国産牛肉禁輸期間中も、他の牛丼チェーンのように豪州産に切り替えることをしなかった理由は、その名も怪しい「糖みつ飼育若姫牛」にあったのだ。米国産牛肉の禁輸が長引いたため、とうとう吉野家は、メキシコ産と偽称して、若姫牛を輸入しようとしていた気配がある。表示のチェックしか行わない税関を相手に、産地の偽装は簡単だったようだ。

日本政府は、このような実態を正確に把握して、不正に米国産牛肉が輸入されることのないように十分なチェック体制を構築していかなければならない。そして何よりも、牛の肉骨粉やへたり牛の死骸が鶏の飼料となり、その鶏糞や鶏舎のゴミ(肉骨粉の残渣)が牛の飼料となっているレンダリングサイクルを断ち切るように、日本政府は米国に強力に要求する必要がある。日本国民のみならず米国民のため、また世界中の人々の食の安全と公衆衛生のためにも、米国に対して日本政府は、「レンダリングを止めない限り、輸入再開はしない」という強気の姿勢で臨むべきなのだ。
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